明 信江 在日中厨師精英協会会長
中日シェフの団結と発展の場を作る

春節(旧正月)2日(2月6日)、東京・高田馬場駅の向かい側にある中国料理店「石庫門」の明信江料理長を訪ねてお話をうかがった。明料理長のもう一つの肩書きは、「在日中厨師精英協会会長」である。


撮影/本誌記者 呂鵬

日本の中国料理は3回変化した

—— 在日中厨師精英協会の会長として、中国料理の日本における発展状況に大変注目していらっしゃると思います。近年、日本における中国料理はどう変化してきたと思われますか。

明信江 近年日本では中国料理店がまさに雨後の筍のように次々にできています。つまり、第一の変化は中国料理店の数が増加したことだと言えるでしょう。また、中国の有名企業や有名シェフが続々と日本のレストラン市場を視察に訪れていますし、日本にいる業界関係者も日本市場に商機を見出し、次々に乗り出してきており、現在では海底撈、阿香米線、蘭州拉麺、沙県小吃、重慶小麺などのブランドが日本で開業しています。これが第二の変化、中国国内の有名ブランドレストランの日本進出です。

さらに、中国のさまざまな地方料理の店が日本に登場しているのも目にします。四川料理の一路香、中国式焼肉の北京胡同肉、雲南料理の食彩雲南、湖南料理の李厨、東京ムスリム飯店、羊肉の串焼き、麻辣、焼き小籠包などが続々と登場しており、この変化は第三の変化といえるでしょう。目下、日本の中国料理はまさに未曾有の繁栄を呈していると私たちは考えています。

新華僑華人シェフの大きな貢献

—— かつて、老華僑は「三つの刀」を持っているとされていました。つまり、はさみ、包丁、かみそりで、包丁とは、もちろんコックのことです。では、新華僑華人は日本の中国料理の発展にどのような貢献をしたのでしょうか。

明信江 新華僑華人のシェフたちの多くは1980年代の中国の改革開放以降に来日しています。彼らは時代の風に乗り、時代と共に、一面では歴史のある中華街で老華僑華人の中国料理店で成長し、また別の一面ではさまざまな様式の中華料理を大量に日本にもたらし、さらに大きく発展させ徐々に横浜中華街に継ぐ、池袋東口地域や川口を中心とした中国料理を中心とする新中華街を形成し、地域の繁栄と発展に貢献しました。

新華僑華人シェフの手による中華料理は、伝統的な「日本の中華」とは明らかに違います。日本のいわゆる「中華料理」は現地化された中国料理であり、日本人の好みに合わせたものですが、新華僑華人シェフの中国料理は「中国料理」といえるものです。彼ら自身が中国から来日し、シェフの経験を持っていますので、食材の選択、味付けなどに中国本土の特色と色彩を保っています。これも中国料理好きな日本人にさらに食の幸福と選択肢をもたらしていますし、同時に地域の繁栄の起爆剤にもなっているのです。

さらに新華僑華人シェフたちは調理の仕事に邁進するだけでなく、店の外に出てさまざまな文化や飲食のフェスティバルにも参加し、中国の食文化の普及に務めています。多くの日本人に中国の食文化に触れて理解してもらい、味覚を通して中国文化に対するディープな旅をしてもらうことで、日中両国民の友好往来のために積極的や役割を果たしています。

新華僑華人シェフのために価値あるサービスを提供

—— 今おっしゃったように、日本では中国料理も日本人が中国を理解し、好きになるための媒介であり、中日両国民の交流のキャリアーとなっています。2017年、「在日中国厨師精英協会」が明シェフの提唱のもと、創設されました。この協会の設立の趣旨は何ですか。また、どのような役割があるのでしょうか。

明信江 在日中国厨師精英協会は非営利の社会組織で、日本にいる中国人シェフ、レストラン経営者、マネージメント、調理技術、店舗サービス、食文化、食教育、調理理論や栄養学の研究者が参加しています。

この協会の設立趣旨は、中国の飲食文化の継承、宣伝、普及、発展、調理技術レベルの向上、調理飲食科学の研究、企業経営の向上と業界の発展、中国料理業と調理事業の健康的発展を促進するため一定の役割を果たすことにあります。もっと具体的に言いますと、大規模な飲食業の従業員の団結、食材、商品情報共有を実現し、助け合い、メンバーの技術を向上させて自身の価値を上げるために、メンバーに役に立つ、価値あるサービスを提供します。当協会はボランティアのメンバーによって組織されており、自分の時間を使い、無報酬で、皆のために全力で働いています。

また、協会が設立してから2年間で定期的に11回の技術交流会を開催し、日本で連続してミシュランの星を獲得している唯一の中国人シェフである趙楊シェフ、日本中国料理協会の鉄人・陳健一会長などの有名シェフを招いての技術交流会を不定期に開催し、メンバー全体の資質を向上させています。同時に、協会は2017年に2回、中国で行われた国際的な中国料理大会イベントに、在日中国人シェフを組織して参加し、チームで金メダルと銅メダルを獲得し、在日中国人シェフに栄誉をもたらしました。

日本の中国料理にはなお改善の余地が

—— お話をお聞きして、「いいね!」を押したくなりました。中国料理は、深く厚みのある中国文化の重要な組成部分であり、中国のソフト文化の実力を上げる絶好の手段です。もちろん、中国料理は日本でも玉石混交の感があります。今後はどのように日本で中華料理を振興させていくべきだとお考えですか。

明信江 まさにそのとおりで、現在、日本の中国料理には確かに玉石混交の実態があり、経営管理、料理の質、衛生上の習慣にはまだまだ改善の余地があります。中国料理は単に味がいいというだけではだめで、和食のように見た目や食材、技巧などの工夫が必要であり、品位を高め、舌を満足させると同時に健康のニーズにも応えられるようにしなければなりません。すでに日本の「三大国民食」の一つとなっている中国料理は、さらに和食、洋食から学び続け、それらの心を込めて料理を作る「匠の精神」から学び、優れた食材の選択と使用、美しい盛り付け、栄養面の調理など、和食と洋食の特長と融合させて、健康面に配慮した方向に発展させていき、まさに医食同源という中国の飲食文化を展開させていきます。