千葉大学研究グループと株式会社SNSソフトが光触媒薄膜ボールを共同開発

2022年10月24日、「新型コロナウイルス不活化率99.99%の光触媒薄膜ボール」を発表する記者会見が東京中国文化センターで行われた。日本の国立千葉大学の鲁云教授の研究グループと株式会社SNSソフト(孫前進代表取締役社長)はこのほど、新たな酸化チタン(TiO2)光触媒薄膜ボールを共同開発し、新型コロナウイルスを検出限界の不活化率99.99%まで減少させることに成功した。インフルエンザウイルスにも99.96%の不活化率を示している。

記者会見には、元埼玉工業大学副学長、教授で日中科学技術文化センターの巨東英理事長,中国国際人材交流協会日本事務所の鄺馬華総代表、東京理科大学教授、留日博士専家団団長で日本華人華僑博士協会の趙新為執行会長、在日中国科学技術者聯盟の楊克倹会長(代理出席、龍麗華)、日中防災環境保護研究会の李欧会長、東洋大学の関蘇軍副教授、青島工商センターの原新明常任代表、ハイセンスジャパン株式会社の林秉栄代表、国際医療携力機構の雍容社長、ハイアールジャパンセールス株式会社の時振玉副社長、クロスボーダーネクスト株式会社の何暁霞代表取締役社長等、科学研究分野、企業、メディアの代表約100名が出席した。

株式会社SNS ソフトの孫前進代表取締役社長は、2017年から千葉大学と  高性能の光触媒ボールの共同開発に取り組んできたことを紹介した。数年にわたって研究を続け、鲁云教授のリーダーシップの下、研究グループは画期的な成果を収め、本研究成果は、2022年9月、英科学誌『Scientific Reports』に掲載された。

鲁云教授の研究グループと株式会社SNSソフトが共同開発した光触媒ボールは、従来の光触媒と比較して、「空気との接触面が拡大され高性能」「空気・水浄化作用を効率的に発揮」「搭載ニーズに応える高い汎用性」等の特長をもち、様々な設計に対応する形状自由なフィルターデザインが可能で、あらゆる生活シーンに対応し、企業・機関の様々なニーズを満たし、高い付加価値を創出できる。本研究成果は、コロナ禍が長期化・常態化する中で、ウイルスの消毒・殺菌に有効な新技術として期待される。確固たる研究開発に基づき、持続可能な発展を目標に掲げ、安全で快適な社会の構築に貢献する。

光触媒プロジェクトの技術責任者を務めた鲁云氏は、国立千葉大学工学研究院の教授で、博士課程の指導教官である。かつて在日中国学者材料学会の会長を務め、現在も、留日博士専家団の副団長等、学会の要職にある。

鲁云教授は平易な言葉で最先端の専門的技術を説明した。日本は光触媒技術の開発にいち早く着手し、1972年には、酸化チタンの光触媒効果が発見され、この一大発見は「本多·藤嶋効果」と呼ばれる。光触媒の研究に20年以上携わってきた鲁云教授は、「光触媒の父」と呼ばれる藤嶋昭教授と深い交流を重ねてきた。現在、鲁云教授の研究グループが開発した、全く新しい光触媒の成膜技術である機械成膜法(MCT)は特許を取得し、研究成果は殺菌・消毒、環境浄化に効果的に応用され、コロナ禍の社会的ニーズに応えている。また、2022年3月に奈良県立医科大学で行われた試験で、鲁云教授の研究グループが研究開発した光触媒ボールが、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を99.99%不活化したことが実証された。

鲁云教授は、酸化チタン(TiO2)光触媒薄膜ボールには、「アオコの生成抑制」「水の浄化」「空気の浄化」「化学排水の浄化」等の機能があると説明した。開発された光触媒薄膜ボールは現在、小ロット生産に入っている。

株式会社SNS ソフト開発本部の蘇会謙部長兼営業部長、光触媒事業部の浅井洋介営業部長兼マーケティング部部長が、商品化の現状と今後の展望、酸化チタン光触媒薄膜ボールの機能性について述べた。出席者が注目する光触媒薄膜ボールの半永久的効果について、蘇会謙部長は、一般的な竹炭などの浄化剤とは異なり、光触媒薄膜ボールは交換の必要がなく、半永久的に効果が持続できると説明した。引き続き、北里環境科学センターが行った、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの分解試験のビデオを視聴した。

蘇会謙部長、浅井洋介部長は、光触媒ボールが応用された空気浄化設備の実例を披露した。光触媒ボールの技術は、冷蔵庫や下駄箱など風通しの悪い空間や鮮度が求められる野菜の輸送システムなど幅広い用途がある。

科学研究分野の専門家が相次ぎ発言し、魯云教授の研究グループと株式会社SNSソフトの共同開発は産学連携の成功例であり、光触媒ボールは安全で快適な社会の構築と持続可能な発展に大きく寄与するものであると高く評価するとともに、魯云教授の研究グループ並びに株式会社SNSソフトが更なる成果を収めるよう期待を寄せた。

株式会社SNS ソフトの薩摩幸悦業務執行取締役と光触媒事業部の伊藤克部長はそれぞれ、光触媒ボールの応用分野、社会的意義の視点から見解を述べ、研究の成果が中日両国の市場に広く普及し、両国国民に利益をもたらすよう期待を寄せた。

質疑応答が活発に行われ、青島工商センターの原新明常任代表は、研究グループと青島との協力強化を望むとともに、より多くの中国企業が高度先端技術の導入を支持し、参画するよう呼びかけた。

「新型コロナウイルス不活化率99.99%の光触媒薄膜ボール」をお披露目する記者会見は、成功裏に幕を閉じた。それは、知識を普及し、創意を刺激する場であり、協力を呼びかけ、未来に利益をもたらす報告会であり、産学研連携の成功事例を示す記者会見であった。科学技術が人びとの生活に恩恵をもたらし、イノベーションの光によってウイルスは一掃されるに違いない。