<アフターコロナ時代の日中関係>(3)
米中対立「雪解け」へ一歩、今秋に首脳会談

米欧企業の「中国詣で」も活発化

ブリンケン米国務長官が6月に中国を訪問、対立していた米中両国は対話に向かい始めた。バイデン大統領は既に「(米中の)雪解けは近い」と明かし、今秋に米中首脳会談が実現する見通しだ。欧州の主要国首脳の「中国詣で」も活発化している。有力民間企業も「世界最大の市場の確保と拡大」を狙い動き出した。

米マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏は6月16日に北京で習近平国家主席と4年ぶりに会談、「世界中の人々のために、中国がどのような役割を果たせるか。健康や気候変動といった社会課題への対応を話し合った」と明かした。マイクロソフトは2022年に中国進出30周年を迎えゲイツ氏はビジネス面での米中関係を緩和する役割を担っている。

中国は今年1月、厳格な行動制限や水際対策を柱とする「ゼロコロナ」政策を解除。これを機に、ビジネス面での活発な往来が復活した。

米電気自動車(EV)大手のテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は5月末、3年ぶりに訪中した。生産能力の4割(75万台)を上海工場が担っており、「米中間のデカップリング(分断)に反対し、中国事業を引き続き拡大する」と明言した。中国外交部によると、秦剛国務委員兼外相との会談の席で、対中投資の更なる拡大を表明した。

巨大市場は健在

商機を追求

米商務省によると、2022年の米中の貿易総額は前年比約5%増の約6900億ドル(約99兆円)に拡大。新型コロナウイルス禍で減退したが、4年ぶりに過去最高を更新した。両国の相互依存は深まっており切り離せない。

米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは5月末、上海を訪れ「中国市場への注力をやめない」と強調した。中国が21年に認めた、外資系金融機関による証券事業の全額出資子会社第1号はJPモルガンだった。投資銀行業務で中国企業から得られる手数料収入は大きな魅力だ。

米アップルのティム・クックCEO、米半導体大手クアルコムのクリスチャーノ・アモンCEO、インテルのパット・ゲルシンガーCEOらも競うように訪中している。

習政権は最高指導部メンバーや閣僚が会談に応じ、歓迎姿勢を強調している。安定成長を続けるには外資の投資や技術が欠かせない。

欧州勢も負けていない。オランダ半導体製造装置大手ASMLのピーター・ウェニンクCEO、スイスの半導体大手STマイクロエレクトロニクスのジャン・マーク・シェリーCEOが訪中しており、STマイクロは7日、重慶に中国企業との合弁でパワー半導体の工場を建設すると発表した。

政府首脳によるトップセールスも目立つ。フランスのマクロン大統領は4月、航空機大手エアバスのトップら企業関係者を引き連れて訪中し習氏から異例の厚遇を受けた。訪問中、エアバスは地元当局と天津工場のライン増設で合意、中国航空器材集団から受注した160機の商談も進展した。

ドイツのショルツ首相もフォルクスワーゲンをはじめとする企業トップを率いて昨秋に訪中済み。6月20日には中国の李強首相率いる訪問団がドイツを訪れ経済協力を話し合った。

日本企業にとって最大の貿易投資国・中国の存在感は増すばかり。多くの日米欧企業は商機をしたたかに追求している。