<アフターコロナ時代の日中関係>(12)
中国、世界の代表企業80社以上を招き「投資促進フォーラム」 日本外交青書に「戦略的互恵関係」登場

中国政府は3月24、25の両日、国際会議「中国発展ハイレベルフォーラム」を北京で開催し、世界の代表企業80社超のトップを招いた。李強首相は開幕式で「世界の企業が中国に投資することを歓迎する」と強調。「中国は今年も5%前後の成長を目標としており、国内需要の拡大に努める。科学技術のイノベーションを推し進め、人工知能(AI)の発展も加速する」と述べ、対中投資を呼びかけた。

この会議にはアップルやクアルコム、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、マイクロン・テクノロジーのトップなど半導体を含む米国のハイテク大手企業多数を招待した。日本からは日立製作所、武田薬品工業、みずほフィナンシャルグループ、野村ホールディングス、東京海上ホールディングスなどのトップらが招かれた。

李強首相は不動産や地方債務の問題について「一部の人が想像するほど深刻ではない」と説明、「対外開放も推進するので中国の大きな市場は世界にとっても大きなチャンスとなる」とアピールした。会場では米企業のトップが目立ち、アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は環境対策の目標に触れ「多くのサプライヤーが中国にあり、その目標を受け入れるだけでなく主体的に挑んでいる」などと述べ、中国のサプライヤーを高く評価した。

一方、日本政府が4月に公表する2024年版外交青書の中で、2023年11月の日中首脳会談で再確認した「戦略的互恵関係」を「包括的に推進する」と謳うことが明らかになった。日中友好の象徴ともいえる語句を記載したのは19年版以来、5年ぶりで、日中関係の進展が期待される。

このほか世界で大型選挙が相次ぐ24年は「各国の内政と国際関係が相互に影響を及ぼし、国際情勢は重要な局面を迎える」と記載され、日本の外交方針について「『人間の尊厳』という最も根源的な価値を中心に据え、世界を分断や対立ではなく協調に導く外交を展開する必要がある」と提言されている。

 

中国、「平和・多極化・包摂性」重視

こうした中、中国の外交攻勢が目立っている。王毅政治局員兼外交部長は3月の全国人民代表大会と中国人民政治協商会議関連の記者会見で「中国は世界にとっての平和の力、安定の力、進歩の力であり続ける」と強調。「平和は最も重要だ。現在ウクライナ危機が続き、イスラエルとパレスチナの情勢がエスカレートするなど、地政学上の衝突が激化しているが、中国は遺伝子に平和を刻みこんだ大国として、自国の安全と安定を願うだけでなく、世界平和のためにも積極的に奔走している」とアピール。その上で「安定は発展の基礎だ。平等で秩序ある世界の多極化と包摂的な経済のグローバル化は中国側が提唱するグローバルガバナンスの方策であり、グローバルサウスに共通する心の声を反映したものだ。一帯一路の共同建設は10年間にわたり続けられ、すでに規模が最大の国際協力のプラットフォームになった。中国側はグローバルサウスが国際秩序変革の鍵となるよう努力する」と訴えた。

 

「平和外交」、日中は協力可能

中国はウクライナ戦争、ハマス・イスラエル戦争の2大紛争について「一刻も早く停戦すべきである」との考えに基づき、仲介努力に総力を挙げたいとしている。日本が推進している、「平和」を志向する外交政策とも一致し、協力は可能だ。

1971年時事通信社入社。 ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。2010年RecordChina社長・主筆を経て相談役・主筆。欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英サッチャー首相、中国李鵬首相ら首脳と会見。著書に『中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ』等。