中国の若者が市場に夢中なのはなぜか
求めるのは心の癒やし

私たちの従来の認識では、生鮮品などの食品を扱う市場のコア消費層はこれまでずっと中高年だった。しかし今では、トレンド感とアート感のある内装で、親しみやすさもありながら「映えスポット」にもなっている市場がいくつもあり、大勢の若者が訪れている。市場は多くの若者が熱中する「シティウォーク」や「憂鬱な気分の解消」ができる人気スポットになりつつある。

都市を理解するには

市場の活気を体験せよ

ある都市のことを理解する最もよい方法は、市場の活気を体験することだとよく言われる。市場が大勢の若者にとって出張や旅行で「行くべきスポット」になっているのも、まさにそれが理由だ。

たとえば、中国で最も人気のある雲南省昆明市の大観篆新農貿市場では、雲南の特色ある山菜やカラフルな食用花が売られており、キノコが出回る季節になるとさまざまな野生キノコも登場する。

山東省青島市の団島農貿市場では、市外からの観光客が喜餅(お祝い用お菓子)、油炸糕(油で揚げたお菓子)、脂渣(油で揚げた細切り豚肉)の「3大市場グルメ」に群がるだけでなく、シーフードの小売エリアや加工エリアも非常に人気がある。目の前で調理されたものをすぐにその場で食べられ、大勢の観光客が「新鮮!」と言いながら舌鼓を打っている。

市場で新鮮さやおいしさ、安さだけでなく、癒やしも求めている若者も多い。

85後(1985年から1989年生まれ)の四川省成都市のネットユーザーはソーシャルメディア「小紅書」のコメント欄に、「子猫や子犬の売られている屋台を目当てに市場に行って癒やされた気持ちになった。普通のショッピングスポットと比べて、市場に行くと『心が安らぐカプセル』の中に入ったような感じがする」と書き込んだ。

市場に写真を撮るために出かける人もいる。雲南省麗江市の忠義市場は雪山が見える市場だ。江蘇省蘇州市の双塔市集には、文化クリエイティブ商品が並ぶ屋台や、江蘇省・浙江省グルメが食べられるエリアがあり、毎日大勢の若者が市外から写真を撮りにやって来る。

安徽省合肥市の九華山路菜市場は「徽風晥韻(安徽省の文化・歴史・自然の特色)」がテーマで、古式ゆかしい木製の入り口看板や、黒レンガ・黒瓦の安徽風建築様式で人気スポットになった。市場は今や観光スポットへと変わり、若者たちによって新たな撮影スポットとなった。

 

「癒やし」と

市場特有のロマン

市場が新たなランドマークになったのはなぜだろうか。「癒やし」――これが大勢の若者が市場について語る時のキーワードだ。

市場は子ども時代の思い出や故郷の記憶と結びついている。市場の中では、身体の五感がフルに活動する。海産物の香り、現地なまりのかけ声、珍しい特産品、色とりどりの野菜や果物、親たちのちょっとしたおしゃべり。どれも市場特有のロマンを感じさせる。

都市の速いリズムの中で暮らす若者は、高いビルばかり見ているうちに町の通りの情景や活気を思い起こし、有名な景勝地を訪れるのにも飽きると、素朴な何でもない日常に戻りたくなるのだろう。