湯崎秀彦広島県知事を訪ねて
広島は中国と新たな交流で経済を活性化

広島――中国人ならすぐ「原子爆弾」が思い浮かぶ。1945年8月6日午前8時15分、アメリカが人類史上初の原子爆弾を広島に投下した。それから66年が過ぎ、広島はどう変わり、現在どうなっているのか。また、中国との関係はどうしようとしているのか。8月10日午後、県知事・湯崎英彦氏(46歳)に聞いてみた。

 エネルギー政策は国民とともに

―― 広島は戦後、県内の復興と核兵器廃絶を目指し平和を訴えてきましたが、この度の3・11についてはどう思うか。そして、原子力発電所(原発)問題は日本経済にどう影響するか。また、県として原発利用をどう考えているのか。

湯崎 1945年、広島は人類史上初の原爆の爆撃を受け、非常に大勢の人が放射能被害を受けました。最新データによれば、死亡者は27万5230人に及んでいます。現在日本には、未だ21万9410人の「原爆手帳」保持者がおり、その平均年齢は77.44歳に達しています。

広島県民は放射能被害が今なお記憶に新しいために、県民は誰でも皆、二度と放射能被害を受けたくない、と考えているのです。私は、広島では原発廃棄に賛同する人が多数を占めると思います。

一方、原発は、エネルギー提供という面からリスクを伴うが、経済発展にも大きな貢献をしました。これは誰も否定できない事実です。ということは、長期的かつエネルギー価格、安定性などの面から、総合的に慎重に考慮しなければならないと考えます。

大切なのは、こうした事情を県民に公表し、国民全体で討論し、最終的に原発利用を継続するか否かを決定することだと思います。すなわち、日本のエネルギー政策に関わる重要な問題について、最終的には核エネルギーを引き続き利用するのか、あるいは放棄するのかということです。国民の討論結果を待って決めなければなりません。首相一人で決めるものではありません。

 中国との経済交流を継続

―― 広島県は国際間のビジネス協力、特にアジア諸国との協力を非常に重視しています。県では、中国との協力関係を強化するために、『中国経済交流工程表』を作成していますが、その背景となっている理由、そして実施する方法について伺いたいのですが。

湯崎 広島県のGDPは国内第12位です。県民の平均所得は第14位で、県の輸出総額は第11位です。2010年10月、県は『広島未来チャレンジビジョン』を策定しました。その中に『中国経済交流工程表』があります。

今後3年間に、広島が引き続き中国の北京、上海、大連などの沿海都市と経済交流を継続し、さらに、内陸地区、特に広島と友好関係にある四川省と重慶市との間で交流を推進し、広島の経済をさらに活性化させたいと願っています。

 中国企業の投資をサポート

―― 現在、広島市と成都市の間には直行便が飛んでいます。今後、中国企業が広島に投資すると考えますか。それによって、広島の経済発展にどのような効果をもたらすと思いますか。

湯崎 広島県と成都市は、すでに27年もの友好交流の歴史があります。統計によれば、現在までに6300人余の相互訪問が行われています。しかし、まだまだ不十分です。

現在、中国企業が「外へ出る」戦略をとっており、積極的に海外に投資していることに注目しています。投資大国として中国はすでに世界第5位です。投資傾向からみると、中国企業の投資対象は、多くがハイテク技術と生活用品のぜい沢品関連です。この面では、日本企業は独特の力を備えているといえるでしょう。

広島県の製造業は、日本の中でもトップレベルにあり、県内の企業はハイレベルな新技術を備えています。それらの企業は、技術面で中国の必要とするものを完全に提供できます。そのため、将来、中国企業が広島へ来て直接投資したり資本提携したりする可能性が非常に高いと考えます。県では、それをサポートする体制を必ず構築いたします。

 中国人観光客に対して環境を整備

―― 中国の観光客に対しては、どのような施策を展開するつもりですか。

湯崎 観光旅行については、もっと多くの中国のお客様に広島に来ていただきたいと願っています。現在、どうすれば中国のお客様をしっかりおもてなしできるか検討しております。

たとえば、中国の銀聯カードが広島県内で広く使えるようにしたり、中国語の観光マップを作製するなど、さまざまな準備をしています。中国のお客さまに喜んで来ていただき、満足して帰っていただけるよう、素晴らしい旅行環境を必ず整備してまいります。