日本人に太極拳の魅力を伝える中国人女性

太極拳はシンプルで流れるようなゆっくりとした動きで健康な身体づくりをすることができるため、幅広い年齢層の間で人気がある。そして、近年、太極拳は海外でも少しずつ人気となり、注目を集めるようになっている。

自己と向き合う

時間となる太極拳

江蘇省南京市出身の張軼蓉さんは6歳の時に武術を習い始め、11歳の時に省チームのメンバーに選ばれて太極拳の訓練を受けるようになり、10年以上にわたって太極拳の選手として活躍した。そして引退後、「新しい自分探し」のために日本に留学した張さんは大阪大学の大学院でスポーツ心理学を専門に学んだ。

張さんは「選手をしていた時は、ただひたすらチャンピオンになるにはどうすべきかばかり考えていた。しかし留学期間中に学んだ理論や知識が助けとなり、太極拳に対する理解が深まった」と話す。

そして、「太極拳を練習していくことで、体を鍛えたり、チャンピオンになることもできるが、より重要なのはマインドフルネスだ。その練習の過程で、気持ちを落ち着け、自己と向き合い、自分について学び、知り、悟り、自分の価値をじっくり考え、セルフコントロールし、自分を調整し、精神状態を高めることができる」としている。

融合とイノベーションを

通して新しい流派に

卒業後、張さんは日本で健康に関わる仕事にずっと従事しながら、太極拳のインストラクターも務め、その文化や理念を活動に取り入れている。そして、太極拳を教える方法について研究し、目的によって教え方を変え、生徒がより素早く理解し、よりよい状態で入門を果たして理解を深め、レベルアップできるよう取り組んでいる。

生徒に教える際、張さんは「外から内を磨いていく」という方法に沿って、まず生徒の姿勢を矯正するところから始めた後、呼吸の仕方を教え、最後に内心を磨いていく。

また張さんは春には気力を増強させるというテーマを掲げるなど、特定のテーマを設置し、太極拳の動きに取り入れ、体と心が一つになる状態を作り出している。そして飲食や運動、睡眠と結びつけたカリキュラム体系を構築し、生徒一人ひとりが自分に合った健康の道を見つけることができるようにもサポートしている。

伝統的な二十四式太極拳などと比べると、張さんが伝え、教える太極拳は「新しい流派の太極拳」と言うことができるだろう。張さんは「ある時、日本の大学1年生の講義で太極拳を披露した。学生はみんな興味津々といった様子で、講義を終えると、たくさんの学生から太極拳やその文化に対する理解を深めたいので、連絡先を教えてほしいと言われた」と笑顔で話す。

張さんは今後、太極拳をさらに深く学び、スキルを上げ、実践を通して精進し、一人でも多くの日本人に太極拳の魅力を体験してもらいたいと考えており、「太極拳は私の体の一部になっている。それは、私の生涯の仕事でもあり、これからも自分なりの方法で貢献していきたい」とした。