中国の旅行業は、10年で六つの大きな前進をはたす

1979年、鄧小平は75歳の高齢で一歩一歩黄山に登り「大いに旅行事業をやるべきだ。力を入れて、早急にやるべきだ」と呼びかけた。それから本格的な中国の旅行業は始まった。そしてこの10年間で、中国の旅行は名実ともに成長し世界の旅行大国へと成長した。中国の「旅行」は本当に大きな事業に発展したのだ。

【1】旅行はすでに人々の生活の一部になった

かつて、よく「定年になったら旅行にでも出かけよう」という話を耳にした。95年当時、成都郊外の農民は裕福な暮らしを思い描いて「食べる肉があり、住む家があって、それでも金が余ったら旅行でもしよう」と話していた。が、これらの話はすべて昔の話、今では旅行をする生活はごく当たり前に。2011年の中国国内の延べ旅行者数は26億4000万人となり、13.2%も増え、1人当り年に2.1回、平均の消費額は1人730元(約9000円)になったのだ。

【2】中国は世界の旅行大国に

改革開放当初、中国の旅行はインバウンド(外国人の中国観光)が主だったが、90年代に入ると中国人による国内旅行が盛んになった。この十年は大変な海外旅行ブームが沸き起こり、中国の旅行マーケットは国内旅行を中心にインバウンド、アウトバウンド(中国人の海外旅行)が三本柱となった。おかげで11年の全国の旅行総収入は2兆2500億元(約27兆9200万円)で前年より20.8%も伸びている。中国を訪れた人数は1億3500万人で前年より1%増え、旅行による外貨収入は2.5%増の470億米ドル(約3兆7000億円)となった。中国人の海外旅行者数は20%増の6900万人で、その消費額は700億米ドル(約5兆5000億円)以上に達している。

もちろん、インバウンドは79年の世界41位から90年には31位、さらに00年には5位となり、現在では世界第3位となっている。インバウンド、アウトバウンド、国内旅行の三大市場の合計で見ると、中国はすでに世界第1位の旅行大国になっている。今後5年で、旅行業は中国の戦略的基幹産業に成長し、中国は世界の旅行大国から世界の旅行強国になっていると確信する。

【3】休日の組み合わせ最適化で休暇制度に根本的な変化

00年に、ゴールデンウィーク制が実施され、旅行ブームが沸き起こった。

08年には休日制度に調整が加えられ、2回のゴールデンウィーク、3回の小規模な長期休暇と土曜休日の週末が組み合わされることになった。と同時に有給休暇制度も明確となり、こうした休日体系がシッカリしてきたことがこの旅行ブームの誘因になっている。しかも、この体系は国際的に見ても中の上の仕組みとなっている。今後、さらに休日が増えることになれば、中国の旅行ブームもさらに加速していくのではないだろうか。

【4】市場の刺激を背景に旅行産業が引き続き発展

伝統産業の成長は緩やかだが、三つのタイプの旅行関連企業は09年には4万9720社となり、この10年間で2倍に増えた。その内、旅行社は126.83%増、星付きのホテルは35.84%増、観光スポットは185.22%増になった。旅行社、ホテル、観光スポットはいずれも2万件に達している。

【5】新タイプの旅行企業が成長

中でもC-Tripを代表とする旅行イーコマースの成長は急激で、全国では1000社を超え、旅行代理サービス業の半分を占めている。エコノミーホテルの成長も急激で、全国に200以上のエコノミーホテルチェーンがあり、3000軒以上のホテルが営業している。如家、7天、錦江之星、城市客桟などといったエコノミーホテルはすでに都市の景観のひとつになっている。関連する文化娯楽商品も集中的に大量に出現しており、『印象』シリーズを代表に社会的にも注目されている。現在、華僑城集団は毎日各地で12もの演目を上演しており、それらはいずれも世界的な文化芸術に成長している。

【6】10億~100億元のレベルの旅行投資プロジェクト

『中国旅行投資報告』が明らかにしているところでは、『第10期五カ年計画』期間中の全国の旅行投資総額は6194億元(約7兆6800億円)、『第11期五カ年計画』期間中には1兆7836億元(約22兆1300万円)が投資された。これらの投資は旅行商品の開発や旅行産業の整備、国際競争力の強化、そして新しいニーズの発掘、特に若年の旅行ニーズを大いに満足させた。

投資の主体もこれまでの政府あるいは国有企業にかわって、不動産業や鉱工業の会社が旅行業に参入してきた。しかも従来の旅行プロジェクトからリゾート開発といった大規模投資が多くなり、ビジネスモデルも大きく変化してきた。例えば万達集団は6つの不動産集団合同で270億元(約3350億円)を投資して長白山国際リゾートエリアを開発している。西安曲江文旅集団は総額400億元(約4935億円)以上を投下して曲江、大明宮、楼観台を相次いで開発し、経済、社会、文化的に望ましい効果を上げている。

最後に、中国の旅行サービスの今後について、いくつかのポイントを指摘しておきたい。その一つは『高サービス』のブランドを集中させること。二つ目は『文化的サービス』の規範を作り出し、文化と感情にいっそう配慮したサービスを目指すこと。三つ目は『上質なサービス』の普及であり、正確でキメ細かいサービスを提供することで国際的な優位性を発揮すること。四つ目は『あまねく広いサービス』チェーンを形成して全体としての優位性を発揮すること。五つ目は『サービス・クラウド』の体系を整備し、ネットワークの優位性を発揮することだ。

幸福の追求は当然の欲求である。旅行はその幸福を追求するチャネルであり、幸福を実現するフィールド、幸福を実感するプロセスなのだ。だから、旅行産業は「幸福産業」といわれているのだ。