大前章一 神戸ワイン事業部部長
神戸ブランデーで中国市場に進出

日本には、神戸ワインで有名な神戸ワイナリーが造った神戸産ブドウ100%の「神戸ブランデー」がある。ブランデーは果実酒から製造する蒸留酒の総称で、主に白ワインを蒸留し、樽で熟成させて造ったお酒だ。先ごろ、神戸ワイナリーを訪れ、神戸ワイン事業部の大前章一部長に、神戸ブランデーの魅力、中国ビジネスの取り組みと将来ビジョンなどについて伺った。

 

神戸ビーフ、神戸ワイン

そして神戸ブランデー

―― 神戸ブランデーは神戸ワイナリーで醸造されています。ワイナリーはワインづくりがメインだと思いますが、なぜブランデーづくりを始めたのですか。

大前 神戸のブランドといえば神戸ビーフが世界的に有名ですが、今から3代前の市長(故・宮崎辰雄氏)の時代に、神戸の地域ブランドを広げていきたいと考えてつくられたのが神戸ワインです。

神戸ワインは1984年に販売を開始したのですが、神戸ビーフとともに売れ行きも良く、現在まで順調に推移しています。

その後、さらにもっとブランドを増やせないかということになり、1993年にブランデーの醸造を開始しました。ここは神戸市西区にあるワイナリーの施設ですが、北区にフルーツ・フラワーパークという同様の施設をつくり、そこでブランデー・ビール館を開設して、本格的なブランデーの醸造を始めました。

ブランデーをブランド化するに当たっては、フランスのコニャック地方でブランデー用として栽培されているユニブランという品種のブドウを、フルーツ・フラワーパークのちょうど入口周辺に約1.2haほど試験的に栽培してスタートさせました。

フランスのコニャックと

同レベル・品質のブランド

―― 現在、海外で高く評価されている神戸ブランデーの魅力について教えてください。

大前 神戸ブランデーは、神戸ワインを原料に、本場フランスのブランデーであるコニャックと同じ製法で造られています。その味わいは、濃厚な香りと深みを持ち、唯一無二の存在です。

神戸ブランデーは神戸ワインを蒸留して造りますが、ワインの元となるブドウもすべて神戸で育てたもので、手摘みで収穫し、丁寧に選果したブドウのみを使用しています。

実は神戸ブランデーは販売当初、あまり売れませんでした。それから20年以上経ちますが、ブランデーは大体40度と度数も高く、熟成に時間がかかるので、量的に売れない時期が続きました。

ところが、熟成15年くらいを境に味がすごく落ちついてきて、味に丸みを帯びたと言いますか、特に海外向けにパッケージやビン自体も少し変えて販売したところ、売れ行きが一気に良くなりました。

神戸ブランデーは、同じ熟成年数のコニャックと比べても非常に安価であり、同じグレード、品質のものであれば神戸ブランデーの方が良いというお客様が増えて来ています。

 

若い世代にもブランデーの

魅力を知ってもらいたい

―― 日本のブランデー市場は成熟しているのでしょうか。今後、どのように日本のブランデー文化を育てていかれますか。

大前 日本におけるブランデーの市場は、ウイスキーと比べるとまだまだ認知度が低いかも知れません。

神戸ワインは土壌開発を専門にしている三田村雅先生が、土壌開発から始め、丹精込めて造られています。それだけ日本のワイン造りの英知が詰まっています。

神戸ブランデーは、そのワインを使ったブランデーですので、非常にクオリティーが高いと言えます。ですから、まだ成熟していないブランデーの市場ですが、神戸ブランデーを味わっていただくことで、日本でもこんな素晴らしいお酒があるのだということを知っていただければ、日本のブランデー文化の発展に寄与できると思います。

われわれの世代では、ブランデーといえば俳優の石原裕次郎が広めたという印象があります。往年の大スターがドラマの名場面を彩ったヒット曲「ブランデーグラス」をよく口ずさんだものです。しかし、今の若い世代の人たちには、ブランデー文化はまだまだ浸透していないように思います。そうした人たちにもブランデーの魅力を知っていただきたい。だからこそ、神戸ブランデーの使命は大きいと感じています。

神戸のブランデーで

中国市場に積極的に進出

―― 神戸ブランデーは近年、本格的にアジア向けの輸出を開始していますが、中国ビジネスの取り組みについて教えてください。

大前 マカオや香港、中国といったアジアでは、その確かな品質や信頼性から「MADE IN JAPAN」の製品が大変人気です。

その中で、神戸ワインや神戸ブランデーも2015年度より本格的にアジア向けの輸出を開始し、順調に出荷本数を伸ばしてきました。

特に神戸ブランデーは、マカオの百貨店やフェリー乗り場、和食レストラン等で取り扱いが増えており、香港でもホテルやレストラン等で人気です。

中国本土では、アルコール度数の高いブランデーが好まれると聞いており、最近では北京や上海などからのオファーが増えています。当社としましては、今後も、中国市場に積極的に進出していきたいと考えています。

 

神戸ブランドを

国内外に広くアピール

―― 異国情緒が漂う国際都市・神戸は、日本における世界の玄関口です。海外ビジネス展開における御社の将来ビジョンをお聞かせください。

大前 やはり世界に通じる神戸ビーフと関連づけて、神戸ブランデーの魅力も発信していきたいと思っています。

それから、最近では中国にかなり多くの日本酒メーカーが進出されていると思うのですが、当社も日本酒メーカーと連携して、お互いがウインウインになるような関係をつくっていきたいです。

 当社としましては、ワインとブランデー双方の品質向上を図り、日本国内はもちろんのこと、中国を始め海外の市場にも、神戸ワイン、神戸ブランデーといった神戸ブランドをさらに広くPRしていきたいと考えています。