<アフターコロナ時代の日中関係>(1)
日本企業にチャンス到来 上海自動車ショー、広州交易会に大挙出展

中国ではコロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ」政策から「アフターコロナ」に移行し、景気が持ち直している。4月中旬に発表された中国の1~3月の実質国内総生産(GDP)は前年同期比4・5%増となり、22年10~12月の2・9%増から急加速した。不動産業、宿泊・飲食、交通運輸、不動産業なども増加に転じ、全12業種がプラス成長となった。今後は景気回復の一層の拡大が課題。自動車など耐久消費財の販売が低迷。生産も緩やかな回復にとどまった。

こうした中、4月中旬に第20回「上海モーターショー」が開催され、日米欧をはじめ世界中から、関連企業が集結した。世界最大の中国市場では、2022年に前年の約1・8倍にあたる約536万台の電気自動車(EV)が販売された。中国の専業メーカーや欧米勢に後れを取った日本勢も相次ぎを投入し、巻き返しを図る。

トヨタ自動車がEV「BZ」シリーズの新型コンセプト2モデルを、日産自動車も新たなEVコンセプトモデル「アリゾン」を初公開。ホンダは、中国専用のEVブランド「e:Nシリーズ」の第2弾となる「NP2」などを世界初公開した。マツダは長安マツダ、長安汽車、マツダが共同開発した電動車を24年末に導入する。

EV転換は中国が先頭を走っている。新車のEV比率は欧州主要18カ国で15%なのに対し、中国では22年に20%に達した。販売台数は日本の新車市場全体を上回る規模に拡大している。

一方、伝統の第133回広州交易会が4月に開催され、過去最大規模となり大賑わいだった。日本企業もハイテク製品などを数多く出展。ゲーム機や工作機械企業も、新製品を海外の取引先に紹介した。

 

呉江浩駐日大使、日中国民の交流拡大を期待

こうした中、中国の呉江浩駐日大使が、3月の着任後初めて日本記者クラブで会見した。最近の日中関係について、1972年の「国交正常化以来、最も複雑な状況に直面」していると憂慮。台湾問題では「中国は平和的な統一」を目指すとし、「台湾有事は日本有事」説は荒唐無稽と語った。

さらに日本のアニメや映画は中国で人気があるとし「個人的に好きなアニメは『君の名は。』。映画は『東京家族』が印象的」と明かした。「日中両国民の心には通じるものがあるのでこれからも大事にしていきたい」と語った。

「人的交流は中日両国の強みであり、コロナ禍前は中国人の訪日は年間1000万人近かった」と指摘、両国民の更なる交流拡大を期待した。

中国の李強首相は3月中旬、「改革開放を揺るぎなく深化させる」と明言した。一般市民にとって重要なのは生活であり、経済活動が活発になることが生活向上につながる。民生製品に強い日本企業にとって大きなチャンスが広がる。

 

1971年時事通信社入社。 ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。2010年RecordChina社長・主筆を経て相談役・主筆。欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英サッチャー首相、中国李鵬首相ら首脳と会見。著書に『中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ』等。