「TikTokの次はWeChat」とささやく者たち

7月31日付『東京新聞』の「こちら特報部」に、「若者向けアプリが国際問題?」という記事が発表された。この問いかけは素晴らしい。メデイアとして真実を追求する問いかけであるし、良心の問いかけでもある。さらに、中日関係に影響する措置に対する重要な問いかけでもある。

『東京新聞』は「米中対立が深まる中、若者に人気の中国製の動画アプリ『TikTok』を規制する動きが米国、インドに続き日本にも波及している」としている。ここから、TikTokが国際問題となり得るのは、米中対立という背景のためだということが分かる。

米国のTikTok規制には具体的な理由がある。『東京新聞』によると、TikTokの利用者が急増していた時期、米軍はTikTokで兵士を募集した。その結果、入隊した兵士の多くがTikTokを頻繁に使うヘビーユーザーで、訓練や隊舎の様子などが垂れ流しになったという。そこで、米軍は今年1月、支給した端末での使用を禁止した。米国は日本をはじめとした同盟国にもTikTokの使用禁止を要請するだろうとする見方が出ている。

7月28日付『読売新聞』の報道によると、与党自民党の「ルール形成戦略議員連盟」は、動画共有アプリTikTokを含む中国企業が開発したアプリの制限の立法化を政府へ提言することを決定したという。つまり、日本はこの点で米国に追従しようとしている。日本が米国、韓国、インド、オーストラリアに続く第五のTikTok禁止国となるだろうと予測するメディアもある。

『読売新聞』のこの記事が発表されて以降、日本はTikTokだけでなく、WeChatも禁止するだろうと深読みして指摘するメディアもある。私はこの種の分析は「帯路党(敵に抵抗せず加担する者たち)」の分析だと考え、心を痛めている。私自身は歴史学を専攻したので、歴史上の事件を多く知っているが、1894年の日清戦争勃発後、特に日本軍が中国大陸に進軍してから、中国に「帯路党」が現れた。当時、日本軍が誰かを殺害しようとすると、「帯路党」は抵抗しないばかりかその中国人の情報を日本軍に知らせるのだ。現在の「深読み」の分析は、当時の「帯路党」に似たところがあり、日本人に「TikTokだけではない、WeChatもあるぞ」と知らせているのだ。今後、新聞の見出しになるかどうかは分からないが……。

話は戻るが、『東京新聞』の特報記事には2点、注目すべきところがある。まず、現在に至るまで、TikTokからスマートフォン内の情報が抜き取られ、中国政府に渡っているという証拠がないということ。第二に、日本の若者の間で人気がるTikTokの情報発信力から、神奈川県のほかにも横浜、神戸、福岡各市、埼玉、大阪、広島の各府県が広報活動での提携を結んでおり、効果を上げているということだ。

いかなる証拠もない状況の下でTikTokを攻撃することは、一つの民族的ブランドに対する攻撃にとどまらず、中国の科学技術の発展に対する攻撃である。さらに、「疑心暗鬼」という冷戦思考の新しい現れであると言えよう。