中国を変える最も美しい高速道路

北京と新疆を結ぶ京新高速道路は北京から河北、山西、内蒙古(内モンゴル)、甘粛、新疆まで通過し、その沿線には草原や森、砂漠、ゴビ砂漠、氷河といった10種類からなる自然風景を目にすることができ、500キロメートルにわたる「無人区」と呼ばれる人の住んでいないエリアも通過する。2017年7月に、内蒙古(内モンゴル)自治区の臨河~白疙瘩区間の開通によって、この「最も美しい高速道路」と呼ばれる全長2768キロの京新高速道路が全線開通し、これにより北京から新疆までの走行距離が1300キロ余り短縮された。

 
新疆ウイグル自治区の胡杨林

不毛の地に走る高速道路

2015年の春節前に工事を開始して以来、業務の忙しさから家族と触れ合う時間が少なくなってしまった作業員が非常に多くなった。なぜなら作業現場のある内モンゴル西部の広大なゴビ砂漠地域では、工事前期は携帯の電波さえ届かなかったからだ。そのため工事現場での作業に入ってしまうと、短くて10日間や20日間、長い場合は1~2ヶ月間にわたり、家族と連絡が取れなくなってしまう。また携帯の電波だけでなく、広いゴビ砂漠では道はおろか、水や電気もなく、人の気配すらないといった困難もあった。

広大なゴビ砂漠を前にしては、人間などほんの小さな存在に過ぎず、それもまたこの無人区を通過する高速道路の偉大さをよりはっきりと示しているといえる。そして施工者たちがゴビ砂漠に生息している胡楊(コトカケヤナギ)のように、この不毛の地に希望の種を蒔き、人類文明のしるしを残したともいえるだろう。

 

経済利益をもたらす高速道路

京新高速の開通以来、観光客の人数は昨年の180万人から2017年は480万人まで増加し、観光収入も倍以上に達した。このように経済や情報、物資の流通は現地の発展にとって大きな意義をもつ。

しかし、遊牧民の若い世代の多くが都市に流れ、広大なゴビ砂漠を耕地し、放牧する若者が少なくなってきている。エジン旗の譚志剛副旗長は、農民と遊牧民の流出を止めるため、政府はさらに力を入れ、彼らにより良い待遇を与える必要があるとしている。

 

国境を通過する重要なルートとなる高速道路

京新高速道路のエジン旗区間から北に80キロ離れた場所に中国とモンゴルの国境線にある策克港出入国検問所がある。検問所の武装警官の主な任務は出入国する人や車両に対し安全検査を行い、銃器と弾薬及びテロに関わる可能性がある危険物の入国を厳重に防止することだ。

京新高速道路の開通は広い範囲で国の安全と利益を守ることになる。京新高速道路の開通で、中国北部から新疆に入る最も便利なルートとなり、新疆のコルガス(霍爾果斯)港から天津港までの北部沿岸への道が築かれたほか、天津港からオランダのロッテルダムまでの亜欧大陸橋も構築することになる。また、中国の辺境を通過する高速道路として、京新高速道路は「西部大開発」と「一帯一路」(the Belt and Road)の建設にとっても、西北地域の安全にとっても、重要な意義をもつ。

 

中国を変えていく高速道路

ドローンで空撮した写真を見ると、ゴビ砂漠を走る京新高速道路は巨大な龍のようだ。海外のメディアもこの「スーパー道路」に注目し始めている。

交通部弁公庁の徐成光主任は、「高速道路が確かに中国を変貌させつつある。多くの人は経済的な面から、この高速道路は利用者が少なく、利用率が高くないというかもしれないが、実は高速道路には多くの社会的価値がある」とインタビューに答えている。

徐主任は、「高速道路が中国経済と社会の発展に影響を及ぼすのは現在だけではなく、今後もさらに目立ってくることになるだろう」と語った。

中国の高速道路建設のスタートは遅いが、発展の勢いは急速だ。現在、中国全土で開通している高速道路は13.1万キロにも達し、その距離は世界一となっている。国務院が承認した「国家道路網計画(2013年―2030年)」によると、中国の高速道路網は首都から発する7本の放射線状、11本の南北縦線、18本の東西横線からなる36本の主要道路と、各地方の環状線や並行線、連結線により形成されている。

工事建設が急速に進むこの時代において、橋や高速鉄道は美しい「中国の名刺」になっている。これからもさらに多くの「美しい高速道路」を目にすることになるだろう。