「出国・入国ダブル成長」する中国観光業

世界最大の観光客供給源国であり、世界第4位の人気観光国である中国では、観光業の国際化の加速が止まらない。さらにバランスのとれた、良性的な「出国・入国ダブル成長」の傾向となってきている。

中国国家観光局「2017年工作会議」の統計データによると、2016年、中国の観光総収入は前年比13.6%増の4兆6900億元(約75兆8900億円)に達する見通しで、国民経済における観光業の寄与度は11%に達した。国際観光収入は同5.6%増の1200億ドル(約13兆3660億円)。中国を訪れた外国人観光客は延べ2815万人で、8.3%増。長年横ばいだったインバウンド観光は2年連続増加し、インバウンド客は2016年に延べ1億3800万人に達した。

中国は観光大国ではあるが、まだ観光強国とは言えない。中国は世界第4位の人気海外旅行先ではあるが、経済効果やブランドの面から見た観光総合力については、世界の観光強国との差はまだまだ大きい。携程旅遊網の熊星・執行副総裁は、「まず、世界レベルのブランドや観光地が少なく、次に、国際的に一流のグローバル観光企業グループが乏しい。中国全国には2万社あまりの旅行会社があるが、これら2万社の2016年営業総収入は、米アメリカン・エキスプレス社の40%、日本JTBの50%にとどまっている」と指摘した。


西安

アウトバウンド旅行とインバウンド旅行のバランスのとれた発展が、中国が観光強国を目指す上で避けて通れないプロセスだ。熊執行副総裁は、「2016年、インバウンド取引額は150%を上回る勢いでスピード成長を実現、今も加速している。インバウンド客供給源国・地域トップ10の2016年取引量は軒並み100%以上増加した。もっとも増加率が高かったのは韓国で、300%を上回った」と話した。

携程旅遊網の2016年訪中観光客の統計データによると、外国人観光客の観光都市トップ10は順に、上海、北京、廈門(アモイ)、広州、成都、杭州、青島、深圳、南京、西安だった。韓国、日本、タイの観光客は、とりわけ、上海・北京・成都の3都市を観光旅行の第一選択肢としている。マレーシアやシンガポールからの観光客は、広州とアモイの2都市を訪れる傾向が高い。外国人観光客の間で最も人気が高い旅行先トップ3都市は、北京・上海・西安で、うち、「北京は必ず訪れる」という人は54.3%、「上海を訪れる」人は14.5%、「西安を訪れる」人は9.2%だった。このほかランキング上位に入った都市のうち、中部地区で人気が高かったのは成都・桂林・麗江、南部地区で人気が高かったのは広州・アモイだった。

中国人による海外旅行がますますブームになるのと同様、外国人観光客の中国旅行熱も高まる一方だ。2016年は2015年と比べると、高速鉄道を利用する外国人観光客の数が増え、2015年には18%だったのが、2016年には39.2%まで上昇した。一方、空の旅を選ぶ外国人観光客の割合は20ポイント低下した。また、外国人観光客の宿泊に関するニーズにも変化が生じている。2015年と比べ、外国人観光客が高級ホテルでの宿泊を希望する割合は4ポイント低下した一方、特色ある名門旅館や小型旅館のニーズは7.2ポイント上昇、これらの宿泊施設に宿泊した外国人観光客(延べ人数)は178.6%増加した。より特色を備えた中国文化要素の強い旅館が、徐々に外国人観光客の間で注目され始めている。

統計データによると、2016年、携程の海外取引額は100億元(約1618億円)に達し、うち20億元(約323億6400万円)はインバウンド取引で、延べ300万人の外国人観光客を受け入れた。携程旅遊網の熊星・執行副総裁は、「我々の海外業務における各旅行提携パートナーとの企画や業務分担は、ほぼ3つの方向性と目標に分類できる」と語り、以下3点を取り上げた。

第一に、国家政策・観光政策に寄与し、中国観光業の国際影響力を高める。

第二に、観光アウトバウンドを促進し、インバウンドを大々的に発展させ、観光商品の輸出拡大を新たな外貨収入源とする。

第三に、観光による貧困扶助を目指す。革命聖地観光の発展を促し、革命聖地における貧困扶助問題を解決するよう尽力する。