鑑古堂の古美術鑑定〈4〉
収集に掻き立てられるコレクターの心理

コレクターたる者、幼い頃、何かの収集に夢中になった経験を持つ。これが4度目の寄稿となる。今回はコレクターの美術品収集熱の根源に迫ってみようと思いたった。

先日、部屋を片付け、コレクションを整理していた時、キャビネットの隅に2冊の切手帳と記念コインが入った2つの小さな箱を見つけた。

私は狂喜した。この2冊の切手帳を、私は十年以上探し続けていたのだ。

切手帳の最初のページは、1980年に発行された、赤地に天真爛漫な黒いサルが描かれた切手で、眼前に突然現れたサルの切手は、あたかも干支の切手を率いるチームリーダーが、5列に並んで所有者の検閲を待っているかのようであった。

サルの切手の次のページには、一面に辰年の切手が敷き詰められ、束ねられた酉年の切手、文革の切手、革命模範劇の切手等々、2冊の大きな切手帳には切手がぎっしりと詰まっていた。

最初のページのサルの切手は、1980年に発行されたもので、当時私は14歳、中学2年生だった。当時、干支の切手が毎年発行されていた。一枚の切手を手に入れるために、早起きをして並んで買い求めたものである。数に限りがあり、列に並んだ人が一人につき1枚だけ購入できた。希少性がうかがえる。

年齢とともに切手の数も増え続け、切手帳の内容も充実していった。

筆者のようなタイプの人間は、切手以外にコイン収集を趣味としているケースが多い。一種のコレクション中毒である。

コレクション中毒に陥る人には、いくつかの特徴がある。

1-独占欲が強い、2-分類へのこだわりが強い、3-将来に対して自信と期待に満ちている、などである。

1-「独占欲が強い」は、比較的容易に理解できる。好きなものを手に入れるために努力する。

2-「分類へのこだわりが強い」は、少し理解しづらいかもしれない。ひとつの物を好きになると最後まで追い求め、必死になって一揃い全てを手に入れる。重症になると、食費を切り詰めてでも目標を達成しようとする。

3-「将来に対して自信と期待に満ちている」のはなぜなのか。平たく言うと、自分が収集した物は他よりも優れていると考え、さらに分かり易く言えば、それらはいつか価値が上がるか、驚天するほどの値が付くだろうと考えているのである。(ここまで書いて、あまりの滑稽さに笑ってしまいそうである)

テーマ別の目標を設定し、同じカテゴリーのコレクションを継続的に収集していると、後に驚くほど価値が上がることも往々にしてある。

最初に触れたサルの切手がその代表例である。購入当時は1枚わずか8分の郵便切手であったが、今では、その評価額は十数万から数十万にもなる。当然、かつての14歳の中学生に、そんな予測などできようはずもない。

以前、様々なジャンルの美術品の大物コレクターにアンケートをとったことがある。彼らのほとんどが子どもの頃、切手、コイン、記念品の類いを収集した経験があると回答した。

幼い頃の収集癖が高じて、筆者のコレクションは現在、磁器、玉の工芸品、宮廷装飾品、古代の漆器や銅器へと発展している。

同時に、子どもの頃夢中だった切手やコインの収集も継続し、毎年、銀行が限定発行する干支の金貨も収集している。