よみがえる海のシルクロード
寧波はアジアの国際的大都市へ邁進

唐の初期、海のシルクロードは明州(寧波)港からスタートした。清末になり、寧波は「五口通商」(注1)窓口の1つとして通商をスタートさせ「寧波幇」(注2)は世界各地に商売を拡げた。最近では、閉幕したばかりの2014年APEC(アジア太平洋経済協力)第1回高級事務レベル協議で世界の目が寧波に向いている。浙江省委員会常務委員の劉奇寧波市委員会書記は「都市の国際化推進を加速することは寧波市委員会と寧波市政府が現在の時流に応じてなすべき重大な政策だ。都市の国際化推進には、国際的に優位性のある港湾、モデルチェンジによる貿易の発展、『海外資本の導入』と『海外進出』、国際的な経済プラットフォームの構築、対外開放の新たなメカニズム構築におけるメリットの模索などの面でオープンな経済発展水準を引き上げることに注力しなければならない」と語っている。

 

海外進出――国境を越えた三大起業基地の建設

寧波という資源に恵まれない都市は、激烈な地域競争と限りある資源という課題の中で、何によって新たな発展空間を切り開き、都市の国際化プロセスを推進してきたのだろうか。

寧波市対外経済貿易局の兪丹樺局長は「工業団地を起こし、資源を開発して、マーケティングベースを構築し、寧波の企業を海外進出させ国際競争に主体的に参画させた結果として得たものは、より大きな市場とより先進的な技術、さらには管理と人材の制度だった」と語っている。

寧波市対外経済貿易局のデータによると、2013年末時点で寧波が投資を承認した国外企業や組織はすでに累計で1839に上っており、承認された中国側投資額は55億6900万ドル(約5703億円)、実際の投資額は26億5600億ドル(約2720億円)で海外での投資先は108の国と地域に上っている。

「三大基地」計画の第1は国外工業団地の建設だった。それは主として寧波の実力を備え、優位な競争力を持つ企業をリードし、支援して海外に工業団地を建設することを模索し、国際貿易障壁に悩まされ、生産力過剰に悩む中小企業の海外進出のために望ましいサービスプラットフォームを構築することである。その目的とはつまり、工業団地を通じて中小企業の面倒を見、乳母となることで、彼らの悩みを解消させることだった。

寧波は海外基地建設の重要な内容に国際マーケティングネットワークの構築を据えている。寧波初の国外貿易プラットフォームは西アフリカに置かれ、ベナン中国ブランド製品展示販売センター(常設)は2000㎡の面積を持ち、現在すでに数十社の企業が入居している。展示製品は軽工業、建設機械、日用化学製品、生活用品、アパレル製品、電子機器・家電製品など200以上のブランドに上っている。

寧波の目標は3年以内に4つの海外貿易センターを建設あるいは運営することだ。ベニン中国経済貿易センターは第1期を効果的に運営すると同時に第2期の拡張工事を積極的に進めている。またオーストラリア・メルボルン中国ブランド製品展示流通センター建設を積極的に促進している。

知るところでは、前述の「三大基地」建設と運営に参画する企業には「海外進出」特別資金インセンティブと支援金が与えられ、海外工業団地と貿易営業販売基地に入居する企業には一時支援金が与えられる。

APECで世界の目が寧波に

2月15日から28日まで、2014年APEC第1回高級事務レベル協議が寧波で開催された。これは改革開放以後、寧波で行われた国際会議としては最大規模となるものだ。今回正式に参加した代表は1782人で、その内、国外代表は1114人に上る。期間中は大小74の国際的な会議が開かれ、会議のテーマは多くの分野に及んだ。

なぜ寧波でこのようなハイレベルな国際会議が開かれたのか。

APEC事務局のDr.アラン・ボラードは、開催以前には寧波を訪れたことがなかったが、記者の取材に対して自身の寧波に対する印象を「寧波の発展はアジア太平洋地域全体の発展の縮図であり、寧波は極めて競争力のある港湾都市だ」と率直に述べている。

APEC開催と密接に歩調を合わせて、3月の上旬、世界第2の一般消費財メーカーであるユニリーバが沁園集団と上海で株式交換取引協議を締結し、18億2200万元(約302億円)で沁園集団の株式を取得した。ユニリーバは寧波に投資する43番目のフォーチュン500企業(『フォーチュン』誌が毎年発表するランキング500社)となった。

寧波市対外経済貿易局の最新情報によると、現在、こうしたフォーチュン500企業は寧波で合わせて105のプロジェクトに投資しており、その投資総額は104億4000万ドル(約1兆692億円)、契約上の利用外資額は42億5000万ドル(約4352億円)、実際に振り込まれた外資は30億8000万ドル(約3154億円)となっている。

1989年に最初のフォーチュン500企業の投資プロジェクトが導入されて以来、寧波はすでに伊藤忠、三菱、デュポン、A.P. モラー・マースク、メトロ、大衆などの多国籍巨大企業が投資するホットスポットになっている。30数年来、こうした国際的大企業は寧波に巨額の建設資金を注入すると同時に、先進的な管理技術、理念ももたらした。

フォーチュン500企業との「結び付き」は寧波の民営企業のモデルチェンジの大きなハイライトだ。2012年、吉利自動車傘下の寧波遠景自動車部品有限公司がフォーチュン500企業であるフランスのフォルシアグループと手を組み、寧波経済技術開発区にフォルシア排気制御技術(寧波)有限公司を成立させた。

慈渓経済技術開発区では、この1年で寧波北斗科技有限公司も世界第1の自動車技術サプライヤーであるボッシュグループと提携し、総投資1億ドル(約102億4000万円)でマイクロモーターの生産を行っている。

聞くところでは、寧波市が誘致したフォーチュン500企業は主に日本、韓国、欧米と香港・台湾地区からの企業で、その内日本が10社、米国9社、ドイツ7社、イギリス、フランスと韓国がそれぞれ4社、オランダ3社となっている。これらのプロジェクトの投資総額、契約外資金額と実際に振り込まれた外資の平均金額はそれぞれ9943万ドル(約101億8000万円)、4048万ドル(約41億4600万円)、2933万ドル(約30億3600万円)で、紛れもない「金の鳳凰(ゴールデンフェニックス)」となっている。

9つの措置が都市の国際化推進を加速

寧波市委員会、寧波市政府のやり方は「寧波市が都市国際化推進を加速するための行動綱領」を早急に打ち出し、近い将来に九大行動計画を実施して、都市国際化によって新たな全面的開放をリードし、寧波の総合的な都市競争力を高めていくというものだ。

果てしなく広大な寧波港ではコンテナトラックがひっきりなしに動き回り、コンテナを満載した大型船が今まさに沖合に向かおうとしている。どうやって都市の国際化を推進するのか?

『綱領』では今後の十年、寧波を長江デルタ都市群の中で地域の中心都市とするべく努力し、2030年にはアジア太平洋地域で大きな影響力を備えた国際化された都市をほぼ構築すると指摘している。

九大行動は合わせて39の方面にわたっており、それには国際貿易センター建設の加速、産業国際化の全面的推進、国際化されたオープンプラットフォーム構築の推進、国際的優位性を持つ港湾建設の加速、国際的な革新機能の強化、国際的な文化機能の強化、国際的な居住環境の構築、ソフト面での国際的な環境構築、都市の国際的イメージ形成に注力することなどが含まれている。

九大行動計画のどれもが「寧波の特色」を帯び、「寧波の道」を歩もうとしていることが容易に理解できる。

自信の源はその実力だ。2013年、寧波経済は荒波を乗り越えて前進し、7129億元(約11兆8200億円)の地域生産総額を達成した。貿易輸出入総額は1003億3000万ドル(約10兆2720億円)を超えて浙江省の首位となり、長江デルタで3番目の貿易総額1000億ドル超の都市となった。寧波港は年間で4億9600万トンの貨物を取扱い、中国大陸の港湾として第3位、世界でも第4位となった。コンテナ取扱量では標準コンテナ1677万4000個を取扱い、中国大陸の港湾としては第3位、世界では第6位となっている。

寧波市の盧子躍市長は「寧波の都市国際化は現在、改革を全面的に深化させる歴史的に重大なチャンスに直面しています。寧波は改革革新の新たな取組み、新たな結果によって国際的に発展する新たなパターンと新たな態勢を絶えず構築していきます」と語っている。

(注1)五口通商:1842年の中英南京条約で開港が決まった広州、アモイ、福州、寧波、上海の5つの通商窓口

(注2)寧波幇:寧波出身あるいはゆかりのある華僑