前回、「首都圏一極集中」という課題とその対極的な現象としての「地域経済の衰退」について述べた。今回は、日本の2つの社会課題である、「一極集中」と「デジタル化の遅れ」の中で、前回に続いて、もう1つの一極集中問題である「大企業への一極集中」を取り上げる。換言すれば、「中小企業の非活躍問題」である。これは、日本経済の最大の問題の1つで、経済産業省には、「中小企業庁」という役所が設置されている。「中小企業庁」は、中小企業庁設置法に基づいており、その第1条の目的に「健全な独立の中小企業が、国民経済を健全にし、及び発達させ、経済力の集中を防止し、且つ、企業を営もうとする者に対し、公平な事業活動の機会を確保するものであるのに鑑み、中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させるに足る諸条件を確立する」を達成することを任務としている。
図.2016年経済センサス調査(総務省:経済産業省)
中小企業とは、中小企業基本法で定義される。業種によって異なり、製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は資本金5千万円以下または従業員100人以下である。小規模事業者は製造業の場合、従業員20人以下の企業をさす。
ここで、日本の産業構造の大きな問題は、「大企業への一極集中」、すなわち、「中小企業の非活躍問題」にあるという根拠を示す。2016年に総務省と経済産業省が行った経済センサス活動調査によると、個人事業主を含む中小企業は企業数で全体の99.7%、従業員数で68.8%を占める。企業全体のうち中小企業が圧倒的な割合を占め、大企業は社数にして0.3%、従業員数で31.2%でしかないにも関わらず、大企業が頂点に立ち、多重下請け構造による企業ピラミッドを構成している。私の経営する企業も「経団連」に所属しているが、経団連企業は、日本政府とも密に連携し、公共事業などの主契約者は、経団連企業等の大企業に集中している。活躍している企業は、大企業だけで、中小企業は、活躍したとしてもその成果は、大企業の成果となる。何故なら、中小企業の仕事は、大企業の下請け仕事であるためだ。
大企業からの下請け仕事がなくなると、中小企業の経営状況は急速に悪化し日本経済の減速に直結する。平成の失われた30年の間に日本の輸出産業の根幹をなしていた家電産業、エレクトロニクス産業は、韓国勢、中国勢とのコスト競争力を失ったこと、また、自動車産業も海外生産に踏み切ったことで、国内製造業の中小企業の仕事は、激減した。
そこへ、今回の新型コロナウイルス感染拡大による中小企業への影響は大きく、中小企業対策の柱は(1)金融機関による無利子・無担保融資などの資金繰り支援(2)最大200万円の持続化給付金――の2つだ。これに新しい官民ファンドによる資本注入策を加え、3本柱で中小企業の経営改善を支援することになっている。しかし、このような臨時対策では不十分で、日本の「中小企業の非活躍問題」は、解決しない。この問題を如何に解決するかは、次回以降に述べることとする。
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