話題の「専業子供」に見る中国の若者事情

卒業シーズンを迎えている中国のネット上で最近、「専業主婦」ならぬ「専業子供」というニューワードが話題を集めている。

「専業子供」とは何か

「専業子供」は端的に言うならば、実家に住み、両親の世話をして、両親から給料をもらう人を指す。

あるネットユーザーは最近、「転職先を決めずに退職して実家で過ごしていたら、両親が月給4000元(約7万8000円)をくれるようになった。私の仕事は、一緒に買い物に行ったり、料理をしたり、街歩きに付き合うこと。家族のために毎月1-2回旅行も計画している。それ以外の時間は自由に使える」と書き込んでいる。

こうした現象に、ネット上では、「『専業子供』の本質は、すねかじりで、名前を変えただけ。提唱する価値はない」という声もあれば、「『専業子供』とすねかじりには大きな違いがある。『専業子供』をしている人の気分は、労働者に近く、一概に『寝そべり現象』ということはできない」という声もあるなど、賛否両論となっている。

しかし、取材では、「専業子供」になることを選んでいる若者には様々な理由があることが分かった。

例えば、「仕事に疲れたため、実家でしばらく『充電』しているだけで、コンディションが整えば、チャンスを探して再出発する」や「両親の体調が悪く世話が必要。仕方がないし、子供として果たすべき責任でもある」などだ。

もちろん、単に就職活動や仕事から逃避して、「すねをかじっている」という若者もいる。家庭の背景やそれぞれの理由を無視して、レッテルをはることは、「専業子供」を理解する上で正しい方法とは言えないだろう。

「専業子供」の登場には根の深い社会的原因もある。しかし、「専業子供」という存在が成り立つのは、一部の家庭にはその存在を支えられる経済的な余裕があるからであり、そこに家族と一緒にいたいという思いが重なり、若者に柔軟な「就職」の機会を提供しているということもできる。

また、「専業主夫」や「専業主婦」と異なり、「専業子供」という言葉は、登場と共に議論を巻き起こしている点は注目に値する。今の若者は就職に多大なプレッシャーを抱えているだけでなく、理想的な仕事の環境を強く望んでいることを反映しているとも言えるだろう。

経済や社会が発展を続けるにつれて、現代の若者の職業選択に対する見方にも変化が生じており、ただ単にお金を稼いだり、収入の多さを気にしたりするよりは、仕事にやりがいを感じたいと願っている。

寝そべり型のすねかじりに反対すると同時に、仕事を探す過程で、ペースを落とす若者たちを広い心で受け入れなければならないのかもしれない。