漢服を着て花見のブームが到来したか

「漢服姿で街を歩く女の子をよく見かけるようになった。特に春が来て花が咲き始めると、公園には本当にたくさんの漢服姿の人が写真撮影をしている」と今春、「漢服ブーム」の到来を感じている人は多い。「仙女風」に着飾った漢服姿の人々が、北京市の故宮や北海公園、玉淵潭など人気観光エリアの「動く季節の風景」になりつつある。伝統文化に対する人々の注目が高まり、若者たちのファッションスタイルがますます多様化するにつれて、漢服を着て街を歩くことは、もはや奇抜な行為ではなくなっている。またこうしたトレンドは、オンラインショップや実店舗を巻き込んだ「漢服経済」の起爆剤にもなっている。


漢服を着て花見している女性たち

 

若者たちの興味引く「仙女風」漢服スタイル

漢服スタイルを好むのは、学生やホワイトカラーが多いことが取材から明らかになった。また彼らは漢服のもつ浮世離れしたようなムードに魅せられ、漢服を試しに着てみたいと考えるようになり、その思いに駆られた結果、オンラインショップで購入したり、店でレンタルしていた。

写真撮影のため様々なポーズをとっていた漢服姿のある女性は、「漢服についてあまり詳しい訳ではなく、ただとてもきれいだと思ったから。今日の衣装は、ネットショップの淘宝でそろえた。そんなに高くもなったし、写真を撮るために買っただけ」と話した。

漢服ファンの中でももっとこだわる人は、わざわざカメラマンに依頼して漢服姿の写真を撮影してもらうという。北京に住む何さん(女性)は、「自分では漢服に合わせたヘアスタイルを整えることができないので、漢服をレンタルしてくれるフォトスタジオを探し、花見シーズンに撮影してもらうことにした」とした。

 

漢服体験できる店舗が人気

中国伝媒大学の漢服サークル「子衿」漢服社の米菲(仮名)さんは、「これまで、漢服はあまり一般に広まっていなかったため、自分たちで生地を選び、プロの仕立て屋にオーダーして作ってもらっていた。漢服の仕立ては、専門性が極めて高く、普通の仕立て屋では裁断することもできない。そのため、一着作るだけでもとても高かった。でも今では、淘宝でも価格がリーズナブルな漢服を取り扱っている店舗がたくさんある。そのためネットで直接購入する漢服ファンがほとんどだ」と話す。

淘宝で検索してみたところ、漢服を販売している店舗は非常に多く、値段も数百元から数千元まで実にさまざまだ。ある漢服ファンは、「なかでも銜泥小筑は、創業10年以上の歴史ある店で、フォロワー数はすでに数十万レベルに達している。また、錦瑟衣庄や泱漢、明華堂、鹿苑听松などの店舗も次第に漢服分野で認知度をアップさせているほか、価格が数千元から1万元を超える高級オーダーメイド専門店もある」と紹介した。

質の良い精巧な漢服を一式手に入れようとするなら、その値段は決して安くはなく、1着買って1度しか着なかったとしたら、あまりにも割に合わない。そのため漢服体験店に行き、300元(約5000円)ほどで1日レンタルするという方法を選ぶ人も少なくない。北京市前門地区の楊竹梅斜街にある漢服体験店では、客が事前予約した時間にやってきて、服を選ぶ時間は別として、およそ30分ほどでオーナーに漢服の着付けをしてもらい、ヘアスタイルを整えてもらうことができる。客は自分が着てきた服を店に保管してもらって外出し、夜までに漢服を返却すれば良い。オーナーの白秋さんによると、忙しい時は1日で20人ほどの客を受け入れているという。

「来店するのは、漢服ファンだけでなく、ネット人気攻略の情報を見て体験に来た人、なかには漢服を体験したいがためにわざわざ北京に旅行に来たという人もいる。漢服に興味を抱く人が増えるにつれて、観光スポットで写真撮影をするだけでなく、中国の伝統歌舞を鑑賞に行ったり、卒業式などの式典に参加する場合にも、漢服を選ぶ人が増え始めている」と白さん。

米菲さんは、「漢服の流行は、伝統文化に対する一種の反応と言えるかもしれない。自分が楽しみ、古い時代を懐かしむというより、漢服ファンは、漢服を媒体として伝統文化を発揚することをより望んでいる。伝統文化に対する社会の関心と重視が、漢服ブームが起こった原因であり、漢服ファンは、大学生だけに限らず、一部の企業にもそのようなグループがある」と指摘。別の漢服ファンも、「伝統的な民族衣装に対する人々の愛着はますます高まっており、個人の装いに対する受容度も高くなっている。漢服を着る人が増え、それを恥ずかしいと感じることもなくなった」と語った。

厳密な意味での完全な漢服一式とは、小衣(下着)、中衣、大衣(上着)の3層からなるのが一般的。だが、現在公園などで見かける漢服姿の人々の装いはまさに多種多様で、漢服要素を盛り込んだだけというのがほとんどだ。米菲さんも、「漢服は現在もまだまだマイナーなグループでしかない。中国人の祝日の装いとして着用されるように一般にまで広まるのはまだまだ先の話」との見方を示した。