浜本吉郎 みずほ証券株式会社取締役社長
魅力的で活力溢れるその方は御自身の経営哲学をひとつの冊子に纏められた。この本には企業文化、価値観、経営理念、社是、実践項目、人財育成の考え方などが丁寧に体系的に表現されている。その集大成が「桃太郎文化」として確固たる道標となっている。
日頃社員に投げかけておられる言葉の数々を明文化し、「社員を幸せにしたい」という思いの下、考え抜いて纏められた数々の言葉が「桃太郎文化」の中に昇華されている様に思われる。
トラック1台で創業し、運送からロジスティックス、3PLへと事業を深化させ、連結売上高1,330億円の成長企業へと育てあげたその方こそ、本書の主人公、和佐見勝さんである。
本書は、『桃太郎文化』を軸とした「お客様第一義」の実践、事業進化の過程、人財育成の徹底、和佐見さんが語るこれからの50年という構成になっている。
和佐見さんは、偉大な経営者でありながら、いつも明るく、誰に対しても分け隔てなく声をかけ、ひとの意見に耳を傾ける方である。常に謙虚な姿勢を貫かれ、「学ぶ者が勝利する」とよく仰っているが、今でも売上高の2-3%をかけて人財教育を強化なさっている。社員が学ぶだけではなく、ご自身の学ぶ姿勢にも感服させられる。周囲への感謝や日々の考働による徳の積み重ねなど、人としての基本が如何に大切かについてもそのお姿から、そして本書から学び取ることが出来る。
一人の証券マン、一人の営業パーソンとして最も強く学びを得た部分は、「お客様第一義」を達成するためのあらゆる工夫と努力を惜しまない、そのお姿の描かれる実話である。単に値段を下げるのではなく、サービスの付加価値を上げることでお客様に報いるという姿勢。その延長に、更なる大きな顧客開拓と関係維持・向上が待っていることが具体的体験に基づいて書かれている。利益を上げる仕組みとは、お客様のメリットを創り出すことと同義ということを身に染みて学ぶことが出来る。
そして、事業成長に対する飽くなきこだわりも印象深い。和佐見さんはいつの世もこれから成長するマーケットというものに着目しており、日本という国が製造立国から一大消費国に変化することを先読みしながら、小売りに特化した物流企業を標榜してきた。売上高100億円を達成したとき、次の目標は1,000億円になった。今は、2040年に売上高1兆円を狙っている。本書に『寧静致遠』という言葉が出てくる。誠実に、コツコツと粘り強く努力を続けないと遠くの目標には到達しないという意味である。その通りだと思う。人間、地道な努力が大切と言えども中々言葉通りに実践出来ない時もある。しかし、読み進めていくと、和佐見さんの言葉には、なぜか気持ちを前向きにさせる強さがある。
業種を問わずありとあらゆるビジネスと格闘されている方々、自らのブラッシュアップに向けて悩んでおられる営業の方々、人財育成に悩まれている指導者の方々、パーパス経営とは何かを探求されている経営者の方々、そして、AZ-COM丸和ホールディングスをさらに深く知りたい方々、いずれの皆さんにも是非一度手に取って頂きたい一冊である。第4章まで一気に読み進めて、第5章の『桃太郎文化』を味わいながら、じっくりと字を彫るように読んで頂きたい。なぜか気持ちが落ち着き、ポジティブになれるはずだ。
村田博文(『財界』主幹)著
(2022年5月、株式会社財界研究所)
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