中国人民銀行、国家金融監督管理総局が17の金融措置を発表
賃貸住宅市場に支援措置

中国人民銀行、国家金融監督管理総局はこのほど、『賃貸住宅市場の発展に対する金融支援に関する意見』(以下、『意見』)を発表し、金融商品及びサービスモデルのイノベーションの強化、賃貸住宅市場における多様な投融資チャネルの拡大など、賃貸住宅市場発展のための17の支援措置を打ち出した。

長期賃貸住宅市場の

規範化を促進

賃貸住宅金融市場の規範化を加速するため、金融管理部門はこれまでに、『賃貸住宅市場の発展に対する金融支援に関する意見』(公開草案)』を起草し、2023年2月に意見を公募した。中国人民銀行の担当者によると、期間中、実効性のある意見が60件寄せられ、そのほとんどが採用されたという。中国人民銀行、国家金融監督管理総局がこのほど発表した『賃貸住宅市場の発展に対する金融支援に関する意見』は2024年2月5日から施行される。

『意見』では、賃貸住宅市場に対する金融支援は、最重要かつ喫緊の課題であるとし、主に大都市の新住民や若者の住宅問題を解決するため、各種事業主体の長期賃貸住宅の新規建設、リフォーム、運営を支援し、既存物件を活用し、保障性住宅(政府による補助がある低中所得者用住宅)及び商業用賃貸住宅の供給量を適宜増やすとしている。

事業主体の観点から、『意見』は自己所有不動産賃貸企業に対する支援が厚くなっており、「自己所有不動産の専門化、大規模化を図る住宅賃貸事業者への支援に重点を置く」と明記している。賃貸住宅市場の発展に向けた金融支援は「住宅は住むためのものであり、投機のためのものではない」という立場を堅持すべきであり、独立法人として運営され、事業の境界線が明確で、不動産の投資・管理の専門能力を備えた自己所有不動産賃貸企業を強力にサポートし、経営の大規模化、集約化を促進し、長期賃貸住宅の供給能力及び運営レベルの向上を図る。

招聯金融の董希淼首席研究員は、『意見』が打ち出した支援措置は、保障性住宅にも一般の賃貸住宅にも適用されると話す。特に、長期賃貸住宅については、関係金融機関の実務経験を踏まえて、明確な支援・指導装置が講じられており、これは、保障性住宅の建設を促進すると同時に長期賃貸住宅市場の規範化をより促進するものである。

 

金融支援を強化

賃貸住宅市場の持続可能な発展には、金融政策の強力な後押しが必要である。

『意見』では、賃貸住宅の開発・建設に対する金融支援を強化すると明記している。デベロッパー、工業団地、農村集団経済組織、企業及び公的機関等の事業主体が、法律に準拠した長期賃貸住宅の建設・改築を行うに当たっての、商業銀行の融資を支援する。賃貸住宅の開発・建設ローンの返済期限は一般的には3年で、最長でも5年を超えない。賃貸住宅建設プロジェクトの資本比率は、国務院の固定資産投資プロジェクト資本金制度の関連要件に準拠しなければならない。また、賃貸住宅を一括購入する団体には合理的配慮から、ローンの返済期限を30年までとしている。賃貸住宅経営のための融資を緩和し、商業銀行の、賃貸住宅関連企業のニーズに適った金融サービスモデルや金融商品の開発を奨励する。

賃貸住宅市場における投融資チャネルの多様化について、『意見』では、賃貸住宅企業に対する債券融資チャネルを拡大し、賃貸住宅担保債権の発行を奨励し、不動産投資信託ファンドを着実に深化させ、各種ソーシャル・ファンドによる賃貸住宅分野への投資を段階的にリードするとしている。

首都経済貿易大学京津冀不動産研究院の趙秀池院長は、『意見』を次のように分析する。「融資期間が最長3年の各種事業主体の長期賃貸住宅の新築・改築向けローンや融資期間が最長30年の賃貸住宅団体購入ローンなど、賃貸住宅に関する融資形態が刷新され、賃貸住宅市場に多様な投融資の道が拓かれ、各種建設用地を活用し、法令に基づいた長期賃貸住宅を建設、保有、運営するための金融支援が講じられたことで、関連の市場主体(営利を目的として経営活動に従事する自然人や法人)の投資を誘引し、賃貸住宅市場の着実な発展に寄与するであろう」。

賃貸・購入の両者をカバー

成長モデルを提示

『意見』は、投融資の支援策を明らかにするとともに、住宅賃貸の金融管理についても規定している。例えば、住宅賃貸金融業務の境界線は厳格に定められており、「住宅賃貸金融業務は賃貸住宅市場の発展を支援するものとして厳格に位置づけられるべきもので、短期的投機に対して融資を行ってはならない」と明記されている。併せて、金融リスクを回避するため、融資前審査と融資後の管理を厳格に行う。

業界関係者は、『意見』に示された支援措置は、賃貸住宅建設融資、賃貸住宅団体購入融資、賃貸住宅運営融資に及び、関連の金融管理規定を明らかにし、賃貸住宅事業を網羅しており、施策が発効され効果が現れれば、賃貸住宅市場の発展をより一層促進し、賃貸・購入の両者をカバーする不動産業界の成長モデルになると見ている。

趙秀池院長は次のように指摘する。「この度の新たな金融措置は、業界にとって、合法的かつ低コストで資金を調達する上で大きな助けとなり、各種社会基金が段階的に賃貸住宅市場に投資するという新たな道筋をつけ、賃貸住宅市場は安定的に資金を調達することができ、市場規模の拡大を促進し、不動産市場に安定的かつ健全な発展をもたらすでしょう」。

不動産シンクタンク・易居研究院の厳躍進総監は、『意見』に示された関連措置は実現可能性が高く、賃貸住宅市場の金融支援において重要な指導的役割を果たすとし、次のように話す。「供給側の関連施策が実施された後は、賃貸住宅企業は質の高い住宅やサービスをより多く提供できるようになり、新たな市場と若者のニーズに応え、需要側の権益をより一層保障し得るものとなるであろう」。