海外の華文教育が直面している問題

終わったばかりの両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)で、国務院華僑事務弁公室の裘援平主任は何度も海外における華文教育問題に触れた。海外の華僑同胞や外国人の華文教育に対するニーズは次第に高まっている一方で、教員、教材、資金など多くの問題に直面している。日本の中華学校人気はまさに、これらの窮状をよく映し出している。

 
神戸中華同文学校の教室の壁に貼られた生徒たちの書写

 

日本で中華学校が大人気

「上の息子は1年生で、下の息子は6歳。下の子をどうにか神戸中華同文学校に入れられないかしら」と話す趙江さんは、神戸の会社で働く上品な母親である。神戸中華同文学校を取材に訪れた時、ちょうど彼女が入学の問い合わせをしているところに出くわした。真剣な表情には焦りの色がうかがえた。

神戸中華同文学校は現地では大変な人気である。100年以上の歴史を誇り、創立は1899年である。清の政治家・梁啓超が設立を促し、華僑商人の麦少彭らから熱い支持を得た。100年の紆余曲折を経て、現在、小学部と中学部に50名近い教師を有し、およそ700名の生徒が学ぶ。楊震雄校長によると、100%が日本の高校に進学するという。

時間割を見てみると、中国語、日本語、英語の3カ国語を教えている。「ここで教える教科は、日本の小学校と中学校の通常の教科以外に、中国の歴史、地理など中国関係のものもあり、一般の日本の学生に比べて勉強はきついと思います」と、張述洲教務部長は語る。

苦しい学業故の優れた成績が保証される。しかしながら、我が子を入学させたいと渇望する多くの父母を前にして、学校側は断るしかない。「授業料は十数年間ほとんど上がっていません。学校の運営費の半分は授業料に、半分は校友の援助などに頼っています。700名が限界で、これ以上学生を受け入れるのは無理です」と、楊校長は話す。

 

中日友好に貢献できる人材を育成

裘主任は、中華学校は海外において中国の言語と文化を最も正確に伝え、基礎がしっかりした最も効果的な教育形態をとっていると評価する。「現在、世界にはおよそ2万校の中華学校があり、数十万の教師と数百万の華僑の子孫が在籍しています。中国系の青少年のほとんどがここで学んでいます」。

ある資料によると、香港、マカオ、台湾を含む中国本土以外の居住者のうち、中国語の読み書き・会話のできる者の70~80%が、中華学校で基礎教育を受けている。

長年、国務院華僑事務弁公室は、海外における華文教育に対して、教材、教師、資金等の面で支援に力を注いできた。神戸中華同文学校を例に挙げれば、1988年、華僑事務弁公室編纂・出版の『漢語』を小学部の国語のテキストに正式採用した。最近では中国語、地理、歴史などの教科で、自作のものや華僑事務弁公室、北京華文学院、?南大学などが編纂・出版した教材が使用されている。

さらに、2009年から毎年、華僑事務弁公室は海外の華文教育モデル校を選出している。その趣旨は中国の優れた文化を発揚し、これらのモデル校を模範として現地の中華学校の迅速な発展を牽引することである。神戸中華同文学校は、華僑事務弁公室が初めて選出した55の「華文教育モデル校」に名を連ねている。

楊震雄校長は言う。「学校の教育目的は華文教育を通じて、華僑・華人の子女に正しく中国に関する知識を教え、教師を尊敬し友を愛し、努力・進取という良き校風の中で、徳・智・体に優れ、将来中日友好に貢献できる人材を育成することです」。

これこそ、海外の中華学校が目指すべき最高のかたちであろう。

 
生徒の作品

苦境打開に各界の支援と協力を

日本の中華学校人気は、同時に問題も露呈させた。楊校長によると、日本には中華学校が5校あり、在校生は3000人足らずである。その中で神戸中華同文学校は規模が最大である。

華僑事務弁公室のデータによると、現在、日本にはおよそ82万人の華僑華人がいる。ところが、これまで華文教育は、日本の教育体系に組み入れられてこなかった。日本には、5校の全日制の中華学校以外に、週末の中国語学校や中国語テレビ局などが実施する中国語教育モデルもある。

日本の中華学校の置かれた境遇はまさに、海外の中華学校の今後を物語っている。長年、海外の中華学校は多くの支持を得、喜ばしい成果を収めてきた。しかし、学校運営の条件が劣る、教師や教材の不足、システムが不完全等の問題も山積し、解決が待たれる。

さらに、華僑第2世代や居留国で生まれた第3、第4世代を含む新世代には、中国語もできない、中国文化も理解しない、祖国に強い親近感も覚えない子どもが増えている。

裘援平主任は、各界がさらに海外での華文教育に関心を寄せ、華僑事務弁公室は引き続き、支援に力を入れるよう呼びかけている。また、中国人民政治協商会議委員会(全国政協)香港・マカオ・台湾華僑委員会副主任で、華僑事務弁公室元副主任の趙陽氏が、両会会期中に述べたところによると、全国政協は、華文教育を本年上半期の双週協商座談会の議題の1つとすることを決定し、関連の作業が急ピッチで進められている。

華文教育の核心は、海外の華人に中華文化の根を留めることである。全面深化改革元年の2014年、人びとは海外の華文教育にも期待を寄せている。