水蒸気(水)による発電を開始
エネルギー事業で世界に貢献する

次世代をにらみセキュリティ、ゲーミングソフトウェア開発及び検証並びにコンサルティング事業などを手がけているフィリアウェルスエンターテイメント株式会社。同社は一貫して世界を市場として挑戦を続けてきた。そんな同社が現在とくに力を入れている事業の1つが新環境エネルギー事業。再生可能エネルギーの導入が進むなか、同社は地熱・水蒸気(水)を用いた発電システムを引っ提げて、新たな電力サービスの事業者として、電力市場に参入しようとしている。

 

水蒸気発電により

電力供給を開始

経済・社会の発展にともない、世界中でエネルギーの消費量が増加している。一方、現在エネルギー源の主力となっている化石燃料には埋蔵量の面で限界があり、将来の持続的な使用に不安を抱える。

2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は世界的なエネルギー価格の高騰を招き、日本でも電気料金が値上がりした。また、東日本大震災以降、構造的な電源不足が続くなかでのエネルギー供給不安において、政府は7年ぶりに国民へ向けて節電要請を行った。

このようなエネルギーを取り巻く差し迫った課題について、フィリアウェルスエンターテイメント・代表の渡邉輝明氏は、小型の発電機を導入していくことで解決していくことができると自信を示す。

フィリアウェルスエンターテイメントは、パートナー企業と共同で、23年3月を目処に温泉地域で地熱や水蒸気(水)を利用して発電を行う。発電量は3月を目処に1.6MW/1h、9月を目処に10MW/1hとなる計画だ。軌道に乗れば世界各地で発電機を増やしていく予定。

同プロジェクトの発電システムの名称は「ウォータースチームリニア発電機」。これは水とリニアを融合させた最新技術で、同プロジェクトは、企画から6年の歳月により完成した。この技術は世界100各国以上で特許を申請中という。

発電の仕組みは地熱あるいは水蒸気(水)を活用するというもの。水さえあれば水蒸気をつくって発電できる。水道水、雨水、井戸水、川、湖などでもよく、海水を淡水化して発電することも可能なため、海の近くであればそれだけで発電可能な条件を満たす。このように、非常に広範囲の地域で発電を行うことができる。

 

欧米でもサービス提供へ

フィリアウェルスエンターテイメントが海外企業でありながら、某国国営電力という市民や企業の日常生活に関わる事業に参入を認められたことからも、その有望さがうかがえる。

同社の「ウォータースチームリニア発電機」は国際規格→IEC60034-2017も取得済み。国際規格とそのレッドラインバージョンを含むIEC 60034-1:2017 RLVとして利用可能になり、IEC 60349などの他のIEC規格の対象となるものを除き、すべての回転する電気機械に適用される規格であり、この認証取得にとどまらず、渡邊氏はさらに世界的な基準に狙いを定めている。

まず、CDM(クリーン開発メカニズム)申請に適した設計・仕様となっている。CDMとは、国連気候変動枠組条約の第3回締約国会議(COP3)において採択された「京都議定書」で規定された市場メカニズムを活用する柔軟措置の1つ。

先進国が途上国において支援を行い、温室効果ガス排出量を削減または吸収量を増加する事業を実施し、削減できた排出量の一定量を自国の温室効果ガス排出量の削減分の一部に充当できる制度。渡邉氏によるとこの承認を得るのは容易ではないという。このように環境に配慮した発電システムとなっている。

渡邉氏は世界を視野に入れつつも、自社のみで電力サービスを広く提供するのは大変であるため各国においてパートナーを募集する予定だ。欧州、米国でのサービス提供のため、CEマーキングおよびUL規格を申請中である。

前者はEU全加盟国の基準を満たすものに付けられる基準適合マークであり欧州などで販売するに際し必要となるもの。後者はUnderwriters Laboratories Limited Liability Company(UL LLCアメリカ保険業者安全試験所)が定めている認証マークで、米国で最も信頼度が高い安全規格だ。

 

560ℓの水で

家庭の電力1年分を賄う

今後について、渡邉氏はモンゴル、インドネシアなど3カ国でデモンストレーションを予定しており、残る1カ国はまだ確定していないが、日本、中国も有力な候補の1つという。展示会場には多くの発電機を設置して、その威力を実感してもらいたいと話す。

近日販売予定という家庭用ウォータースチームリニア発電機は一般家庭向け仕様。水蒸気(水)で発電でき、発電量は2.5kW/1h。一般的な家庭であれば、1カ月に46.6ℓ、年間では560ℓの水で十分な電力を賄えるという。これで年間365日間、1日24時間いつでも自由に使えるだけの電力を供給できる計算だ。同社はオプションとして蓄電池を併用することも検討している。そうすれば、発電した電力を貯めておくことができる。

この発電機の設備には工事が必要となるが、複雑な工事は必要ではなく、基本的に一般家庭でも設置可能という。ほか、工業用発電機は、100 MW/1hと、1000 MW/1hの2種類用意。いかなる給電量にも柔軟に対応できるシステムも構築している。

これまで主要なエネルギーは化石燃料などの資源であり、日本はそうした資源に恵まれていないと思われていた。それが身近にある水を利用して発電できるとなれば、状況は大きく変わる。フィリアウェルスエンターテイメントの発電システムが日本や中国の状況を変え、そして世界にも貢献していく未来が待ち遠しい。

ウォータースチームリニア発電機