新型肺炎との戦い―迅速な勝利を求めない日本

コロナウイルスによる新型肺炎の感染拡大により、世界は共通の課題を共有している。早く解決した国は、解決が遅い国を憂慮し、日本に対策をまねるよう呼びかけているが、それは日本に対する無理解に基づくものである。日本はまさに自国モデルで課題を解決しようとしており、もしうまくいけば人類の感染症対策の歴史を前進させるための解答を出すことができるかもしれない。今回の新型肺炎に対する日本の対策には驚嘆させられる部分がいくつかある。

 

驚嘆の一つ目は、
日本が訪日外国人や中国人に対する保護と治療という面で、
国籍を問わない措置をとっていることだ

1月28日に第一陣のチャーター機を派遣してから、日本は5回にわたって救援機を飛ばした。1回目は206人、2回目は210人、3回目は149人、4回目は198人の国民を帰国させた。

中国の法律により、中国国籍の日本人の配偶者と子女は、ビザがなければ外国のチャーター機で出国することはできないのだが、日本側は第一陣のチャーター機を出したときから、中国側と何度もこの問題について協議し、最終的に2月16日、武漢から65人の日本人と中国籍の家族を日本に連れて帰った。

特筆すべきは、日本のチャーター機が羽田を飛び立つ際、武漢で不足している救援物資を満載して運んだことである。

日本に滞在していた中国人観光客に対しては、日本の入国管理局が通例を破り、ビザを延長した。さらに観光庁は外国人観光客向けのホットラインを開設し、24時間問い合わせに応じた。

このホットラインは日本語、中国語、英語、韓国語など多言語のニーズに応えられ、特に新型肺炎についての最新情報を提供している。ここでは、正確な手洗いとうがいなどの予防措置、自身の感染が疑われる場合、どのように最寄りの医師に診察してもらうかなど、実際的なサポートを提供している。日本にいる外国人観光客が疑問や不安を持った場合には、すぐにホットラインに電話して問い合わせることができる。

新型肺炎は最初中国・武漢で集中して感染者が増加したため、日本社会では中国や武漢に対する差別的な言論も見られた。

日本の厚生労働省の担当官が記者会見で、記者に対し「悪いのはウイルスであり、人ではない」ということを考慮して報道するように頼んだ。日本のある学校では、ニュースやネット上で中国人、武漢の人に対する悪口を見かけるとした上で、「保護者の皆さんは子どもたちに新型肺炎について話すとき、言動に注意し、正しい人権意識を持たせるように」という手紙を保護者に出した。

中国外交部の華春瑩スポークスマンは記者会見で、「非常に感動した」、「心から感謝している」、「心に刻む」といった言葉で気持ちを伝えた。外国メディアは、中国の公式な場での発言で、このように感情を表すことは非常に珍しいと評した。

日本のテレビ局が、在日華人が行列してマスクを買い占め転売していると報道した翌日、大勢の日本人が電話やファックスで、テレビ局に対し内容が偏向しており誤解を招きやすいと抗議した。

そのうちの一人は、「私の妻は中国人で、会社には中国人の同僚もいる。彼らは故郷の家族がマスクを必要としているので、何とか力になりたいと思っている。彼らは純粋な目的で毎朝ドラッグストアの前に並び、マスクを集めて故郷に送ろうとしている。番組では彼らはみな転売目的だと言っていたが、これは信じがたい。確かに一部の中国人は規則を守らないかもしれないが、日本人にもそういう人はいる。貴社の番組では偏らないよう、中国人のイメージを悪くするようなことはしないでほしい。できれば番組の中で訂正していただきたい」というファックスを送った。

言うまでもなく、日本政府から地方自治体、民間企業、民間人に至るまでみな、中国に救援物資を送り、日本独特の「災害外交」を繰り広げ、中日関係に新しい局面を切り開いた。

現在、日本はさらに「災害外交」によるお返しを得ており、中国は「一滴の水の恩を忘れず、涌き出る泉をもって報いてお返しを求めない」という精神で日本に救援物資を送り、防疫を応援している。

 

驚嘆の二つ目は、
日本が「ダイヤモンド・プリンセス号」の救援において、
責任ある大国としての仕事を全うしたことである

「ダイヤモンド・プリンセス号」は英国船籍のクルーズ船であり、運営しているのは米国企業である。横浜港に入港する数日前、すでに船内で集団感染が発生していた。

国際法上は「国旗主義」の原則により、公海上の船舶は船籍の所属国が管理することになっている。当時、韓国を含む多くの国がこの外国船籍のクルーズ船の入港を拒否したが、それらの国々は国際的な批判を受けていない。しかし、日本は人道主義からこのクルーズ船という厄介者を引き受けたのである。

日本には「ダイヤモンド・プリンセス号」に対する管理や制約を実行する法的な依拠や権利はなかったので、防疫措置において非難を浴びた。世論は、日本政府がすぐにすべての乗員乗客を下船させて隔離しなかったことが感染拡大の原因だとした。

実際には、3000人以上を収容できる隔離施設をすぐに準備できる国はなかった。その上、3000人は56の国と地域から来ている。さらに重要な点は、人類史上このような伝染病を満載した豪華クルーズ船ははじめてであり、対応処理した案件もなかったことである。日本のこのやり方は、国際法の整備のため、人類の感染症防止の進歩のために貴重な経験を提供した。

国際世論の後押しにより、米国、オーストラリア、韓国などの国は2月下旬、ついにチャーター機を派遣して自国の乗客を帰国させることに同意した。しかし、これには大前提があり、検疫後に陰性だった場合のみチャーター機で帰国できるのである。陽性の場合は日本に残り、日本政府により公費で治療を受けることになった。

日本のこの措置は、疑いなく日本の国際的ステータスを向上させ、日本は国際的な名誉を勝ち得たし、また東京オリンピックの延期について多くの国の同意と支持を得られたのである。

 

驚嘆の三つ目は、
日本が孫正義氏の簡易PCR検査キットの無償提供を拒絶したことだ

孫正義氏は先日、PCR検査キットが不足しており、検査が受けられないと聞いたので、無償提供したいとツイートしたのだが、すぐに混乱させるだけで助けにならないという批判的なリプライが殺到した。

伝染病の専門家である岩田健太郎医師も、繰り返し以下のように述べた。「まず、はっきり認識してほしいのは、検査結果が正確とは言えないことだ」とし、「PCR検査の結果は100%正確とは言えず、症状のない人は自宅待機して急いで検査しないよう手配することが正確な戦略だ。医療資源の正常なオペレーションを確保するため、軽症の患者は自宅で指導を受けて静養していればよく、外出や医療機関での診療によって発生する集団感染を減らせる」、「検査が必要かどうか、どのような人を検査するかは医療機関と専門家が決定し、個人の感情で政権を誘導してはならない」と強調した。

WHOのデータによると、日本の千人あたりの病床数は13.7床であり世界平均の3.7床よりもはるかに多く、世界一である。とは言え、日本も集団で、一致して、心を合わせて防疫に協力するというイメージを追求しているため、慢性的な患者と突発的な疾病の患者を犠牲にすることはできず、全員が検査を受け、体温計測をするよう統一して求めることもしない。

今に至っても、首相官邸への出入りであっても、体温測定は必要とされていない。感染状況を前にして、政府は専門家チームの知恵を借りて、国民の感情、社会の感情に引きずられず、大きな底力と勇気を出す必要がある。

 

驚嘆の四つ目は、
日本政府の新型肺炎の感染拡大に対する朝令暮改である

1月末、日本は税関でいわゆる「水際対策」を実施し、自主申告、体温測定、健康カード記入を求めた。2月1日、日本政府は政令に先んじて、関連部門が疑いのある患者に検査を受け、強制入院することを要求できるとした。

入国する人は、中国・武漢に行ったかどうかを申告しなければならず、入国後に定期的な健康追跡調査に協力し、14日以内に湖北省に滞在したことがある外国籍の人、湖北省発行の観光ビザを持つ外国籍の人の入国を拒否した。

2月13日、中国浙江省に滞在したことがある外国籍の人と浙江省発行の観光ビザを持つ人の入国を拒否した。

2月16日、企業にテレワークと時差出勤を呼びかけた。

3月2日、首相自ら全国の小中高校の休校、大型イベントの中止や延期、規模の縮小を要請した。同時に、子どもの世話をするため仕事に行けない保護者に対して補償をするとし、フリーランスや個人事業主に1日当たり4100円を支給するとした。企業に勤める会社員は上限8330円が、会社を通じて支給される。また学童保育などが休校によって生じる費用は政府が負担する。

3月6日、日本政府はPCR検査に国民健康保険を適用するとした。

3月8日、日本政府は3月9日から3月末まで在中国日本国大使館、在韓国日本国大使館が発行した一次ビザとマルチビザの効力を停止した。中国と韓国から入国する人は指定された場所での2週間の隔離観察が必要となり、入国後は日本では公共交通機関を使うことはできない。

3月10日、消費者庁は新型肺炎の感染予防に「効果があるとされる」健康食品、空気清浄機、空間除菌剤など46種類の商品は根拠がなく、騙されないよう注意喚起した。

3月15日、日本政府は日本でのマスクの高額転売禁止を定め、違反者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとした。

これらだけでなく、日本政府は低所得層に向けた公共料金、国税、社会保険料の納付期間の延長、6月末までとなっていたキャッシュレス決済のポイント還元の延長、国民への現金支給など一連の緊急対策を定めた。

 

日本の感染症との戦いの歴史を振り返ると、
いつも困難に際して立法措置を取っていることが日本の優れた伝統だと言える

日本政府は明治時代に、「伝染病予防法」を公布、1999年4月1日にそれに替えて「感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」を制定した。「感染症法」では、予防措置と患者の人権に対する考慮が強調されている。

2002年11月、SARSが流行し、日本政府は2003年10月16日、「感染症法」を改正し、人員の移動と物資の移動に関する内容を加えた。2007年4月1日、「結核予防法」を改正し、「感染症法」に統合した。

新型インフルエンザの発生後、日本政府は2008年5月2日、「感染症法」を改正し、病症の深刻性と病原体の感染力に基づき、伝染病を1類〜5類、指定伝染病、新伝染病の7種類に分類した。種類によって政府の対応措置も異なる。2012年に発生したMERSと2013年の鳥インフルエンザは2類伝染病と定められた。日本の「感染症法」は時代と病症の変化に伴い、絶えず改正され、整備されてきたと言える。

先日、感染拡大に対応する最期の切り札として日本政府は「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律」を成立させた。この法律では、感染拡大後、首相は緊急事態宣言を出せる。

日本政府は自省し続け、考えを改め続ける中で前進し、日本国民も自主的に法律を守り、平時でも備えを怠らない。日本が「日本モデル」で課題に取り組めるのも、この二つの基盤があるからにほかならない。

現在、日本は感染症拡大防止のペースを引き伸ばし、最小の代価、最低の犠牲に注力、最速の勝利を目指していない。こういった認識を持つことで、すべての驚嘆は理解できるものへと変わったのである。