日米FXにおける投資機会
――現在の市況を考慮した日米FXの短期・中長期予測

短期的にはドル高・円安トレンドが継続している。2024年2月6日現在、1米ドル=148.57~58円で取引されており、企業マインドは市場予想を上回り改善している。円売り・ドル買いの勢いは好調な米国経済に支えられており、米連邦準備制度理事会(FRB)による早期の利下げ観測は弱まっている。また、1月の米国非製造業(サービス業)景況感指数は市場予想を上回る53.4に達するなど、最近の経済指標は好景気を示している。FRBの利下げ時期も先送りされる見通しで、円安・ドル高の流れが強まっている。

中長期的にはドル安・円高トレンドが確定している。下図は、ブルームバーグが算出した日米の金融政策の利上げ・利下げの確率に基づき、FRBが2024年4月30日から5月1日にかけて25bps(1bp=0.01%)の利下げを開始し、その後7月30日と31日、11月6日と7日にそれぞれ25bpsの利下げを実施すると予想したものである。日本の金融政策については、日銀が春闘の集中回答を経て、4月25-26日の金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)の中止とマイナス金利解除を決定するものと予測される。その後、短期的にはゼロ金利政策が継続されるだろうが、今年の金融政策の一般的なトレンドはドル安・円高であり、その傾向は顕著である。

日本企業は円安の恩恵により現在好調だが、今後は逆風が予想される

円安の恩恵を受けて日経平均株価が上昇している。日本経済新聞の報道によると、主要77社の2023年4~9月期の営業利益は前年同期比で約8100億円増加した。日本企業は海外生産を拡大しており、為替レートの恩恵は減少しているにもかかわらず、増益し続けている。平均為替レートは1ドル=約141円と約7円の円安で、利益は8129億円増え、これを除いた「実力ベース」の営業利益は10%増加したが、実際には20%増だった。20円以上円安が進んだ前年同期(約2兆円)を下回ったものの、なお大きかった。

トヨタ自動車の最新業績予想は過去最高となった。同社は、2024年3月期の営業利益を5500億円上方修正し、前期比84%増の4兆5000億円となると発表した。トヨタの営業利益は初めて4兆円台に達し、2年ぶりに最高額を更新した。

しかし、今後日本経済は逆風に直面する可能性がある。日米の金利差がさらに縮小すれば、円売り・ドル買い圧力が強まることが予想される。主要通貨に対する円高基調が強まれば、日本経済は輸入物価の上昇が抑えられる一方で、輸出企業の収益悪化や株価下落に襲われるだろう。日銀のマイナス金利政策の早期解除への期待も高まっており、円安基調はすでに変化の兆しを見せている。これらの要因を考慮すると、日本経済も逆風にさらされる可能性が高まっており、自動車をはじめとする輸出企業の収益悪化や株価下落につながる可能性がある。

 

張 益偉 Choko Zhang

上智大学卒業し、金融工学専攻。特許金融分析師(CFA)と金融リスクマネージャー(FRM)の資格を保有しています。卒業後、方正証券の半導体セクターアナリストとして2年間の経験を積み、現在はFinlogixでストラテジストアナリストとして勤務しています。