中国人観光客が 周辺国の観光市場を熱くする

マスターカード・ワールドワイド社がこのほど発表した報告書によると、世界の人気旅行先10カ国のうち、アジアが半数を占める。過去6年間をみると、タイ・バンコク、シンガポール、韓国・ソウル、日本・東京などの都市では、観光客の一人あたり平均支出の複合年間成長率が9.7%に達した。中国人観光客の「大軍」が周辺国の消費市場やショッピング市場を熱く燃え上がらせ、現地に相当の収入をもたらしている。観光旅行市場の競争の激化にともない、周辺国は全力投球でサービスの改善に努め、さまざまな旅行商品をうち出して、より多くの中国人観光客を呼び込もうとしている。


タイの繁華街に現れた中国人観光客を歓迎する横幕

周辺国の受け入れ状況

2012年以降、タイにとって中国が最大の観光客供給源となっている。泰中観光同業商会(TCTA)の李良成理事長は取材に答える中で、「価格面の強みと海浜都市の魅力があることが、タイが中国人観光客を引き寄せる最大の原因になっている」と述べた。タイ観光・スポーツ省がまとめた統計によると、2014年にタイが受け入れた外国人観光客はのべ2470万人、このうち中国人はのべ460万人で18.6%を占めた。同省は、今年タイにはのべ560万人の中国人観光客が訪れ、その人数は外国人観光客の中で首位に立つと予想する。

タイと同じように、シンガポールの観光産業にも中国の「印」は深く刻まれている。シンガポール政府観光局がこのほど発表したデータによると、14年には中国がシンガポールにとって2番目の観光収入の供給国、また2番目の観光客供給源になり、外国人観光客に占める中国人の割合は11.4%だった。注目されるのは、中国人観光客がこれまで主流だったシンガポール、マレーシア、タイの「周遊ツアーモデル」から徐々に離れ、シンガポールだけの「ワンストップツアー」を選ぶ割合が前年同期比22%増加したということだ。

韓国観光公社中国部の徐英忠部長は、「2012年以降、日本に代わって中国が訪韓観光客最多の国になった」と話した。同公社のまとめた統計によると、14年に韓国を訪れた中国人観光客は前年比41.6%増加して、のべ612万7000人に達し、外国人観光客のうち43.1%を占めた。

大陸部から日本を訪れる観光客は14年にのべ241万人を突破し、外国人観光客の18%を占め、3位になった。中国人観光客の訪日はこれまで春節(旧正月)や国慶節(建国記念日、10月1日)の連休期間に集中していたが、通年にわたって常態化しつつある。

インド政府観光局のまとめた統計では、14年にインドを訪れた中国人観光客はのべ17万人で、米国や英国などに比べれば大きい数字ではないが、中国人観光客は滞在時間や消費金額が大幅に増加する傾向にあるという。

中国人観光客によりよいサービスを

より多くの中国人観光客を呼び込むため、一部の国は査証(ビザ)の手続きを簡略化しただけでなく、中国人観光客のニーズを踏まえた特色ある観光ルートや観光商品を相次ぎうち出している。

韓国の済州島は中国人観光客を対象としたノービザ政策を実施し、中国人観光客の人気を集める。中国の団体ツアーの査証取得をより便利で迅速なものにするため、今年1月からは電子査証申請制度システムのテスト運営が始まり、来年1月から全面的に導入される計画だ。

徐部長は、「韓国で流行りの音楽やドラマなどは、中国人観光客にとって韓国文化の象徴になっており、韓国は今後、影響力をもった文化や娯楽の商品を開発していく。また中国人観光客のニーズの高まりに合わせて、ゴルフ、徒歩旅行、自転車旅行などのニーズに対応した旅行商品を開発してきた」と話す。

ガイド歴5年のインドのアダンさんは、「インドを旅行する中国人観光客の半数以上はビジネス兼用の旅行で、投資環境と観光旅行の両面をみていく。中国人観光客にはインド旅行で物足りない思いをする人が多い。観光管理部門と旅行業界はより合理的な観光ルートを組み立て、インド国内に分散する観光スポットを連携させ、より多くの中国人観光客を呼び込んでいかなければならない。今年と来年は中国・インド両国の相互の観光年で、これは両国観光産業の発展を促進し、両国の人々の往来を盛んにする新たなチャンスになる」と話した。

ここ2年ほど、タイを訪れる中国人観光客で目的地を絞った旅やテーマを深く掘り下げた旅を選ぶ人が多くなり、これまでそれほど人気がなかったチェンマイ、アユタヤ、スコータイなどの人気が徐々に高まっている。タイの地方観光部門も関連措置を改善するなどして、中国人観光客によりよいサービスを提供しつつある。

日本政府は14年10月から、化粧品、服飾品などの日用品を免税の対象とした。日本では店舗40万店、ATM8万台で銀聯カードの使用が可能だ。銀聯カードの14年の日本での利用額は277億元(約5455億円)に上り、日本市場で加盟店シェアがトップの海外カードブランドになった。

東京や大阪などのドル箱観光都市だけでなく、中国人観光客は北海道や岐阜といった遠方の観光地にも活力を与える。佐賀や広島などは中国の格安航空会社(LCC)の路線導入に力を入れ、中国の二線都市、三線都市から観光客を呼び込もうとしている。