日本は真の「移民時代」を迎えるか

先日、BS-TBSの外国人記者による対談番組に出演した。その時、日本は「隠れ移民国家」であると指摘した。その後まもなく、この言葉は『週刊東洋経済』の特集タイトルとして登場した。

外国人の優秀な人材パワーの助けを借りて日本の技術面の起業力を上げ、国際競争力を強化しようと、日本政府は近年外国人留学生枠を拡大し、外国人の在留資格の制限を緩和している。さらに、日本に定住する外国人への優待措置を立法化し、多文化を尊重した活力ある共生社会を目指している。


(株)パートナーホールディングス代表  寺田唯

一例として、日本の超党派議員連盟である日本語教育推進議員連盟が国会に新法案である『日本語教育推進基本法』を提出した。これは国と地方自治体とが協力して外国人に対する日本語教育を義務化するよう強く求める内容となっている。

この議員連盟は、外国人に無料の日本語教育を行うことは、外国人を日本社会に溶け込みやすくし、摩擦を減らすことにつながると主張している。「すべての人に日本語教育を受ける機会を与えることは、国家と政府の責任であり義務である」。

この法案の草案において日本語教育を義務化する対象は、外国人子女、外国籍の在日勤労者、外国人技能実習生や難民などである。外国人が日本で質の高い日本語教育を受けられるように、『日本語教育推進基本法』には政府予算による日本語教師の養成、統一の教育課程、専門チームによる教材開発などの内容が含まれている。

人口減少問題の解決、地方経済の活性化のため、日本の地方都市では留学生に卒業後の仕事を提供するだけでなく、外国人に起業のチャンスも提供している。愛知県、福岡県をはじめとする日本の国家戦略特区では、外国人に対して半年から1年間の「起業準備ビザ」を発給しはじめた。

日本政府が打ち出している各種の政策には力が入っているものの、実行するとなるとさまざま現実的な問題に直面する。日本にはまだ専門の移民事務を取り扱う政府機関がないからである。

それゆえ、日本で起業しようとする外国の優秀な人材は、何度も行政書士や税理士、社会保険労務士などを通して行政部門と交渉し、決まり切ったパターンを踏襲しなければならない。

中国国内で絶対に大丈夫と保証する「日本移民」の会社にあたってしまい、実際には来日後に自身ですべて手続きしなければならなくなるはめに陥ることさえあるのだ。

そのような混乱した状況について、名古屋市に本社を置く株式会社パートナーホールディングスの寺田唯(劉歓)代表にインタビューした。同社はこの1年間で多くの中国人の日本での起業をサポートしている。

寺田代表によると、現在来日して起業する中国人が直面している問題は、現地のビジネス習慣ややり方が分からないこと、さらに言語の障害もあって、会社設立後に各行政部門の一連の手続ができないことで、経営に損失や停滞をもたらす。

さらに日本で会社を設立したのに、短期の観光ビザしか所持していないため日本で銀行口座も開けないし、中国国内の従業員が来日するためのビザの申請もできない、という会社の代表もでてきている。

そこでパートナーホールディングスのような税理士、社会保険労務士、行政書士などの業務を統合したワンストップのサービスが必要となっているのだ。

来日起業家サポート事案を最も多く手がけている会社の代表として、寺田代表は次のように分析する。

「日本は現在人手不足というだけでなく、市場に資金を投入する中国の企業家も足りません。そこで日本政府は外国人が東京、大阪、名古屋などに投資、定住することを奨励しています。米中貿易戦争が幕を開けたので、多くの中国企業家も手元の資金を投資に回した方がいいと考えています。日本政府の奨励政策からだけではなく、中国国内の投資トレンドから見ても、日本に移転する傾向は比較的長い期間、少なくとも2020年の東京オリンピック後の5年から10年間は続くと思われます」。

政策が公布されても窓口が開放されない。これはもしかしたら日本が「移民時代」を迎えるにあたってまず解決すべき問題かもしれない。