中国はどこまで腐敗の連鎖を追及できるか

先ごろ『人民日報』が、一部の地方政府が香港での企業誘致活動において、シャングリラホテルで一人1000元(約1万6000円)の派手な朝食会、会場にお金をかける、参加人数を膨らませるなどの浪費をし、社会問題になっていると報道した。昨年末、中央政治局は、仕事への取組みの改善、民衆との密接なつながりの強化など8項目の規定を発表し、贅沢なパーティーの禁止、中秋節・国慶節での公金による飲食の禁止、付け届けの禁止などを立て続けに公布した。形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢の風潮の「四風」問題についても、続けざまに一連の有力な施策を打ち出している。

浪費一掃の第一の矢を放つ

10月に山東省済南市で開催される第10回中国芸術祭は、開幕式の演出に有名スターのギャラと制作費だけで5881万元(約96億円)予算を組んでいたが、最近になって準備委員会は開幕式での派手な演出を取り止め、10数分間のオープニングセレモニーに変えた結果、費用は100万元(約1600万円)にも満たず、98%の節約となった。

第18回全国代表大会以来、新指導部体制は新スタイルの確立に力を注ぎ、反贅沢・反浪費の新風が国内に次第に吹き渡っている。

2012年12月4日、習近平総書記が招集した中共中央政治局会議で、中央政治局は仕事への取組みの改善、民衆との密接なつながりの強化など8項目の規定を採択し、「外出訪問の簡素化」、「大人数の送迎を行わない」、「客を迎える際絨毯を敷かない」、「外出訪問時、随行員を厳しく抑制する」などの細則を定め、まずリーダーが範を示すことを強調し、新指導部が身をもって励行することで仕事への取り組み改善への第一矢を放った。

 

不要な経費を徹底して削減

4月19日、中共中央政治局が招集した会議で、今年の下半期から1年近くをかけて中央政治局が先頭に立ち、全党あげてトップダウンで数回に分けて大衆路線教育実践活動を展開することを決めた。

6月18日、習近平総書記は党大衆路線教育実践活動工作会議において、この活動の主要任務は新しいスタイルの確立であり、形式主義、官僚主義、享楽主義、贅沢の風潮の「四風」問題を集中的に解決することだと強調し、これまでの悪弊を精査・一掃し、反浪費の動きが再び沸き起こった。

7月には、中共中央官公署、国務院官公署が、各級の党政府機関は今後5年間、いかなる形式、いかなる理由でも新たに庁舎を建設してはならないと通知し、李国強氏が総理に就任後初の記者会見で、全国国民に向けて発表した。

引き続き8月には、中宣部、財政部、文化部、審計署、国家新聞出版広電総局の5部門が合同で、贅沢な「晩会」を禁止する旨通告した。公金を使って高額なギャラで芸能人を呼んではならない。国営企業の資金で大物スターを呼んではならない。イベントをむやみに催し、大物スターを呼ぶという悪しき風潮は厳に戒めるといった内容である。

さらに、通告では「文芸晩会」や慶祝イベントの予算基準を制定し、「晩会」の予算を厳格にし、不要な経費を削減するよう求めている。また、「晩会」の席で贈り物や高価な記念品を出すことを禁じ、組織や個人が「晩会」を利用して利益を得ることを防止する。

中央政府、反「四風」を遂行

先ごろの財政部の通知によると、省級政府の預決算および「三大公費」(公用車、接待費、海外出張費)全面公開の原則に照らして、各省は2015年までの公開に応じ、省内のすべての県級以上の政府が、財政預決算、部門預決算、三大公費預決算などの公開を進めた。

そのうち、2013年は各省において、少なくとも20%の地市級および県級政府が三大公費の預決算公開に応じ、2014年に採用した地域では少なくとも省内の50%の行政区が公開した。このように三大公費の公開は進み、反浪費の風潮は定着してきている。

中秋節と国慶節が迫り、このほど開催された中央規律検査委員会常任委員会会議で、習近平総書記の反「四風」をやり遂げるとの精神が伝えられ、さしあたっては、中秋節、国慶節に公金で月餅を贈ったり、飲食や贅沢・浪費といった不正の気風に歯止めをかけ、穏やかですっきりとした祝日を迎えることが提起された。

さらに、“四風”を糾すため、集中的・段階的に推進するよう呼びかけた。各級の規律検査機関は、日常的監督と段階的検査、抽出検査を組み合わせ、規律に違反した者はその都度処理し、監督の実効性と抑止力を高め、跳ね返りを断固阻止する。

なぜ、反浪費政策なのか

昨今、物質的豊かさにより、浪費・贅沢の風潮が多くの局面で見られるようになった。党や公務員の風紀の乱れ、政治の腐敗を国民は深く嫌悪している。関係者は、中央政府がこの時に反「四風」運動を打ち出すことには強い現実的意義があると評価している。

ハンドルネーム「@湖言大山」の、こんなつぶやきがある。「ここ数年、公金の浪費がしきりに報道されている。役人の公金浪費の不正は国民の党や政府に対する信頼を著しく損ねるに違いない」。

「浪費の風潮を許してはならない」。国家行政学院の許耀桐教授は語る。「浪費の風潮は、本来『忍耐強く実直』という党の精神と相容れません。公務員が一旦贅沢・浪費の悪習に染まれば、党や政府への信頼は大きく低下します。さらに問題なのは、それが深刻化すれば大衆と党・政府の間に溝が生まれることです。これは我々の大衆路線とは相反するものです。浪費の風潮は早くからあり、ずっと存続してきたのです。ですから新中央指導部は、取り締まりをこれまでよりいっそう強化する決断を下したのです」。

 

贅沢・浪費の弊害

雲南省人民政府の羅崇敏参事官が、ネット上に贅沢・浪費の弊害を述べている。「贅沢・浪費は表面的には、一部特殊消費品の生産を刺激できるという見方もあるが、より深く長期的に見た場合、人、文化、生活スタイルの異化につながり、歪んだ消費心理や環境破壊を生む。腐敗の温床ともなり、社会矛盾を激化させる。我々一人ひとりが反贅沢・反浪費の提唱者、実践者にならねばならない」。

南京大学社会学部の胡小武副教授は、現在採られている反浪費政策、特に政府高官、公務員に対しての施策は的確であると評価する。「公務員が扱うのは公金であるため、自分勝手な消費行動を起こしやすいのです。例えば一部の贅沢品は役人グループによって消費、使用されており、その多くは利益団体から贈られた物で、それには人々の血税が使われています。それが汚職・腐敗の助長にも繋がっています」。

汚職・腐敗の連鎖を追求

さらに、人々は反浪費運動において、汚職官吏の暴露・処罰だけでなく、浪費の背後にある腐敗の連鎖の追及を期待している。ここ数年、一部の地方政府で行われている豪華な「文芸晩会」や慶祝イベントは、多くが財政出資や割り当てによるもので、膨大な浪費になり、企業や一般大衆の負担を増やし、不正を助長しているだけでなく、贅沢な「散財パーティー」の背後には、さらに幾つもの暗黙のルールが存在することが考えられ、腐敗の温床となっている。浪費の背後にある不正受益の連鎖を見逃してはならない。

このことに関して、武漢大学城市安全・社会管理研究センターの尚重生副主任は指摘する。「ひとたび浪費の風潮が横行すれば、社会全体に悪い規範が打ち立てられ、社会の気風が損なわれ、社会正義に影響を与えます」。

浪費一掃運動の効果は鮮明

7月末発表された上半期の外食産業市場分析報告によると、上半期、60%の外食産業企業が利潤を大幅に落としている。前年同期比で平均42%下降し、一部高級店では300%以上落としたところもあった。

この現象は庶民感覚と符号している。以前は有名ホテルには車が絶えず出入りし、公用車が多く見られたが、今、公用車はほとんど見られなくなり、公金接待規制の効果がはっきりと現れている。国民はこの「新風」が一時的なものではなく、長く持続することを望んでいる。

さらに、尚副主任は分析する。「中央指導部の半年間の努力の成果がはっきりと現れています。茅台酒などの高価なお酒や高級タバコの価格は次々と下降し、五つ星ホテルもかつての賑わいは見られなくなりました。贅沢・浪費一掃運動の効果は鮮明に現れています」。

「四風」一掃に連続性を

胡副教授は「贅沢・浪費一掃政策は、8項目の規定の具体的取り組みであり、『四風』一掃には連続性が求められます。この運動を一時的なもので終わらせることなく、人々の期待に応えて欲しい。スローガンやキャンペーンではないかとの懸念を払拭するべく、中央と地方が協力し大衆の信頼を勝ち得てこそ、この政策を定着させることができます」と期待を寄せる。

同じく胡副教授は提議する。「贅沢・浪費一掃の道は『任重く道遠し』です。政府の厳格な要求に従って、現場組織での公金飲食、宿泊費、随行者の帯同問題などをより厳しく指導し、外出訪問の簡素化をやり遂げ、大衆路線を確実にし、国民に奉仕して欲しい」。

尚副主任は指摘する。「この運動は上層から下層へと広めていくプロジェクトであり、中央から地方へと着実に浸透させて初めて永続性を持ちます。次に打つ対策として、三大公費公開の定着を提案したいと思います。そして、国民がよりいっそうそれへの監督意識を高めることを期待したいと思います」。

次なるターゲット

さらに許教授は訴える。「一般大衆の関心が高い問題がすなわち重要視すべき問題であり、中央政府は問題解決に力を注ぐべきです。現在、公用車の基準や使用に関する厳格な規範はありません。官舎・庁舎問題の次は、公用車の問題に着手すべきです」。