<アフターコロナ時代の日中関係>(2)
中央アジアと広島で開かれた「二つのサミット」、新たな時代を開く

5月中旬に、中国・中央アジアサミットとG7広島サミットが開催された。古代シルクロードの出発点(陝西省西安市)で開かれた中央アジアサミットには、中国のほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンが参加した。6カ国首脳が対面で集まるのは初めて。中国と中央アジア諸国が連携し、新たなページを画したイベントとして注目される。

中央アジアは、豊富な資源を有し、中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」の主要ルートである。習近平国家主席は共同記者会見で、「一帯一路」が今年で10年の節目を迎えるとして、中央アジア諸国と産業・投資の協力拡大などを進める方針を表明。「新たな出発点」として協力を強化発展させると謳った。

ユーラシアを貫く「シルクロード経済帯」の拡充強化の意義は大きい。中国と中央アジア5カ国の昨年の貿易総額は700億ドル(約9兆5000億円)を超え、過去最高水準を記録した。中国・中央アジアサミットは最終日に「西安宣言」を採択。中国と中央アジアは「運命共同体」として、経済や文化の領域から国家安全の領域まで幅広く協力すると宣言した。インフラ開発などの支援策も提示。上海協力機構(SCO)の枠組みでも、中国、ロシア、インドと中央アジア諸国は、地域の安全保障と経済発展で積極的に協力するとしている。

東アジア―欧州間の

「国際貨物列車」が急拡大

中央アジア5カ国は、重要なハブとして、中国が欧州域内で経済的な役割を拡大するのを可能にしてきた。ロシア経由で中国と欧州を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」もその一例。2011年3月に重慶市からドイツのデュイスブルクまで運行したのが始まり。湖北省武漢市、四川省成都市、河南省鄭州市、陝西省西安市など他都市からも運行されている。中国各都市と欧州23カ国180都市を結び、2021年の運行本数は前年比22.4%増の1万5183本に達した。

日本が議長国を務めたG7サミットの共同宣言を精査すると中国に対する軟化姿勢が際立つ。ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃来日で沸いた中、中国を巡っては「我々は『デカップリング(切り離し)』や内向き志向にはならない。『デリスキング(リスク低減)』と多様化が必要だ」と新たな表現を盛り込んだ。

宣言を主導したのはウクライナ侵攻後、脱ロシア依存と経済低迷で苦しむ欧州連合(EU)。フォンデアライエン欧州委員長は「中国の切り離しは不可能で欧州の利益にならない」と訴えた。米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)も4月に「米中経済の『デカップリング』を求めてはいない」と方針転換。大事なのはリスク軽減に向けて強靱なサプライチェーンを築くことにあると説いた。マクロン仏大統領が対中融和を主導し、バイデン大統領も「中国とは雪解けになるだろう」と言明。近く閣僚レベルや首脳レベルで対話する方針を明らかにしている。

1971年時事通信社入社。 ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。2010年RecordChina社長・主筆を経て相談役・主筆。欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英サッチャー首相、中国李鵬首相ら首脳と会見。著書に『中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ』等。