高速鉄道で星空や大海原を見に行こう
高速鉄道が旅行ブームを後押し

2023年の中秋節(旧暦8月15日、23年は9月29日)と国慶節(建国記念日、10月1日)に合わせた9月29日から10月6日までの8連休には、高速鉄道で出かけることが大きな注目を集めた。

連休初日の全国鉄道輸送旅客数は延べ2009万8000人に上り、過去最高を更新した。8日間の連休期間中、鉄道の1日当たりの平均輸送旅客数は1686万2000人となり、23年の春運(春節<旧正月>期間の帰省・Uターンラッシュに伴う特別輸送体制)期間の約2倍になった。「高速鉄道に乗って旅行に行く」ことは、多くの中国人にとって今や暮らしの中のリアルなワンシーンになった。

長年にわたる発展を経て、南北・東西方向各4ルートからなる「四縦四横」高速鉄道網が全面的に完成し、さらにより高密度の南北・東西方向各8 ルートからなる「八縦八横」高速鉄道網が形成されつつある。高速鉄道は旅行資源を巧みに結び付け、旅行消費を活性化し、地域経済発展への波及効果を高め続けている。

 

高速鉄道で星空や大海原を見に行こう

寧夏回族自治区の中衛市は昔から「星の故郷」と呼ばれ、中国の絶好の星空観測スポットの1つだ。22年には銀蘭高速鉄道(同自治区銀川市-甘粛省蘭州市)が開通して、中衛市への旅行だけでなく、寧夏・甘粛両地域の観光市場の盛り上がりも後押しした。高速鉄道に乗って「星の故郷」を訪れ、心に染み入る「癒やしの旅」をする観光客がますます増えている。

観光客の蒋来さんは、「蘭州から中衛へ旅行に行くのに、これまでは5時間以上かかっていた。今は高速鉄道があるので2時間足らずで済むし、日帰りできるようになって、本当に便利になった」と話す。

23年の国慶節連休期間中、広東省広州市の陳さん一家は、新たに開通した広汕高速鉄道(同省広州市-汕尾市)に乗った。「広汕高速鉄道が開通して移動がとても便利になったので、汕尾に行って海で潮干狩りをしたり、紅海湾でサーフィンを体験したり、シーフードを食べたりしてきた」と陳さん。

汕尾は、海辺の湿地、海の見える民泊施設、「海の古城」など、海にまつわる要素を目玉として打ち出しており、大勢の観光客が「潮干狩りの旅」を楽しみにここへやって来る。

 

人気の観光スポットをつなぐ高速鉄道

実際、複数の地域でここ数年、高速鉄道旅行によって、各地の特色ある「高速鉄道経済」が形成されている。

貴州省と広西壮(チワン)族自治区では、両省・自治区で初めての設計最高速度350km/hに達する貴南高速鉄道(貴州・貴陽-広西・南寧)が開通したことで、壮麗な美しさの広西から多彩な魅力のある貴州まで2時間余りで行けるようになった。沿線にはカルスト地形の名所や美しい風景が数多くあり、「ゴールデン旅行ルート」と呼ばれている。

貴州大学経済学院の熊徳斌教授はメディアに対し、「貴南高速鉄道は沿線各県の観光資源開発を牽引し、景勝地・観光スポットを一つにつないでおり、『休日旅行』から『平日旅行』へ、『オンシーズンの旅行』から『オールシーズンの旅行』への転換を促し、『移動はスピーディで滞在はゆったり』という旅行スタイルへのトレンドを作り出した」と指摘する。

早い時期に開通した高速鉄道の中にも、「最も美しい高速鉄道路線」や「グルメ路線」、「爽やか路線」などと呼ばれる路線が生まれている。例えば、杭黄鉄道(浙江省杭州市-安徽省黄山市)は、総延長287キロメートルと短めだが、「中国で最も美しい高速鉄道路線」と呼ばれている。沿線には世界レベルの観光都市である杭州と黄山があり、国家級景勝地も57カ所ある。

2019年12月末に開通した昌贛高速鉄道(江西省の南昌市-贛州市)は、井崗山の旧革命根拠地や贛南などかつての中央ソビエト区を通る「ソビエト区高速鉄道」で、沿線には中国人民解放軍結成の地である南昌市もあるため、「最も赤い高速鉄道」とも呼ばれる。

この路線は学習旅行や赤色観光(革命ゆかりの地をめぐるツアー)をする人が多く、特に赤色観光の特徴が際立ち、観光客のタイプが比較的はっきりしている。「最も赤い高速鉄道」を打ち出すことで、客観的に見て、沿線の革命ゆかりのスポットをじっくり見て回るタイプの観光客に的を絞った誘致効果を上げている。

 

暮らしと旅行を変える高速鉄道

高速鉄道による旅行の人気の高まりは、人々の交通ニーズの微妙な変化を映し出している。「高速鉄道に乗って旅行に行く」ことは多くの中国人にとって、今や暮らしの中のリアルなワンシーンとなった。

ここ数年、中国の鉄道事業は急速に発展した。特に高速鉄道網が日増しに改善され、全国の都市エリア人口が50万人以上の都市のうち95%以上が高速鉄道網に接続し、都市クラスター間の距離がますます縮まり、ほとんどの旅行目的地に高速鉄道でスムーズに行けるようになった。

それだけではなく、月間パスや乗り放題パスなど、複数タイプの新しい切符が発売され、高速鉄道が都市をまたいで「公共交通機関化」、「地下鉄化」する流れも強まっている。速度の速さ、乗り換えの便利さ、定時運行率の高さにより、高速鉄道は理想的な移動ツールになった。特に1000キロメートル以内なら、高速鉄道は飛行機よりもコストパフォーマンスが高い。

高速鉄道の新しい路線が開通し、それにともなって高速鉄道網が動態的に発展するたびに、人々の旅行先の選択に影響を与えるようになった。これまでは目的地が最優先だったが、現在は「高速鉄道で何時間か」が選択の新たなポイントになっている。

より注目されるのは、交通条件が変化を続けていることから、観光資源は位置する場所によってその価値が変わり、動態的な競争にさらされるようになったことだ。

あまり知られていなかった観光資源にとっては、高速鉄道の開通で寂れていた市場が活性化され、活力を得た観光資源がそのエリアに「後続車がカーブで一気に追い越しをかける」ような勢いある発展チャンスをもたらす可能性もある。

また交通インフラは整っているが観光資源はそれほどでもないエリアにとって、高速鉄道は「多くの人が通過してしまう」という新たな悩みをもたらす可能性もある。いずれにしても、高速鉄道は各地の観光産業のトランスフォーメーションや高度化、ひいては地域経済発展の再構築までも促す貴重なきっかけになるだろう。