翁 道逵 ベリーベスト法律事務所 パートナー(中国弁護士)
日本の暗号資産に関する法制度ガイド その52

一般社団法人日本暗号資産取引業協会(以下「認定協会」という)は、苦情・紛争解決関係の自主規則として、「暗号資産交換業に係る苦情処理及び紛争解決に関する規則」(以下「紛争解決規則」という)、及びその細則を規定しております。

 今回は認定協会のこの「紛争解決規則」及びその細則を紹介します。

  • 苦情処理措置

 「紛争解決規則」第5条によると、会員は、苦情を処理するための措置として、利用者からの苦情の処理の業務に従事する使用人その他の従業者に対する助言若しくは指導を消費生活に関する消費者と事業者との間に生じた苦情に係る相談その他の消費生活に関する事項について専門的な知識経験を有する者として暗号資産交換業に関する内閣府令(以下「府令」という。)で定める者に行わせること又はこれに準ずるものとして府令第32条第1項(第2号を除く。)で定める措置を講じなければなりません。

 また、会員は、上記の措置に加え、協会が行う苦情の解決により、暗号資産関連取引に関する苦情の処理を図るものとし、この場合において、会員は、「紛争解決規則」及びその細則の定めに従わなければなりません。

 

  • 紛争解決措置

 「紛争解決規則」第 6条によると、会員は、協会が協定書を締結する弁護士会によるあっせん又は仲裁手続により、暗号資産関連取引に関する紛争の解決を図るものとし、この場合において、会員は、当該弁護士会が行う手続に関する規程等及び協会と弁護士会との間の協定書並びに協会及び弁護士会に対する確認書に従い対応するものとし、例えば、当該弁護士会から、特別調停案が提示された場合には、資金決済法第101条で準用する銀行法第52条の67第6項各号に規定する場合を除き、これを受諾しなければなりません。 会員は、前項の紛争解決措置に加え、利用者との紛争の解決を認証紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)第2条第3号に規定する認証紛争解決手続をいう。)により図ること又はこれに準ずるものとして府令第32条第2項で定める措置を自ら講じることができます。

 ちなみに、紛争解決支援機関の利用申込みに関して、当該苦情の内容が次の各号のいずれかに該当する場合は、利用の対象外とします。

(1) 取引の名義が、当該申出人本人でない場合(ただし、「紛争解決規則」第3条ただし書き該当する場合は除く。)

(2) 苦情の原因である取引の日から3年が経過している場合

(3) 当該苦情に係る訴訟が終了若しくは訴訟中、又は民事調停が終了若しくは民事調停中のものである場合

(4) 弁護士会のあっせん・仲介手続きが終了又は手続中の場合

(5) 会員の経営方針や販売態度又は会員従業員個人に係る事項など、事柄の性質上、紛争解決支援機関の利用が適当でないと認められる場合

(6) 不当な目的で又はみだりに苦情の申し出をしたと認められる場合

次回へ続く