春節(旧正月)期間(2月10日から17日まで)に8連休となった中国。8連休中前後に地域をまたいで移動した人の数は延べ90億人以上と過去最高に達したと推計されている。2023年同期比で34%増と活況だった。厳しい移動制限を伴うゼロコロナ政策の影響などで、ここ数年減っていた旅行者が急回復した。
海外旅行などで中国を出入りした人も増加。春節期間中の出入国者数は約1351万人で、2019年の春節時の9割近い水準に回復した。
今年の春節は、感染症の予防・抑制が安定状態へ移行して初めて迎えたことから、庶民は故郷での新春祝いや飾り灯籠の観賞だけでなく、新たな国潮(中国風トレンド)を楽しみ始めた点が特徴である。新中国風衣服が通販サイトでよく売れ、博物館での年越しが新たな風景となり、さまざまな会場で伝統文化に新たな体験を加える双方向イベントが催された。
2024年は「消費促進年」、各種イベントで活性化
中国商務部は2024年を「消費促進年」と位置付け、一連の消費促進イベントを開催する。中国の消費潜在力は多くの政策努力により拡大基調をたどり、消費構造が改善されつつある。こうした状況について海外メディアは「辰年の新春に喜ばしい回復の兆し」などと報じ、「世界経済を押し上げる」と期待している。
今年の春節は、国連総会が旧暦の新年を国連の休日とする決議を採択してから初めて迎え、世界の人口の約5分の1がさまざまな形で旧暦の新年を祝った。ビザ(査証)の相互免除、出入国手続きの利便化、航路の回復などの刺激策が、入出境旅行の回復を加速させた。中国人観光客の海外旅行急増は訪問先の観光業を潤している。
中国人客、
海外1700都市を訪問
中国のオンライン旅行予約プラットフォーム・飛猪によると、8連休中の海外旅行の予約数は前年同期比で約10倍増と激増。ビザの相互緩和もあり、春節期間中の航空券予約数は、シンガポール行きが前年同期比30倍、マレーシア・クアラルンプール行きが同21倍、バンコク行きが同17倍になり、一部の旅行会社ではこの3カ国への旅行商品が新型コロナ禍前の2019年の水準までほぼ回復した。大手旅行予約サイトによると、今年の春節期間中に中国人観光客は世界1700余りの都市を訪れたという。
春節の大型連休期間中、中国国内の観光客の旅行総消費額は6326億元(約12兆6520億円)に達し、コロナ禍前の2019年と比べると7.7%増加した。
中国の映画産業のデータを発表する「灯塔専業版」によると、2024年の中国映画の前売りを含む興行収入はすでに100億元(約2000億円)を突破。このうち、2月10~17日の春節連休期間中の前売りを含む興行収入は80億元(約1600億円)に達し、昨年春節期間の67億6600万元(約1353億円)を上回り、約1億2000万人が鑑賞した。
中国で製作された日本映画「百円の恋」のリメーク作品「熱辣滾燙(英語タイトル『YOLO』=You only live once)」は上映7日間で24億元(約480億円)を記録し、興行ランキング1位となっている。
「春節消費の盛り上がりに象徴される経済の質の高い発展を支える要因は多岐にわたっており、潜在成長率は主要国でトップクラスを維持している。2024年の中国経済は回復・上向き基調を堅持し、日本を含む世界の発展にも寄与するだろう」(日本のシンクタンク幹部)と期待されている。
日本への中国人観光客も増加傾向にあり、東京、京都、富士山などで目立ち始めた。市民レベルの交流は相互理解に有用で、日中関係の改善にも寄与することになろう。
<評者プロフィール>
1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。
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