中国、「一人っ子政策」を全面廃止


福州市にある公園で遊んでいる親子たち

中国の人口政策がまたもや転換期を迎えた。10月29日に閉幕した中国共産党第18期中央委員会第5回総会(五中全会)は、計画出産の基本国策を堅持しつつ、人口発展戦略を改善することを決定、急速に進む高齢化に対応するために、夫婦が2人目の子供を出産することを全面的に認めることとした。

「単独二孩(夫婦のいずれか一人っ子の場合、2人目の出産を認める)」政策が導入されて約2年が経過したが、出産率が期待通りに上昇した省(自治区・直轄市)は多いとは言えない。たとえば、2014年2月21日から「単独二孩」が実施された北京では、2015年6月30日の時点で、2人目出産の申請件数は4万4700件、承認件数は4万951件。北京市衛生・計画出産委員会の、緩和措置導入初期の見積もりによると、緩和政策によって、北京では、毎年平均5万人の新生児が新たに誕生するという予測だった。だが、2014年8月から11月までの4カ月続けて、同市における2人目出産申請件数は減少、申請件数は予想をはるかに下回る事態となった。

中国の人口ボーナスが消失しつつあることは、もはや疑いようのない事実である。人口ボーナス消失により、労働生産人口の減少や人口の高齢化など一連の問題がもたらされ、中国の将来に深刻な悪影響を及ぼす隠れたリスクとなっている。このため、多くの専門家が、「一人っ子政策撤廃」を呼びかけ続けてきた。

今回、五中全会において、2人目の出産が全面的に認められたことについて、専門家らは高く評価している。中国社会科学院人口・労働経済研究所の都陽・教授は、「今回の政策転換は、前向きな変化といえよう。中国の出産率はすでに非常に低い状況であることから、今後の労働力不足は目に見えており、高齢化が急激に進んでいる。2人目出産の全面解禁は、出産率を速やかに引き上げ、人口構造上の矛盾を緩和する上で、極めてプラスに働く。今回の全面解禁によって、これまで条件を満たさなかった夫婦も、2人目の子供を持てるようになる」と指摘した。

 2人目出産の全面解禁が出産率を急速に上昇させることで、人口爆発が表れることはないのだろうか。都教授はこれについて、「全面解禁が果たしてどれほどの効果を生み出すのかは、しばらく様子を見る必要がある。低出産率は、最初は政策による制限が原因であったが、経済発達レベルが高まるにつれて、出産率もある程度抑えられてきた。ほとんどの先進国は、計画出産政策を講じていないが、出産率も極めて低い」と分析した。

中国人民大学社会学部の周孝正教授も、「第2子出産の全面解禁が人口爆発をもたらすことはあり得ない。現在、最も大切なことは、人々の出産願望を奨励することであり、全面解禁はその意味では非常に前向きなサインと言えるだろう」との見方を示した。