翁道逵 ベリーベスト法律事務所(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その68

一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「認定協会」という)は、AML/CFT・反社会的勢力対応の自主規則として、暗号資産交換業に係るマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する規則・ガイドライン、暗号資産交換業に係る反社会的勢力との関係遮断に関する規則・ガイドラインを規定しております。

今回は認定協会の「暗号資産交換業に係る損失補塡等の禁止に関する規則」(以下「損失補填規則」という)を紹介します。

 

  • 会員による損失補填の禁止

「損失補填規則」第2条によると、会員は、次の損失補填行為を行ってはなりません。

(1)資金決済法第2条第7項柱書において定義される暗号資産の交換等に係る取引(以下「暗号資産交換取引」という。)について利用者に損失が生じることとなり、又はあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合には、自己又は第三者がその全部または一部を補塡し、又は補足するため当該利用者又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該利用者又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為

(2)暗号資産交換取引につき、会員又は第三者が当該取引について生じた利用者の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた利用者の利益に追加するため当該利用者又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該利用者又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為

(3)暗号資産交換取引につき、当該取引について生じた利用者の損失の全部若しくは一部を補塡し、又はこれらについて生じた利用者の利益に追加するため、当該利用者又は第三者に対し、財産上の利益を提供し、又は第三者に提供させる行為

 

  • 事故に伴う損失補填

「損失補填規則」第4条によると、上記の第2条の規定は、同条各号の申込み、約束又は提供が事故による損失の全部又は一部を補塡するために行うものである場合には、適用しません。基本的に「損失補填規則」において「事故」とは、暗号資産交換取引につき、会員又は会員の代表者、代理人、使用人その他の従業者(以下「代表者等」という。)が当該会員の業務に関し、以下に掲げる行為を行うことにより利用者に損失を及ぼしたことをいいます。

(1)利用者の注文の内容について確認しないで、当該利用者の計算により暗号資産交換取引を行うこと。

(2)次に掲げるものについて利用者を誤認させるような勧誘をすること。

イ 暗号資産の性質

ロ 取引の条件

ハ 暗号資産の価格の騰貴若しくは下落

(3)利用者の注文の執行において、過失により事務処理を誤ること。

(4)電子情報処理組織の異常により、利用者の注文の執行を誤ること。

(5)その他法令に違反する行為を行うこと。

    (次回へ続く)