中国の世界遺産申請30年の歩み

1987年に中国の万里の長城と故宮などが世界遺産に登録されてから、中国の「世界遺産申請」はすでに30年の歳月を歩んできた。この30年間で中国の世界文化遺産は増え続け、遺産の種類も豊富になっているほか、遺産保護の経験も積み重ね続けられてきた。

中国世界文化遺産30周年記念フォーラムがこのほど北京で開催された。フォーラムでは、新時代の文化遺産の保護や継承、文化遺産の交流などの話題について踏み込んだ議論が展開された。

 
世界遺産・鼓浪屿

保護

合理的に利用する予防的保護

現在、中国はすでに52項目の世界遺産が登録されている。その内訳は世界文化遺産36項目、世界文化及び自然複合遺産4項目、自然遺産12項目となっており、その総数は国別で世界第2位。中国世界文化遺産30周年記念フォーラムの席で、「現在、文化遺産の保護は修復をメインとした保護から、修復と予防を並行させた保護へと転換させることが急務だ」と指摘する専門家と学者が少なくなかった。

国家文物局の宋新潮副局長は、「文化遺産本来の姿に基づいた補強と修繕、日常的なメンテナンス作業が予防的保護だ」とし、予防的保護は小さな投入と長期的なメンテナンス作業を続けることで、長期的な利益を得るとしている。

予防的保護は、「隔離させた保護」や文化遺産を祀り上げるような保護を指すわけではなく、むしろ文化遺産を継承、保護するのと同時に、文化遺産と人々との距離を縮め、文化遺産を現代社会により浸透させ、文化遺産の合理的な利用を促進するものだ。

宋副局長は、「文化遺産と現代社会の調和を構築するため、新たな公開展示モデルを堅持することがポイントとなる。つまり保護を最優先とし、各地の実情に合わせ、適度な公開を行うという原則を堅持する。同時に、文化遺産の保護を人々の現代生活に浸透させ、地元の住民も展示モデルに関われるような方法を模索、奨励し、文化遺産の保護から利益を獲得することで、人々の文化遺産保護に対する意欲を高めていく」と指摘した。

 

伝承

人は文化遺産伝承のコア要素

同フォーラムでは、多くの専門家が、文化遺産の伝承において、人材がまだ不足していると指摘した。

人材は文化遺産伝承のコア要素となる。故宮博物館古建部の趙鵬副主任によると、「人の問題」は現在文化遺産保護作業が直面している主な障害であり挑戦であるとしており、敦煌研究院王旭東院長は、人材グループの建設は専門家だけに限るべきではなく、一般の人々にもすそ野を広げていき、社会全体が共に文化遺産を保護する姿勢を形成させるべきだとアドバイスした。

また、文化遺産の保護と伝承には多元的な普及教育が不可欠となる。王旭東院長は、文化遺産の普及と教育は遺産自体だけではなく、科学技術にも頼り、デジタル資源とデジタル展示モデルを通じて、観光客に対して普及教育を行い、積極的に宣伝展示活動を開催し、文化遺産を人々の生活と融合させるべきだとの見方を示した。

文化遺産を継承していくポテンシャルを高め、文化遺産の多元化を実現していくには、伝播のルートを開拓し、伝播の媒介を多様化する必要もある。そのほか、文化遺産の面白さを増やし、文化遺産が備えている歴史的記憶と文化的価値、人的文化的精神を生き生きと伝えていくべきだ。

 
10月14日に米国サンフランシスコアジア美術館で行われた中国の世界遺産プロモーション

連携

「精神的な宝物」を共に守る

文化遺産は各時代の各文明の交流の接点であり、国際的な協力や交流の接点でもある。「一帯一路」文化建設の背景で、文化遺産における対外交流と国際連携が深まりつつある。

危機に瀕する文化遺産の国際保護ファンドや、アジア太平洋地域世界遺産育成研究センター、無形文化遺産国際育成センターなどの設立は、中国と国際機関との連携が日増しに深まっていることを示している。また、海外中国文化センターや孔子学院は数多くの文化遺産テーマイベントを行い、文化遺産の対外展示と海外進出のルートを開拓している。

王旭東院長は、「門戸を開き、内外の専門家を引き付けて資源をシェアし、文化遺産を異なる文明交流の背景に置いて研究するべきだ」と述べた。また、「これからの発展により、国際社会の文化遺産保護のモデルや、最も活躍する研究機関、最も影響力を持つ文化展示交流プラットフォームになることを望んでいる。文化に対する自信を強め、「一帯一路」参加国の国民との意思疎通を促進するため、保護事業にさらに力を注ぎ、文化遺産に潜む文化の価値とヒューマニズム精神を掘り下げることで、人的文化的交流と文化伝播を大いに推し進めるべきだ」とした。