アリババクラウドが日本進出グローバル化が新段階へ

新年が明けるや、大きなニュースが世界のメディアの注目を集めた。1月9日、中国の「Eコマースの雄」ジャック・マー(馬雲)がニューヨークのトランプタワーに招かれ、トランプ氏が次期大統領に当選後、はじめて会見した中国人企業家となったのである。以前は物珍しかったEC(電子商取引)も、すでに大きな力を持っており、「世界最強の保護貿易主義者」であるトランプ氏が一人の中国人ビジネスマンのためにドアを開けることとなった。これも中国のECの力である。


アリババクラウドのサービス説明会の会場

2017年3月16日、日本のメディアは再度熱くなった。アリババとソフトバンクの合弁会社として2016年に設立されたSBクラウド株式会社が、競争が激しい日本のクラウド市場に本格参入し、データセンターの開設を含めたアリババクラウドの取り組みについて紹介するイベントを開催したのだ。

ソフトバンクは営業とマーケティングの側面から、アリババは技術と製品の側面から、アリババクラウドを通して日本市場でパブリッククラウドサービスを提供する。

3月16日、アリババクラウドの孫炯副総裁は日本でアリババクラウドの活用事例と日本でのクラウドサービスの開拓情況を紹介した。

アリババクラウドの日本及び中東展開を担当する孫炯副総裁は、「当社の核心はアリババクラウドの自社技術にあり、OS飛天を含むプラットフォームでグローバルクラウド市場に参入していくことを目的としている。クラウドを使った貿易仲買業ではない」と語った。

現在、アリババクラウドは中国国内の100種類以上ものクラウドサービスを提供しており、日本市場でもすでに10種類以上提供している。ネットワーク、セキュリティーを始め、ビッグデータ、IoT向けソリューションなど、今後さらに増える見込みだ。

孫炯副総裁はさらに、「日本市場はサービス導入に非常に慎重で、お客様はサービスを選ぶ前に長い時間をかけて検討し検証する。よって日本市場でのサービス拡大は世界の中でも難しい。その際に大切となるのはお客様との信頼関係だ。信頼関係を構築するのには時間が必要で、地道に一歩一歩でなければ信頼関係は構築できない。我々はその過程を通らなければならない」と言う。

2016年の「11月11日」(独身の日、ネット商戦の日)、ネットでの取引は毎秒17万5000件に上り、支払いは毎秒12万件に達したが、これらはすべてアリババクラウドに支えられていたのである。

アリババクラウドを日本市場に適したサービスにするために、アリババクラウドは300人以上のエンジニアを投入し、タイムゾーン、翻訳、日本の決済システムなど製品サービスのローカライズに努めた。

現在、アリババクラウドは日本で、エンジニアトレーニング、導入前検証(POV)、クラウド移行支援などを準備している。パートナー企業は日本各地、中国企業、海外のその他の地域から集まっている。

説明会では、アリババクラウドサービスを導入している企業3社が、直接自社体験を紹介し、それぞれアリババクラウドを称賛した。

株式会社日本凌佳システムの蔡立代表取締役兼CEOは、指静脈スマートクラウド業務について紹介した。


ソフトバンクのエリック・ガン専務取締役執行役員 

日本凌佳システムの本社は中国にあり、そこで決済、教育、事務、健康という四大クラウド業務を含む指静脈シリーズ製品を自社で研究開発している。現在、中国銀行本店、中国銀聯本部などでも同社の製品を使っており、2016年には指静脈スマート端末も日本に輸出された。

株式会社SOZONETは中国人観光客向けのインバウンド観光サービス企業で、民泊、ホテル、医療、美容施設などを提供する業務をおこなっている。

株式会社SOZONEXTの申昌赫代表取締役兼CEOは、ソフトバンクを通じて日本での説明会でアリババクラウドの日本ノードサービスを知り、アリババクラウドを選んだが、それは2017年夏に公開されるExpress Connectに期待したからで、これは中国ユーザーの日本サイトへのアクセスをさらに早く快適にするものだと説明した。

申昌赫氏はさらに、アリババクラウドは2020年東京オリンピックのグローバルパートナーであり、オリンピックはインパウンド需要を大きく呼び込むものだとして、もしアリババクラウドが将来オリンピックのリソースチャンネルを専門に持てば、当社にとっても大きな力になると話した。

このほか、Alipayは現在すでに日本のオンラインショップ市場を席巻しており、将来日本でのオンライン上の決済問題を解決するはずなので、当社のビジネスに役立つと述べた。

スマート端末操作システムとプラットフォーム技術のサービスプロバイダーであるサンダーソフトジャパン株式会社の今井正徳代表取締役兼CEOは、アリババクラウドのオンライン・リアルタイムサービス、データ保存とオブジェクト保存サービスにアリババクラウドをプラットフォームとして使用しており、北京本部のドローンの離着陸をコントロールしていると説明した。会場では、ドローンが撮影した動画、ドローンのデータをリアルタイムで日本の実演会場に転送して実演した。

続いて登壇した本誌編集長の蔣豊は、民間交流と経済往来の視点から、今後の日中電子ECの成長動向を分析した。「経済産業省が2016年6月に発表した数字を引いて、2025年の米中間の貿易総額は1兆2098億円、日中間の貿易総額は8166億円であると紹介し、さらにこの数字を分解すると中国の消費者がアメリカからネットで購入した金額は8422億円で、日本から購入した金額が7956億円とほとんど肩を並べている。両国の差は、アメリカの消費者が中国からネット経由で購入した金額が3656億円だったのに対し、日本の消費者はわずか210億円であり、アメリカの十分の一以下であったところにある。これはECの分野で、中国は日米両国で輸入超過であり、日本は中国にとって最大の輸出超過国であることを示している。このような情況の出現は、中国のEC分野における積極的、開放的な姿勢と切り離せないだろう」と語った。

さらに、「今年は日中国交正常化45周年に当たり、来年は日中平和友好条約締結40周年となる。このような節目にあり、一部の人は日中関係の改善に自信を失っているようにみえる。しかしこれについて、私は疑問を持っていない。なぜなら、両国関係は大きな困難に直面してはいるが、両国関係の改善の基礎は依然として非常に堅固であるからだ。現在、日中間の民間交流と経済往来に根本的な変化は生じておらず、十分に活気がある。中国は依然として日本の最大の貿易パートナーである。2016年に日本を訪れた中国人はのべ637万人に達し、前年比28%増加した。さらにうれしいことに、2016年下半期から中国を訪れる日本人の数が大きく回復し始めた。これらは両国のECの成長のために大変堅い基礎を築いた」と分析した。


アリババクラウドの孫炯副総裁

また、「日中両国はともに経済の構造改革を進めており、日中のEC企業の提携に新しいチャンスをもたらしている。現在、中国は主動的に経済発展のニューノーマルに適応、牽引し、イノベーション主導型発展戦略を実施、産業構造の最適化・高度化を大々的に推進し、新しい高水準の対外開放を実施、一帯一路の建設と国際産業エネルギー合作を推進している。国際交流を推進し、大量の雇用機会を創造し、大幅に物流コストを削減し、スピーディーで高効率であるECは、日本企業にとっても希望とポテンシャルに満ちた産業である。また、日本は2020年にGDPを600兆円に到達させるという成長目標と、強靭な経済、育児支援と社会保障などの方針を打ち出しており、これも中国企業にさらに多くのビジネスチャンスをもたらすであろう」とした。

日中両国を概観すると、日本はさらに匠の精神を重視しており、安全性を第一に置き、製品とサービスの品質に対する要求は非常に高い。

自身も保守的であり、イノベーションのリスクを犯したがらず、ITシステム化の領域でもスロースピードである。まさにそれによって、日本もクラウド業務に巨大な発展空間を与えている。

アリババクラウドが日本市場に認められるということは、中国クラウドサービス企業のグローバル化の目標にさらに一歩近づくことも意味する。

さらに、日本市場はアリババクラウドにとって戦略的意義を持っている。日本は地理的に韓国、日本、台湾に影響を与えているからだ。

製品サービスの視点から、日本は成熟した市場であり、製品サービスに対する要求は厳しい。

アリババの製品サービスが日本市場で磨かれる経験を積むことで、世界の他の地域で普及させるための基礎が固められると信じる理由はそこにある。