留学生上がりのアントレプレナー

千葉日建専門学校(CHIBA NIKKEN INSTITUTE OF TECHNOLOGY)は、フロントエンドエンジニアをはじめバックエンドエンジニア、データサイエンティスト等、コンピュータサイエンスに関わるあらゆる職種で活かせる力を身に付けることを目標として、新学期から新たに「IT 構築講座」を設け、最先端のICT(情報通信技術)に精通したエンジニアである凌群(Ling Qun)に登壇をお願いした。

凌群(Ling Qun)

凌群は、上海生まれで、1985年に上海科学技術大学理学部卒業後、日本に留学し、1996年に大阪府立大学大学院物質研究科で修士号を取得した後、脱炭素関連の新たな技術開発を推進する大手専門商社に就職。そこで、優れた業績を上げ、深圳、上海、大連、その他中国の事業所を担当する管理職に抜擢された。

そして、経営不振に陥った28社について抜本的な改革措置を講じ、上海でのマーケティング、および深圳での製造に、大ナタを振るって統合、整理を行うと同時に、日本の本社の経営会議で、必要な経営権と裁定権を中国の地方経営者に移譲することを提案した。

このような現地経営を優先する経営理念は功を奏し、翌年から黒字に転じたので、他の日本の大企業からも高く評価され、模範とされた。

凌氏の手がけた経営改革は中国における日本企業が円滑に発展するための企業文化となった。

1999年、ビジネスパートナーと相談して、凌氏は日本の大阪にARIYS CO.LTD.を設立し、会長兼CEOに就任した。

日本市場で培ったビジネスの先見性で、小型家電に焦点を当てるという方針に基づき、日本でデザインし、中国で製造し、日本の市場で販売するというビジネスモデルを構築した。このことによって、「日本の家電市場で外国製品は売れない」という神話が初めて打ち破られた。中国の温州で生産された電気かみそり、寧波と蘇州で生産された掃除機、深圳と東莞で生産された小型家電製品が、続々と日本に上陸し、日本人の家庭に入り込んでいった。斬新なデザインと安定した品質を備えた中国製の小型家電製品は日本の消費者に受け入れられ、ついにそのシェアの約30%を占めるようになった。

今日のように、中国の家電製品は日本市場のいたるところにあるが、20数年前までは想像もできかったであろう。凌氏は、日本の小型家電市場が非主流ブランドを容認できないという暗黙のルールを破ったパイオニアである。

2000年に科学的工学的な見地と市場に対する鋭い感覚からLED関連技術の研究開発に着手した。数年間の研究でLED照明に関連する特許を取得し、商業化にも成功した。

今後、世界中の照明用光源としての普及が見込まれている白色LEDに特化し、超省エネルギー、超高演色性、長寿命、低コストを実現できる究極の光源実現のための技術開発を行っている。

世界全体の電力消費に対して照明装置の電力消費は20%程度あり、省エネルギーの観点からも白色LEDのような新光源の普及が強く求められるトレンドとなっている。

2002年に初めて発売された発電タイプのLEDライトは、すでに1,000万台販売され、売り上げは150億円近くに上る。同社の製品は斬新なデザインと強力な機能により、市場に大いに歓迎され、従来の販売チャネルとモデルを転換し、業界全体の防災用品としても、多くの大企業や日本の地方自治体の調達リストに指定されている。

市場に出回った他のLED照明器具も大成功を収め、省エネルギー、温室効果ガス削減、環境浄化など、世界に多大な貢献をし、会社に莫大な利益をもたらした。これらの製品の成功は、凌群の強力なリーダーシップによるものである。

製品の信頼性、安定性と実用性からARIYSのLED電球の長寿命は業界で話題を呼んでいる。凌氏の率いる会社は、日本市場と消費者に認知されており、彼の鋭い市場感覚、洗練されたビジネスモデルは、競争の厳しい日本市場におけるLED照明のパイオニアとして業界で高く評価されている。

日本におけるLED照明の普及とイノベーションを促進する役割を果たし、業界のリーダーとして認められた凌氏は、LED照明の分野での研究と設計の経験を仲間と共有するために、講師として、年に数回、LED照明器具の設計と応用に関する講義とデモンストレーションを開催し、若い技術者の育成にも重要な貢献をなしている。

 冷静で客観的、そして観察力・洞察力に優れた凌氏は、物事を系統立て、論理的に考える能力があり、思考を駆使して問題解決を図る。そして、人はもとより機械やテクノロジーなどへも強い興味と関心を持ち、専門分野の知識や技術を通じて人と関わり、専門領域についての議論を好み、常に時代の先端を歩んでいる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが宣言され、人類の日常生活が大きな変化を余儀なくされた年の秋に、彼は新しいチャレンジを始めた。IoT(モノのインターネット)アプローチで店舗をケータリングするための新しいビジネスモデルを考案したのである。

自動化技術、機器、ネットワークを1つに統合することで、モノのインターネット上で店舗が「モノ」になり、自動化されたAI機器を通じて、製造、ラッピング、販売などの一連の操作を統合する。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの実施やキャッシュレス決済の開始など生活様式や企業活動が大きく変化する中、今後はニューノーマルへの対応が求められ、さらなるIoT 型の推進が必要不可欠となる。

業界の自動化されたAI生産方法は今後、飲食業界の労働力不足や長期労働条件の深刻化に対応する有効な解決方法として注目を集めている。より幅広い目線でIoT 型店舗の推進を図るべく、ニューノーマルに対応した非接触・無人・自動化サービス特化型サイトの開発に力を注いでいる。

特にwithコロナの時代に対応した真新しいサービスの提供を通して、企業や店舗などに快適・安心・安全を届け、今後もマーケティング支援会社として、これまでに培ってきたマーケティングノウハウを活かし、さらなる、IoT 型の推進に全力を尽くしている。

凌氏が率いる設計チームは、すでに日本で関連する自動化装置の設計コンセプトとスキーム認証を実施している。凌氏が設計した素晴らしい全自動IoTインテリジェントケータリングストアが、間もなくアメリカ西海岸を皮切りにグローバル市場に登場するものと予想される。

 凌氏は留学生から優れた科学技術者、起業家、そして外国で尊敬される発明家へと成長した。これは同氏の勤勉さと忍耐力の結果である。常に高い目標を目指し、チャレンジし続け、変化し続けている凌氏は、その知性や思考能力をフルに使って、革新的な発想に結びつけることができる。

科学・工学技術など、理工系に秀でているだけでなく、特に現実の問題を追及し、解決していく学者であり、また技術系出身のアントレプレナーとして高く評価されており、そのイノベーション精神を亜細亜大学都市創造学部の特別教授として、若い世代の育成に力を発揮することが大いに期待されている。