世界経済を牽引する中国人観光客

国家観光局がこのほど発表したデータによると、2015年の中国人の旅行者数はのべ41億2000万人に上り、一人が年に平均約3回旅行した計算になる。海外に出かけた人はのべ1億2000万人だった。

 

中国人観光客の世界経済への貢献は多大

統計によると、2015年の中国人の海外旅行での買い物の規模は6841億元(約11兆1527億円)に達し、そのうち自由旅行の観光客の占める割合が80%を超えた。地域別にみると、日本、韓国、欧米の先進国では、一人あたりの平均買い物額が7000元(約11万4100円)を超える。英国・ロンドンのヒースロー空港では、1%しかいない中国人観光客が免税品の売上高の25%を担うという。

15年の中国人海外旅行者の一人あたり平均消費額は1万1625元(約18万9500円)に達した。これは中国人観光客の観光消費がバージョンアップしたこと、自由旅行者が買い物と食事により多く支出するようになったことが原因だ。

今や中国人観光客は旅の質をより重視するようになった。一般的に言って、旅行サービスの質の向上には消費水準のさらなる上昇が必要になる。中国社会科学院財経戦略研究院の魏翔准教授は、「北欧では、村にあるような民宿でも1泊200ユーロ(1ユーロは約115.5円)はかかり、星クラスのホテルよりも高い。だが個性的な旅を好むようになり、旅の質を重視するようになった中国人観光客にとって、これくらいの値段は障害にはならない。中国人観光客の消費の質向上が消費全体の規模を拡大させている」と指摘する。

観光産業への投資は以前は外国人観光客の専売特許だった。スペインのラ・ゴメラ島は気候が温暖で、風景が素晴らしく、大都市から遠いという特徴から、欧州諸国の観光客の投資先として人気がある。今では中国人観光客がこの島を訪れ、単なるリゾート地としてではなく、くつろぐと同時に投資のチャンスをつかまえるというケースがたくさんみられる。

中国商務集団の呉亜最高執行責任者(COO)は、「一部の観光客は米国やマレーシアなどにリゾートに出かけて、現地の環境が素晴らしいと感じると、そこで不動産を買うことを考えるようになり、ホテルを利用しなくなる」とした上で、「中国人の米国での投資額は11億ドル(約1231億9200万円)を超えた。報道によると、ロンドンやオーストラリアでは、中国人観光客が投資・購入するため、現地の一部地域で不動産価格が値上がりしたという」と説明する。

国際連合世界観光機関(WTO)のデータをみると、12年以降、中国は何年も続けて世界一の海外旅行消費国になっており、世界の観光収入に対する貢献度は年平均13%を超える。15年は海外旅行者数(のべ)と海外観光支出で世界一となり、前年比25%増加した。2008年の世界金融危機発生以降、中国人の海外旅行と海外投資は世界経済の復興を牽引する役割を果たしている。

 

中国人観光客は旅行先にメリット

オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)が2015年発表した経済分析報告では、オセアニア経済の発展は観光産業の隆盛によるところが大きく、中国は海外からオセアニアを訪れる観光客が最も多い国だ。調査によると、14年の第1~3四半期(1~9月)には、中国人観光客が前年同期比10%増加して、73万6000人に達した。海外からの観光客の観光消費額をみると、中国人観光客が最も多く、全体の18%を占め、英国の12%や日本の5%を大きく上回った。データから、中国人観光客のオセアニア旅行では一人あたり平均消費額が5416オーストラリアドル(約43万4363円)に達したことがわかるという。

また同報告は、航空産業がますます便利さを提供するようになっていること、オセアニアで査証(ビザ)の発給要件が一層緩和されたことも、中国人の海外旅行熱をあおっていると指摘する。データによれば、14年には1億700万人の中国人が海外旅行を選択した。オックスフォード・エコノミクスがさきに発表した報告によれば、今後10年間、中国人観光客は年5.1%のペースで増加するという。

中国人の海外観光市場を引き寄せるため、海外旅行先となる各国は査証に関してよりよい条件を提供できるようさまざまな努力をしている。この2年間だけでも、14年には米国が中国人を対象としたビザの有効期間を10年に延長し、15年には日本が中国人向けマルチビザの発給をスタートした。