4月6日14時より、日本プレスセンター・大会議室(東京都内幸町)で第4回岡野龍太郎塾セミナーを開講した。岡野龍太郎塾は、日本の高名な政治評論家・森田実氏の「森田塾」を継承し、森田塾の中核メンバーを中心に昨年3月に設立された勉強会である。その設立理念は、森田実氏の理念「日中友好」と「平和主義」である。
第4回となる今回は日本海事センター客員研究員・福山秀夫氏により『中国の一帯一路の現状と展望―グローバル・サプライチェーンの視点から―』をテーマに熱烈な議論が展開された。
シルクロード経済交流ベルトは、コンテナ複合輸送が「一帯一路の核心」であり、いまや陸路と海路が有機的に結合し、東アジアとヨーロッパを結ぶシルクロード経済交流ベルトが構築され、中央アジアの経済発展の大きな起爆剤にもなっている。
日本では新聞などメディアの一部先入観にもとづく報道によりマイナスイメージが席巻しており違和感を覚えていたが、実際に検証した一帯一路は、政治的側面よりグローバル・サプライチェーンの視点で地球規模での大変革が起きていることが確認された。
日本郵船の北京事務所代表を務めた福山氏の講演は、中国と海運を知る専門家の視点で、①はじめに、②コロナ禍・ウクライナ戦争と一帯一路、③中央アジア物流の重要性、④二つの運河リスクと一帯一路、⑤今後の課題と展望の構成で進められた。
一帯一路構想とは、「経済政策」「インフラ整備」「投資・貿易」「金融」「人的交流」の5分野で「対外経済関係を拡大」し「国内の地域振興、経済活性化」を図る国家戦略とある。とりわけ中欧班列(China Railway Express)といわれ中央アジア物流を支える中央アジア各国との連携強化は、予想をはるかに超えてウズベキスタンやカザフスタン、タジキスタン、キルギス、トルクメニスタン、さらにはアゼルバイジャン、ジョージア、アルメニアなどの飛躍的な経済発展をもたらしている。
中国の連運港、天津、大連を港湾起点とするランドブリッジ輸送である三大海鉄連運ルートは中国鉄道コンテナ輸送の飛躍的な発展をもたらしたのだ。また2006年の昆明を皮切りに上海、重慶、成都、鄭州、大連、青島、武漢、西安、さらに天津、瀋陽、哈爾濱、寧波、深圳、広州、蘭州、烏魯木斉、北京と続々建設された鉄道コンテナセンター駅の建設は地図を見ただけでも気の遠くなるような壮大な規模である。
巨大化したコンテナによる①コンテナセンター駅間を結ぶ国内交通、②コンテナセンター駅と主要港湾を結ぶ国際交通、③コンテナセンター駅と国際貿易都市をつなぐ国際交通の結合が鉄道駅から国際陸港へと発展を遂げている。
世界地図を広げてこの毛細血管のように張り巡らされたユーラシア大陸横断鉄道網を見ていると、海から陸へ、東アジアの港から中央アジアを経由して欧州までの一大輸送ルートであることがよくわかる。大型コンテナを結合させた長さ800メートルにも及ぶ貨物車両では、たとえば中欧班列・鄭州の自動車部品列車が、エンジン部品、板金シェル、タイヤ、シートアクセサリー等を積載し、ミュンヘンに向っている写真は圧巻である。
コロナ禍で原油が高騰すると飛行機や船舶の輸送コストが上昇し、必然的に鉄道輸送が急成長した。一帯一路の10年とコロナ禍により中欧班列の輸送量はこの10年で約10倍以上に急増している。
さらにイエメンフーシ派の船舶攻撃により喜望峰回り航行を余儀なくされた“スエズ運河リスク“、そして気候変動による渇水問題で”パナマ運河リスク“が発生し、世界の物流は二つの運河リスクの緩和のため一帯一路がその役割を果たすことになっている。
日本はこれらのグローバル・サプライチェーンの危機対策と代替ルートの再構築に遅れている。時間とコストの高い喜望峰回り航行を回避するためにも、たとえば「日本―青島―西安―欧州各地」の輸送ルートの構築が急務である。
一帯一路の今後の課題としては、サプライチェーン再構築のため、ルートの多元化や複線化によって、海上輸送と中欧班列とのバランスの取れた活用の取り組み強化により持続可能な輸送体制の確立が必要である。
このセミナーで日本は島国であると改めて現実認識し、さらに一衣帯水と一帯一路は経済的必然から新たなる日中新時代にブリッジされることを確信した。まさに“目から鱗”の驚天動地のセミナーであった。
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