曹 申 CScapitalコンサルティング創業者
中小企業を的確に診断し、方法論で海外市場を開拓する

現代のビジネス社会では、方法が重要である。力任せの行動や短期的な利益追求では、長期的な発展は望めない。ビジネスの海で奮闘し、世界へ進出するには、リスクを回避し航路を守るスマートな運営システムが不可欠である。

CScapitalは「専門性と精緻さ」で知られる国際コンサルティング企業で、傘下の企業コーチはアジア、欧州、北米など主要経済圏をカバーしている。曹申氏が率いるCScapitalが独自に開発したCS総合メソッドシステムは、長年の改良を重ね、さまざまなシナリオに対応できる110以上の戦略実行ツールを生み出し、中小企業の成長プロセス全体を支えている。

中小企業の海外進出が加速する時代の中、本誌は曹申氏との対談を通じてその深い見解に耳を傾けた。

効果的な統一方法論

多様なシナリオへの適用

2022年から2023年にかけて、中国資本の海外進出は第四の波を迎えた。特に中小企業の活躍が目立ったこの時期、CScapitalは時代の流れに合わせて本社を東京へ移転した。日本経済が持続的に放つ力強い勢いを高く評価したためである。また、CScapitalが掲げる価値観「長期的視点と利他主義」は、日本で重んじられる企業倫理と合致しており、これも大きな動機となった。

「日本市場は修練の場だ」。日本市場で1件の受注を得るために要する時間と経営コストは、他国の10倍に達することもある。しかし日本市場は「架け橋となる市場」でもあり、その試練を乗り越えれば、国際市場の荒波にも十分対応できる。日本市場で自社のシステムを検証し磨き上げられるかどうかが、企業が真に海外へ進出できるかを決定づける鍵だと、曹申氏は語る。

しかし、日本進出を目指す起業家や投資家にとって、専門のコンサルティング会社に戦略プランや競争戦略の設計を委託する場合、コスト面だけでも負担の大きさを感じざるを得ない。

幸いにも、曹申氏とCScapitalのチームは、グローバルコンサルティング大手が実践してきた効果的な方法論を体系化し、さまざまな経営シナリオに対応する110以上の戦略実行モデルを構築した。「戦略」「幹部」「カルチャー」「製品」「マーケティングと販売」「サービス」などの重要課題を網羅するこのモデルは、海外起業家が陥りやすい誤りを回避し、経営効率を高める「四両で千斤を動かす(わずかな力で大きな成果を上げる)」ような実効性を発揮している。

「日本市場を例に挙げよう。商品の生産が人力に依存していた時代には、インターネット技術の導入が再編の契機となった。インターネット技術が人的生産性を高めることに成功したとき、AI応用環境の導入によって新たな市場参入の機会をつかむことができた」。

前回のモバイルインターネット起業ブームでは、多くの分野に技術的障壁がなく、現地リソースとの深い融合を実現したイノベーターがチャンスをつかみ、激動の時代を生き抜いただけでなく、業界のリーダーへと成長した。当時、曹申氏が58同城(中国の情報サイト)や獵聘(人材サービス会社)など急成長企業を指導した経験があるため、その視点には一層の説得力がある。

AIアプリケーションの追い風に乗って海外進出を図る中国系イノベーション企業グループは、CScapitalの主要な顧客層の一つである。

現在注目を集めるAIアプリケーションのレッドオーシャンを例に取ると、日本市場の慎重さは諸刃の剣だ。日本の業界をリードする企業はすでに技術的障壁を築いているため、こうした企業は新興市場(Emerging Market)を優先的に検討できる。新興国市場は一般に、より寛容な政策と低コストの環境を提供し、イノベーション企業にとって初期の顧客基盤とキャッシュフローを構築しやすい。

「まず新興市場で基盤を固め、その後、成熟市場をグローバル戦略の次の段階とする」――これは、曹申氏が中国企業や投資家に贈る真摯な助言である。

ある革新的なテクノロジー企業の日本市場開拓を支援した成功事例として、曹申氏とそのチームは、委託先に対し「STM戦略の統合」と「PRS製品イテレーション」という二大戦略を確立させた。海外資本システムとグローバルな研究開発リソースを導入すると同時に、3年単位で明確な発展目標を設定し、その着実な実行を支援することで、「製品と戦略の国際的な整合」を成功裏に実現した。

 

「長期的視点」と「利他主義」は個性ではなく共通性

「長期的視点という文化」「業界団体の重要な役割」「高水準」――曹申氏は日本市場をこう総括する。十数年前、エリクソンやファーウェイなどの業界大手を支援していた頃から、曹氏は日本市場の運営規律、構造的特徴、価値体系の研究に深く取り組み始めた。

成熟した日本市場は投資利益率をより重視し、高品質・高価格の製品こそが市場発展を主導する。日本市場は自己資金調達能力が高く、日系企業は「低負債」という基本原則を厳守するため、海外からの資金調達を必要としない。外部の経営者が低価格戦略で市場リソースを奪おうとしても、それは不可能である。

「企業は各成長段階で、『どこで起業し、どこで発展するか』を明確に選択すべきだ」と曹申氏は、過去の成功事例を挙げながら詳しく説明する。成熟分野に参入する際は、正面からの競争を避け、老舗企業の産業レイアウトにおける「死角」を選び、協力関係を築いて力を借りながら、新興市場で新たな領域を開拓することが重要だ。その後、市場での試練を経て、一定の顧客基盤と管理経験を蓄積した企業は、より高水準の成熟市場に進出し、実力を試すことができる。

もちろん、老舗の日系企業の承認を得ることは容易ではない。彼らは長年の検証を経て確立された厳格な審査基準を持っており、企業には「まず内部を鍛え上げること」が求められる。曹申氏は率直に、「日本市場へ進出する前に、日本経済特有の文化とルールをしっかり理解しなければならない」と助言する。

CScapitalは方法論のローカライズを通じて、企業や投資家が市場参入の壁を一つずつ乗り越える支援を行っている。最近では、「環境適応困難」に陥った大手機械メーカーに対し、「IVS(Infinity Ventures Summit)ソリューションマーケティング」と「SDO(サービス・データ・オブジェクト)顧客感動サービス」を組み合わせた実践モデルを策定。製品と提供モデルを最適化し、柔軟な戦略的アプローチによって国際市場への進出を成功させた。

「企業の健全で持続的な発展の鍵は、管理職層、すなわち管理人材の育成を重視することにある」。日本には創業100年以上の企業が4万5284社(2024年現在)存在し、世界首位を維持している。日本企業の経営者は、資源や資本の占有よりも、前を継ぎ後に伝えるという継承関係を重視し、従業員も仕事を単なる労働価値の交換とは見なさず、企業と共存共栄する関係にある。

これに基づき、曹申氏は「TTP(戦術・技術・手順)幹部システム」という手法を提唱した。これは、経営者や起業家とともに長期的に成長できる幹部層を育成するものであり、「経営の神様」稲盛和夫が提唱した「人間本位」の経営理念とも響き合っている。

 

楽観的な日本、成熟市場に

秘められた膨大なエネルギー

取材当時、自民党総裁選は白熱していた。5人の候補者がそれぞれ実力を示し、政策を訴えて票を集めていた。話題は自然と、「経営管理ビザの審査基準引き上げ」や「外国人問題対策の司令塔設置」など、最近注目を集める政策へと移ったが、曹申氏はこれに容赦なく冷水を浴びせた。

土地資源が限られ人口密度の高い日本は移民国家ではなく、「仕事そのものが修行である」という独特の職場文化を持つ。日本政府が外国人誘致政策を掲げる前提は、来日する外国人に社会的価値を創出してもらうことであり、安逸な老後を過ごすためではない。もし後者を望むなら、オーストラリアやカナダといった国を選ぶべきだ。そして再び「修行の場」という論点に戻るが、日本市場は、真に起業の理想を抱き、相手を尊重し、市場を畏敬する人にこそふさわしい。

世論で話題となっている日本政府の「排外」勢力の台頭が、華僑華人の経営や仕事に支障をもたらすとの見方について、曹申氏は笑いながら否定した。たとえ高市早苗氏の選挙演説がどれほど過激であっても、それはあくまで態度の表れにすぎず、首相就任後の政策とは別問題だという。

今日の日本はすでに高度に成熟した国であり、健全で開かれた市場を有している。どの政党や候補者が政権を握ろうとも、最終的にはこの国と国民全体に責任を負うことになり、最優先課題は経済発展と社会問題の解決である。日本の首相が独断で行動することはできない。世界の500強企業の会長が直接及ぼす影響が小さいのと同様に、規模が大きく構造が成熟した組織ほど、組織効率を重視した体制を基盤に、健全な制度運営によって機能している。

本稿執筆時点で、自民党総裁選はすでに決着していた。高市早苗氏が自民党初の女性総裁に就任し、首相の座にも就く見通しである。曹申氏が特定の国家、さらには国際情勢の変化を予測し、全体を統括する精密な分析能力を持つのは、長年にわたりアクセンチュアやIBMといったコンサルティング大手で培った経験に裏打ちされたものだろう。

 

取材後記

群雄割拠する中、経営管理の「名医」チームが日本に根を下ろし、企業の発展過程に潜む課題を的確に診断している。CScapitalの市場動向に対する楽観的な見通しは、迷える投資家たちに確かな航路を示す灯となっている。