中国人の越境旅行の新たな傾向

中国人観光客は今なお世界で最も消費能力の高い層で、その観光ニーズには高度化の新たなトレンドも現れている。携程旅遊網とマスターカード社はこのほど北京で共同発表した「2018年中国越境観光消費報告」の中で、このような最新の結論を明らかにした。


北極の近くを訪れている中国人観光客

越境旅行の3つのキーワード

2017年、中国国民の越境旅行者数はのべ1億3000万人を突破し、観光消費は1152億9000万ドル(約12兆8055億円)に達し、世界一の越境観光客供給国の地位を保った。越境旅行は今や中国都市部の家庭と若者の幸福度をはかる指標の一つだ。予測では、2018年の中国の越境旅行者数はさらにのべ1000万人以上増加する見込みという。

中国人観光客はのべ旅行者数だけでなく、消費能力でも世界一の座を維持した。マスターカードのデータによると、中国の越境旅行者の一人あたり消費金額は世界一で、他の国地域を大幅に上回り、英国や米国といった海外旅行の頻度が高い国も上回る。

携程の団体ツアーや自由旅行の予約データ、マスターカードの消費データを踏まえて、同報告は中国人観光客の消費から3つのキーワードをまとめた。「新世代」、「女性」、「二三線(都市)」で、今の中国人観光客の消費の新たな傾向を示す言葉でもある。

一つ目のキーワードは「新世代」だ。90後(90年代生まれ)、00後(2000年代生まれ)が今では越境旅行の「新戦力」となっている。越境旅行者といえば以前は80後(80年代生まれ)が中心層だったが、今この層は越境旅行者に占める割合が年々低下している。これに代わって登場したのが90後と00後で、猛烈な伸びをみせている。携程の越境観光レジャー商品に関するデータによると、18年19月には、90後と00後が利用者の32%を占め、80後を上回った。90後と00後は経済的に自立するようになり、自由な消費観をもつことから、旅行に資金をつぎ込むことを他の世代よりもいとわない。データによれば、90後の1回の旅行での一人あたり平均支出は5689元(約9万円)ですでに80後を抜き、00後はさらに多く6000元(約9万2000円)に迫るという。

2つ目のキーワードは「女性」だ。携帯の旅行データからわかるのは、自由旅行に占める女性の割合が年々上昇して、18年は58%になり、男性を16ポイント上回ったことだ。女性は旅行商品の平均予約金額が男性より14%高く6254元(約10万円)に達する。消費の差は同僚や友人との越境旅行の状況の中に最もよく現れており、「女子旅」は「男子旅」より平均支出が1000元(約1万6000円)ほど多い。

3つ目のキーワードは「二三線(都市)」で、同報告によれば、北京、上海、広州、深圳の一線都市は引き続き越境旅行者の供給源の中心だが、直航便の就航する路線が多数開通し、査証(ビザ)政策がより開放的になるのにともない、二線都市の越境旅行者数が急速に増加し、貴陽、常州、南昌、昆明、太原などから携程の越境旅行ツアーに参加する人の年間増加率はいずれも250%を超えるという。中でも貴陽は増加率389%で、ダークホース都市の中で1位だったという。

消費高度化が顕著

中国経済が持続的に成長するのを背景に、消費の高度化がトレンドとして現れており、これは観光産業においてとりわけ目を引く。マスターカードのまとめたデータでは、高級志向の観光客は越境旅行者全体の約20%を占め、越境消費への寄与度は80%を超え、一人あたり平均消費額は中国人越境旅行者全体の平均を4倍以上も上回る。携程が発表した第3四半期のデータも、携程には今年取引をした中国のユーザがー1億3000万人おり、携程プラットフォームにおける年間平均消費額は5000元を超えたことを明らかにした。2018年の越境旅行者の観光商品への平均支出は5800元(約9万円)に達した。

観光消費の増加は中国人観光客がより多様な楽しみ方や体験に支出するようになったことが原因だ。携程のデータでは、2018年の海外レジャー商品の予約者数は2017年同期比110%増加し、レジャー予約の一人あたり平均金額は同24%増加した。これには特色ある観光地のチケット購入、各種公演鑑賞の予約、気球アトラクション、海上一日ツアーへの参加などが含まれる。越境旅行の目的地が違えば、観光消費体験も違ったものになる。欧州のぜいたく品の店で買い物をする、オーストラリアと日本でサプリメントや美容製品を買い求める、タイでグルメを満喫する、アラブ所長国連邦(UAE)でジュエリーを購入するなど、さまざまな消費体験がある。

携程のデータに基づくと、越境旅行者の約60%が団体ツアーを選択するが、2人から出発可能なプライベート越境旅行、見知らぬ人とツアーを組む「プライベートツアー」などプライベート型商品の予約者が同177%増と爆発的に増加し、団体ツアーのうち約10%を占めるようになった。また越境旅行の自由旅行商品に申し込む人が約40%に迫り、「現地の人に連れて行ってもらって楽しむ」のが新たなトレンドになった。1618年に携程で現地の観光ガイドを予約した観光客の年間増加率は67%に達した。現在、世界約90カ国地域の観光ガイド9000人あまりが、携程プラットフォームで観光客からの予約を受け付けている。

中国人観光客の消費高度化は海外の目的地がますます多様になったことにも現れている。マスターカードの消費データによると、米国、オーストラリア、カナダ、日本といった以前からの越境消費大国の順位は基本的に変動がなく、高度成長の勢いを保った。のべ旅行者数をみると、タイ、日本、ベトナム、シンガポールが高止まりし、タイを訪れた観光客は今年のべ1000万人を突破する可能性がある。一方、中国人観光客はますます遠くへ出かけるようにもなった。海外消費者数の増加率上位20カ国番付をみると、新たに番付入りした国はトルコ、ギリシャ、メキシコ、ポルトガル、スイス、ロシアなど9つあった。