~「日本のデジタル社会へ向けての課題と展望」その17~
「デジタル田園都市国家構想について」

今回からシリーズとして、日本政府が進める『デジタル田園都市国家構想』とこの実現を支援するために2022年2月18日に設立された一般社団法人デジタル田園都市国家構想応援団の活動について述べる。

 『デジタル田園都市国家構想』とは、地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像を描き、産官学民の連携で地方が抱える課題をデジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残さず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らし 地域の個性を活かした地方活性化をはかり、地方から国全体へのボトムアップの成長や科学的エビデンスに基づく政策、経営等を実現する持続可能な経済社会を目指す。

 同構想は、岸田政権の掲げる「新しい資本主義」実現に向けた、成長戦略の最も重要な柱の1つで、以下の4つの骨子から成る。

(1)デジタル基盤の整備

 5G、データセンターなどのデジタル基盤の整備を推進し、国主導の下、共通ID基盤、データ連携基盤、ガバメントクラウド等を全国に実装する。主要施策として、①5G等の早期展開(2023年度までに、人口カバー率を9割に引き上げる)、②データセンター、海底ケーブル等の地方分散(十数か所の地方データセンター拠点を5年程度で整備)、③「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」(3年程度で日本を一周する海底ケーブルを完成)、④光ファイバのユニバーサルサービス化(2030年までに99.9%の世帯をカバー)、⑤自治体システムの統一・標準化の推進等を実施する。

(2)デジタル人材の育成・確保

 地域で活躍するデジタル推進人材について、2022年度末までに年間25万人、2024年度末までに年間45万人育成できる体制を段階的に構築し、2026年度までに230万人確保する。主要施策として、①デジタル人材育成基盤の構築・活用、②大学等における教育、③離職者等向けの支援(職業訓練)、④先導的人材マッチング事業、⑤プロフェッショナル人材事業の推進等を実施する。

(3)地方の課題を解決するためのデジタル実装

 交通・農業・産業・医療・教育・防災などの各分野について、デジタルを活用して効果的に地域課題を解決するための取組を全国できめ細やかに支援する。併せて、地域づくりを推進するハブとなる経営人材を国内100地域に展開する。主要施策として、①地方創生関係交付金等による分野横断的な支援(デジタルの実装に取り組む地方公共団体:2024年度末までに1000団体)、②構想を先導する地域への支援(スマートシティ、スーパーシティ等)、③稼ぐ地域やしごとの創出への支援(農林水産業、中小企業、観光等)、④地方へのひとの流れの強化への支援(地方創生テレワーク、関係人口等)、⑤持続可能な暮らしやすい地域づくりへの支援(教育、医療、防災等)等を実施する。

(4)誰一人取り残されないための取組

年齢、性別、地理的な制約等にかかわらず、誰でもデジタルの恩恵を享受できる「誰1人取り残されない」デジタル社会を実現する。主要施策として、①デジタル推進委員の制度整備(2022年度に全国1万人以上でスタートし、拡大)、②デジタル分野での地域の実情に応じた女性活躍の推進等を実施する。

プロフィール

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学学長、東京大学大学院数理科学研究科連携客員教授。