「小さなマスク」が「大きな問題」に

日本のマスコミ報道によると、4月21日、中国の王毅外相と日本の茂木敏充外相の間で電話会談が行われ、話題の一つは、両国間のマスク等感染予防物資の円滑な輸出入の確保についてであった。両国の外相が会談でマスクの問題を取り上げることは、中日の外交史において珍しい出来事であり、世界の外交史でも稀であろう。今、マスクが外交問題となっているのである。

同じく4月21日、台湾から200万枚のマスクが成田国際空港に到着した。これは、台湾政府が日本の超党派国会議員から成る「日華議員懇談会」を介して寄付したもので、3日以内に47都道府県の関係部署に送付されるとのことであった。台湾政府のねらいが他にあることは明らかである。

さらに同日、加藤勝信厚生労働大臣は記者会見で、143の地方自治体から寄せられた、日本政府が妊婦向けに配布した50万枚の布マスクの内、少なくとも7800 枚の不良品が見つかったとの報告を公表した。この数日前、1990枚の不良品が見つかった際、日本のメディアは、これらの「問題のマスク」は日本の4社によるものだと報道したばかりであった。現在、日本のメディアは「問題のマスク」は、これらの企業の海外の工場で生産されたものだと報道している。これら一連の報道には、何か裏があるのではないかとの疑念が残る。先ごろ、日本衛生材料工業連合会は、2018年度のマスクの国内供給量は55億3800万枚で、内80% が中国からの輸入であると発表した。新型コロナウイルス感染症の蔓延により、中国の企業は生産停止を余儀なくされ、一時的に日本へのマスクの輸出は滞った。現在徐々に回復し、中国製のマスクは日本のマスク市場の40%を占めている。

先ごろ、日本の家電メーカーのシャープが、日本社会のニーズに応えるためにマスクを生産すると発表し、4月21日にネット販売を開始した。ところが、アクセスが殺到し、瞬く間にネットは繋がらなくなり、一時販売を停止せざるを得なくなった。アナリストは、台湾の鴻海精密工業に買収されたシャープが、今回マスクを先行生産したわけであるが、市場への供給は決して簡単ではないと指摘する。

4月21日付けの『日本経済新聞』に、二つの興味深い記事があった。一つは、宮城県仙台市に本社を置く企業がマスクの生産に乗り出すと発表し、「中国の材料に頼らない」をうたい文句にしているという記事だ。まだ生産には至っていないが、まず大衆の関心を集めようとしたのであろう。もう一つの記事は、人々がマスクを求めて「ドン・キホーテ」に行くと、マスクをした店員が「現在、マスクは品切れです」と告げ、一人の客が怒りを露わにして「マスクは無いと言うが、あんたが着けているのは何だ?」と詰め寄ったという。マスクを早く手に入れたいがために理性を失った姿である。

ネット上や紙上では、日本人と在日華僑華人の間での小競り合いが散見される。「日本のマスクはすべて、中国人が買いあさって国へ持ち帰ってしまった」、「新型コロナウイルス感染症が流行し始めた時に、日本の地方自治体が中国の地方自治体に贈ったものを今になって返せと言うのか」……といった具合だ。

喜ばしいのは、中国の地方自治体、企業、団体、及び在日華僑華人が積極的に日本にマスクの「お返し」を行っていることだ。憂慮するのは、「お返し」マスクの品質を一体誰が管理しているのかということだ。この要所を押さえておかなければ中日関係の新たな火種になりかねない。

小さなマスクが、今、日本社会で大きな問題になっている。