<アフターコロナ時代の日中関係>(8)
<米中首脳会談>バイデン氏「一つの中国政策維持」、習氏「米中の共存共栄・台湾平和統一方針」示す=日中首脳会談、日中韓外相会談で東アジアは平和的発展へ

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席は11月下旬、米サンフランシスコ近郊で会談。途絶えている米中両軍高官の対話を再開させることで合意した。

理解し合うことが重要

会談の冒頭、バイデン大統領は「米中は競争が衝突に発展しないように責任を持って競争を管理しなければならない」と指摘。気候変動や人工知能(AI)などの分野で「協力する責任がある」と呼びかけた。習主席は「地球は十分に大きく、米中が共に成功するのは可能だ」と両国の共存共栄をアピール。「(二人は)国民、世界、そして歴史に対して重い責任を持つ。世界の平和と発展に関する重大な問題について深く意見交換し、新たな合意に到達したい」と語った。

 

国防・AI・経済などで対話枠組み設置

会談では両軍の高官協議や国防当局の対話、海上軍事安全保障会議を再開することを確認した。バイデン氏は記者会見で「米中の競争が紛争に発展しないようにするのが私の責任だ」と表明。中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えず、米国が台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を維持すると明言。習氏も「平和的統一」方針を表明した。

習主席は会談で「世界経済は回復し始めたが、産業サプライチェーン(供給網)の混乱や保護主義の台頭といった問題は顕著になっている」と問題提起。経済安全保障を理由に先端半導体などの対中輸出・投資規制を主導する米国をけん制した。両首脳はAIに関する政府間対話を立ち上げることでも合意した。

米国では対中輸出規制により半導体製造装置の対中輸出が半減し、関連業界にとって大きなダメージに。航空機、自動車など他の産業分野についても、米中対立による打撃が甚大なため、ビジネス機会の減少に金融・産業界の不満は高まっており、「世界最大の市場(中国)を失うな」と猛烈なロビー運動を展開している。イエレン財務長官、レモンド商務長官はじめ米国の経済閣僚が相次いで北京入りし、「中国との経済枠組み設置」で合意。バイデン政権は半導体の対中規制を軍事開発に直結する分野に限定する方針だ。

今回の米中首脳会談で首脳や閣僚レベルの会談を頻繁に開催することになったことも特筆される。特に米中間の伝統的な合意事項である「中国は一つ」原則をバイデン氏が再確認し中国による武力統一を牽制したのに対し、習氏が「平和的統一」方針を示したことも注目される。

 

日中首脳会談、戦略的互恵関係発展で合意

米中首脳会談の翌日、日中首脳会談が開催され戦略的互恵関係を発展させることで合意した。これは2006年に合意した経済閣僚による協議の枠組みで、閣僚級で具体的な協力の擦り合わせを狙う。日中両政府は半導体の素材や重要鉱物などの輸出管理を巡る対話枠組みの新設で合意している。

一方、日中韓の外相は11月末、韓国・釜山で4年ぶりに会談し、人的交流や経済協力・貿易、平和・安全保障を含む6分野の取り組みを申し合わせた。上川陽子外相は「協力を再スタートさせる契機としたい」とアピール。中国の王毅共産党政治局員兼外相は「健全かつ持続可能な発展を実現するために新たな貢献をしていく用意がある」と呼応した。米中、日中、日中韓の対話が促進され、東アジアの平和的発展の道が開かれたことを歓迎したい。

<評者プロフィール>

1971年時事通信社入社。ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。Record China社長・主筆を経て現在同社相談役・主筆、人民日報海外版日本月刊顧問。日中経済文化促進会会長。東京都日中友好協会特任顧問。著著に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」など。