刑事訴訟法修正案草案を読み解く

3月8日、第11期全国人民代表大会第5回会議の記者会見の席上、全人代常務委員会委員、全人代常務委員会法制工作委員会の郎勝副主任、同委員会刑法室の李寿偉副主任が、議題である「刑事訴訟法修正案草案」について国内外の記者の質問に答え、社会的に関心を集めているこの問題に対応した。

 

《ポイント1》

強制措置について、どのような状況では家族に通知しないのか

 今回の刑事訴訟法修正案草案の規定によると、犯罪の被疑者に逮捕措置を講じる、または在宅監視措置を講じるのに対し、通知しようのない場合を除き、すべて24時間以内に家族に通知しなければならない。

同時に、このような緊急の状況のもとで講じられた強制措置の拘留に対して、通知する方法がなく、または国家の安全に危害を及ぼす犯罪やテロ活動の犯罪の通知が調査を妨害する可能性がある状態を除いて、24時間以内に家族に通知しなければならない、と規定している。

 また、ネット上で国家の安全に危害を与えた場合、秘密逮捕することができるという見解は正確ではなく、中国には秘密逮捕はないし、法律にもこのような規定はない。

 

《ポイント2》

弁護士が職務履行の過程で権利が侵害されたらどうするか

 今回の刑事訴訟法修正案草案は、当事者の弁護を受ける権利を強化し、弁護士が法により自己の職責履行を維持する分野、例えば、回避、閲覧の申請などに多くの規定がなされた。

さらに、弁護士が自己の職責を履行する過程で権利が侵害された場合、関係機関が法律の規定に違反して弁護士が合法的権利を行使することを阻害した場合、弁護士は告訴、上告する権利を有すると特に規定している。

またこれらの手続きに関する規定を特別につくり、それにより弁護士が順調に職責を履行できるよう保障している。

 現実的には、司法機関が安易に、または比較的自由に弁護士に対する審査や措置を講じるということが起きるかどうかという点については、草案では特別な規定を設けており、もし弁護士に犯罪の容疑がかけられた場合、その事件の捜査機関は弁護士に対して捜査を行ってはならず、弁護士に偽証の嫌疑がかけられた事件では、その事件の捜査機関以外の他の捜査機関が取り扱い、事件が公正に処理されるよう保証される。

 

《ポイント3》

どのような状況で在宅監視が行われるのか

 在宅監視は実際には逮捕の代替措置であり、逮捕に比べると軽く、人身の自由制限のレベルも低い強制措置である。在宅監視を講じるのには数種類の状況がある。

第1に、重病で生活が自分でできない場合は、たとえ犯罪の被疑者で、罪状が重くても逮捕は不適切である。

第2に、妊婦あるいは乳児に授乳している場合で、厳しい逮捕措置をとるのは適切ではない。

第3に、介護や看護が必要な者の唯一の扶養者である場合で、危険のない状況では在宅監視とすることができる。

第4に、事件の状況に基づき、在宅監視がさらに適切であると判断された場合である。

第5に、すでに逮捕されたが拘留期間が満了し、釈放する必要があった場合である。

 さらに、在宅監視の過程において問題が発生した場合どのように救済するかについては、今回の刑事訴訟法修正案草案に明確に規定されており、在宅監視は検察機関の監督を受けなければならず、弁護士は法律的支援を提供することができる。

 

《ポイント4》

どんな公訴事件が和解できるのか

 現行の刑事訴訟法では、被害者提訴事件には和解の規定があるが、公訴事件にはそのような規定はない。公訴事件は公訴という角度から、主に検察機関が国家を代表して犯罪の被疑者と被告人に対して訴追する。

しかし、経済、社会の発展に伴い、時には民間のもめごとが引き起こした事件が、比較的平和的な方法で解決されれば、処罰の判決より社会的にはよい効果をもたらし得る。

このような状況のもと、この度の刑事訴訟法修正案草案は繰り返し検討され、被害者提訴の事件の和解制度を公訴事件の中に取り入れた。

 同時に、公訴事件和解は新しく作られた制度であり、さらに詳細に把握する必要がある、主に、範囲の厳格な制限が必要である。

第1に、民間の紛争により引き起こされた人身の権利、財産の権利に対する侵犯であり、直接社会に危害を及ぼしたり、公共の利益を損ねる犯罪ではないこと。

第2に、この種の事件そのものの内容は相対的にはそれほど深刻ではなく、3年以下の懲役判決が見込まれるもので、一部の重刑、例えば殺人や重い傷害は、たとえ民間の紛争が引き起こしたものであっても、和解はできない。しかし例外もあり、国家機関に勤務する者の汚職は、たとえ過失であっても和解はできない。これは国家機関に勤務する者に対する厳格な要求を反映したものである。

 軽微な事件が成立するのを防止しようとして新しい不公平が現れている。たとえば、すぐ金銭賠償することにより刑を免れる人もいる。司法機関は、(1)被告人や被疑者が真に反省しているか。(2) 被害者が確実に了承しているか。(3) 社会的な評判、破壊された社会的関係がすぐに修復できたか、をそれぞれ厳格に調査しなければならない。こうした状況以外に、司法機関は寛大な処置を考慮してはならない。寛大な処置というのは追求しないということではない。

 

ポイント5

汚職役人の逃亡はどのように処罰されるのか

司法が行われる中で、汚職事件やテロ事件で被疑者が逃亡したり死亡した後、その犯罪で得た巨額な財産を長期的に追徴できない状況がしばしば出てきた。

 よって、刑事訴訟法修正案草案は「特別手続き」の章に、「犯罪の被疑者や被告人が逃亡、死亡した事件の不法所得の没収手続き」が特に追加された。

修正案草案は、汚職・贈収賄事件、テロ活動犯罪等の重大犯罪事件について、犯罪の被疑者、被告人が逃亡し、指名手配後1年たっても審理できないか、被疑者、被告人が死亡した場合、刑法の定めに従い、その不法所得及びその他の関連財産を追徴しなければならないとし、人民検察院は人民法院に対して違法所得の没収を申請できると追加規定している。また、公安機関が人民検察院に移送する手続きと人民法院の審理手続きを定めている。