~「日本のデジタル社会へ向けての課題と展望」その12~
「インフラDXとその具体化について」
藤原洋 株式会社ブロードバンドタワー代表取締役会長兼社長CEO 一般財団法人インターネット協会理事長

今回は日本型DXのうち行政DXの2回目として、「インフラDX」について述べる。国土交通省では、社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータと デジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービ スを変革すると共に、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土 交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進 すると共に、安全・安心で豊かな生活を実現することを目指している。

 

●インフラ分野のDXで実現するものは、図1に示すように国民、業界、職員の3つを対象に分けて実行する。

図1.インフラDXによって実現するもの(出典:国土交通省)

 

●インフラ分野のDXのデジタル変革の事例として以下に2つをあげている。

①行政手続きや暮らしにおけるサービスの変革:

 手続きのデジタル化やオンライン化を進め、行政手続き等の迅速化を推進し、デジタルデータの利活用を進め、暮らしにおける各種サービスを向上させる。

〇行政手続き等の迅速化

・特車通行手続き等の迅速化

手続きのデジタル化やオンライン化を進め、行政手続き等の迅速化を推進する。具体的には、特車通行手続き等の迅速化で、電子申請システムの導入等による、特殊車両通行手続きの即時処理や、道路占用許可、特定車両停留施設の停留許可手続きの効率化を実現する。ETC2.0等を活用し違反車両の取り締まりを高度化する。

・港湾関連データ連携基盤の構築

港湾全体の電子化により、物流手続・行政手続の効率化、遠隔・非接触化を実現すると共に、施設の効率的なアセットマネジメントを実現する。

〇暮らしにおけるサービス向上

・ITやセンシング技術等を活用したホーム転落防止技術の活用促進

デジタルデータの利活用を進め、暮らしにおける各種サービスを向上させる。具体的には、ITやセンシング技術等の活用により、視覚障害者の駅ホームでの転落事故を未然に防ぎ、駅ホームでの更なる安全性を向上する。

・ETCによるタッチレス決済の普及

駐車場やドライブスルーなど、高速道路以外の多様な分野へのETCを活用したタッチレス決済の普及・拡大を図る。

②ロボット・AI等活用で人を支援し、現場や暮らしの安全性を向上

 ロボットやAI等により施工の自動化・自律化や人の作業の支援・代替を行い、危険作業や苦渋作業を減少 AI等を活用し経験が浅くても現場で活躍できる環境の構築や、熟練技能の効率的な伝承を実現する。

〇安全で快適な労働環境を実現

・無人化・自律施工による安全性・生産性の向上

 産学官共同の建設基盤を整備し、無人化施工、自律施工に向けた研究開発を推進する。

・パワーアシストスーツ等による苦渋作業減少

 身体負荷の軽減や視覚・判断の補助を行うパワーアシストスーツ等を導入し、苦渋作業を減少する。

〇AI等を活用し暮らしの安全を確保

・AI等による点検員の「判断」支援

 AIにより点検画像か ら変状を自動検出し、点検員の「判断」を支援する。

・CCTVカメラ画像を用いた交通障害自動検知

 カメラ画像を活用したAIによる交通障害のシミュレータを活用した自律運転の研究開発と自動検知を行う。

 

 

プロフィール

1954年、福岡県生まれ。京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒。日本アイ・ビー・エム株式会社、日立エンジニアリング株式会社、株式会社アスキー等を経て、株式会社インターネット総合研究所等を設立し、現職。96年、東京大学より工学博士号を取得。現在、SBI大学院大学学長、東京大学大学院数理科学研究科連携客員教授。