日本のブルーオーシャン市場に参入した中国のEVメーカー

2023年1月末、中国の自動車メーカーの比亜迪(BYD)はバッテリー電気自動車(BEV)のSUV(スポーツ用多目的車)「ATTO 3」の日本市場での販売をスタートし、日本の乗用車市場への全面的参入の第一歩を踏み出した。

EVの普及率が低い

日本の自動車市場

ここ数年の間に、中国の自動車メーカーの日本市場進出が加速し、その高品質・低価格の製品で日本の消費者の信頼を獲得した。

専門家の見方によれば、世界的な脱炭素の流れに後押しされて、電気自動車(EV)は将来の自動車市場の中心になるとみられる。この動きが中国メーカーに日本の同業者に追いつき追い越すチャンスをもたらした。

日本は世界の重要な自動車市場だが、EVの普及率が低い。

英国の自動車分野の調査会社LMCオートモーティブのまとめた統計では、2022年の日本の新車販売台数のうちBEVの乗用車の占める割合はわずか1.7%で、中国の19%及び欧州の11%を大きく下回った。

日本総合研究所創発戦略センターの程塚正史シニアマネジャーは、「日本の従来型自動車メーカーはガソリン車を生産して大きな売り上げと高い利益を得てきたので、モデル転換の原動力に乏しい。統計によれば、21年に日本全国で生産されたBEVは世界の生産能力の1%にも満たなかった」と述べた。

日本の名古屋大学の野辺継男客員教授は、「日本製のEVは選択肢に限りがあること、日本の消費者は海外での自動車電動化のトレンドに非常に注目していることからATTO 3の日本での売り上げは相当なものになるだろう」と予想した。

中国の上汽通用五菱汽車股份有限公司も今年の春に日本で小型EV「宏光MINI EV」を発売する計画で、現在はマーケティングリサーチを行なうとともに型式認証のための手続きを進めているという。

 

中国製EV

高品質・低価格

長年にわたり日本市場を入念に開拓してきた中国の自動車メーカーは、それぞれの優位性に基づいて日本の電動商用車市場で一定のシェアを獲得している。

15年には、京都市のある会社が比亜迪のEVバス5台を購入した。これにより日本のEVバス市場への中国メーカー進出の幕が上がった。今や、比亜迪は日本のEVバス市場で約7割のシェアを獲得し、さらに30年に日本市場で売り上げ4000台を達成する計画だ。

同時に、比亜迪は日本市場でEVフォークリフトも販売している。EVフォークリフトはガソリン車のフォークリフトにあった農産物への汚染の問題を解決することができ、ユーザーに高く評価されている。

このほか、中国製EVトラックも日本市場で人気が高い。21年には日本の物流企業のリーディングカンパニーである佐川急便が中国の広西汽車集団有限公司が生産したEVトラック7200台を購入することを明らかにした。

同年には、別の物流大手のSBSホールディングスも中国製EVトラック1万台を購入すると発表。同社の鎌田正彦社長は、「中国製EVを購入したのは高品質・低価格だからだ」とした。