中国市場の更なる拡大に期待
第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会が開催

今年の9月、長く鹿児島で中国本土、香港、アモイとの和牛の貿易に従事してこられたZANN CORPORATIONの中村龍道会長から、10月6から10日まで、第12回全国和牛能力共進会鹿児島大会が霧島市と南九州市で同時開催されるとの連絡をいただいた。当大会は「全国和牛能力共進会」(「全共」)の主催によって5年に1度開催され、今年で12回を数える。日本では「和牛の祭典」として知られている。今大会には、47都道府県中41の道府県から438頭の地元産の和牛が出品された。

記者は、ここで少なくとも二つの固定観念を覆された。一つ目に、日本で「和牛」と呼ばれるのは、「神戸牛」や「宮崎牛」等だけではなく、日本で生産される牛は全て「和牛」と呼ばれることである。二つ目に、47都道府県の「都」は東京都を指すが、「東京都」産の和牛は存在しないことである。

さらに、今大会が「種牛の部」と「肉牛の部」が8つの出品区に分けられ、霧島市と南九州市で並行して開催されていたことも、鹿児島に来て初めて知った次第である。今大会には、30万人にも及ぶ観衆及び業界関係者が詰めかけ、鹿児島市、霧島市、南九州市のホテルは全て満室という盛況ぶりで、われわれの一人は民宿に泊まり、一人は、キャンセルの出たビジネスホテルに泊まった。

10月8日午前、会場に足を踏み入れた瞬間、「全国和牛大会」と言うより、「全国和牛産業大会」との印象を受けた。各地で飼育された和牛のみならず、和牛の分娩から繁殖、子牛の飼育、成牛の飼育、搾乳、環境、衛生に至るまで、関連の器材・製品の全てが出品されていたのである。 

記者は、5人の審査員が438頭の牛を一頭ずつ審査するプロセスを見学したいと思っていたのだが、それには2時間以上並ばなければならないとのことで、他を見学する時間がなくなってしまうため、泣く泣く断念した。

10月10日、嬉しい知らせが届いた。鹿児島県出品の和牛が体型を審査する「種牛の部」で、宮崎県出品の和牛が肉質を審査する「肉牛の部」で、それぞれ日本一に輝き、共に、本大会の最高賞である内閣総理大臣賞を受賞した。

大会の閉幕式では、塩田康一鹿児島県知事から、鹿児島黒牛が9出品区のうち6つの出品区で首席を獲得したことが告げられ、「わが鹿児島黒牛が日本一の和牛であることは間違いありません。われわれはより一層、優れた黒牛の魅力を発信していこうではありませんか」と誇らしげに語った。

閉会式には、岸田文雄首相が出席した。現役の首相が全共の閉会式を訪れるのは初めてという。岸田首相は「和牛は日本の宝である。鹿児島大会を契機に、和牛の魅力や生産性が向上し、次世代に引き継がれていくことを大いに期待している」と述べた。

大会終了後、岸田首相は記者団の取材に応じ、現下の飼料価格の高騰と子牛価格の下落を踏まえて、政府は10月中に策定する総合経済対策に、①稲作・畜産農家が連携した国産飼料の供給利用拡大、②畜産・耕種農家、肥料メーカーが連携した堆肥の肥料利用拡大、③牛肉輸出のための高度な衛生管理施設の整備――への支援を盛り込む方針を示した。

中村龍道会長は、記者に鹿児島黒牛の特長を詳しく紹介するとともに、自身が経営する会社が、問合せ及び貿易の窓口となって、度々、中国からの顧客とも商談を行っていると話した。

中村会長は『日本畜産物輸出促進協議会』のブースを指差しながら語った

「われわれは、中国からのお客様と商談を行う際には、輸出量だけでなく、食を共に楽しむという考えを大事にしています。そのプロセスには、経済的な問題だけでなく、和牛文化や畜産技術の共有なども含まれます。和牛を人類運命共同体共通の財産とする考え方が大事だと思っています。中国のお客様と接する際にも、この点を切り口にしています。中国のお客様との取引が益々拡大していくことを期待しています」。

5年後の第13回大会は北海道で開催される予定である。これに足並を揃えるべく、『日本農業新聞』は本年9月、和牛への理解を深めるための新たな窓口として、電子版『和牛新聞』を開設した。