径山茶文化、日本へ――禅茶の風韻が古今東西をつなぐ

6月下旬、径山茶文化は日本で展示会や産業対話、大学交流など多彩なプログラムを通じ、中国の禅茶文化が持つ独自の魅力を幅広く紹介した。

2025年大阪・関西万博では、中国の千年にわたる茶文化の精髄に焦点を当てた展示が世界の注目を集めた。6月26日、万博博物館主催の「東洋ファッション」国際芸術ウイークが、大阪・関西万博東ギャラリーで開幕した。

同26日から28日まで、「紋采東方」アート展が公開され、「衣で道を伝える」「茶で道を伝える」「芸術で道を伝える」という形式を通じ、東洋の文様と東洋文化を世界に発信した。展示は万博博物館が主催し、囍陸文化、中国工芸美術学会紋様研究開発センター、麒麟共創が共催。さらに、杭州市余杭区径山茶発展推進事務局、杭州径山茶発展有限公司、杭州市余杭区径山鎮人民政府、杭州市余杭区径山観光リゾート区管理委員会が協力した。

当日は、日本国際博覧会協会国際関係局の折原真子連絡主任、大阪万博博覧館運営総調整官の孫怡氏、杭州市余杭区茶事務局専任副主任の呉春仙氏、杭州市余杭区茶文化研究会常務副会長兼秘書長の周鋒氏、杭州市余杭区径山茶業界協会会長の楼情燦氏、杭州市余杭区径山茶業界協会副会長の汪輝氏、杭州市余杭区茶文化研究会理事の何奕霏氏、杭州市余杭区茶文化研究会の王俊樺氏、中国工芸美術学会紋様研究開発センター主任の孫若溪氏、囍陸文化創業者の陸棋燕氏、中国木彫芸術の巨匠・呉騰飛氏、金華市工芸美術大師の呉奕玎氏、アーティストの賈偉氏など多くのゲストが参加し、世界中から集まった来場者とともに禅茶美学の祭典を体験した。

(左から順に:何奕霏氏、楼情燦氏、汪輝氏、呉春仙氏、周鋒氏)

イベントでは、折原真子主任が2025年国際博覧会協会を代表して、「東洋ファッション」国際芸術ウイークの開幕式で祝辞を述べた。周鋒副会長は、歴史の継承、生活美学、国際対話の3つの視点から、国際的な聴衆に向けて径山禅茶文化の精髄を生き生きと紹介した。径山寺の朝の鐘と夕方の太鼓から、抹茶マシンの現代的なリズムまで、「禅茶一味」の哲学的思考から「スローライフ」の真の追求に至るまで、会場の人々に東洋美学の精髄を深く体感させた。

また、「東洋ファッション」国際芸術ウイークの幕開けを飾る最も感動的なプログラムとして、巻物への署名式が行われ、7人のゲストが金色の署名で東方美学の新たな旅の始まりを祝った。

驚愕の径山茶文様体系が発表

27日、「東洋ファッション」国際芸術ウイークの開幕式で、初の中国茶の紋様が正式に発表された。中国工芸美術学会紋様研究開発センターが、径山茶のために国内初の体系的な茶文化文様をデザインしたのである。この革新的な成果は、径山茶文化に新たな活力をもたらすだけでなく、文化資産を知的財産として世界に発信する新たな時代の始まりとなった。

この文様は、径山禅茶一味をインスピレーションの源とし、葉の形を主体に、山の起伏の輪郭を巧妙に融合させ、円切りの技法で茶葉の形状を表現し、禅宗哲学の「和合」と「通達」を象徴している。透かしのデザインが図形に余白の美しさと調和をもたらし、禅の境地における余白と内観を映し出している。山と葉脈が互いに絡み合い、円を法とし、空を境とし、葉には皆心があり、至る所で自在であるという境地を表現し、独自の芸術的魅力を放っている。

 中国の紋様デザイン革新の新たな節目として、紋様研究開発センターは国際芸術ウイークの期間中、「東方紋様大展」の世界プロジェクトをまもなく始動すると発表した。このプロジェクトは紋様を通じて異文化交流の場をつくり、世界の紋様芸術の継承と革新、そして対話を進めることを目指している。

茶の文様が現代美学と出会う


千年の禅茶のインスピレーションから生まれた紋様が、現代デザインの先駆的な表現と出会った。光と影が交錯するランウェイ上で、「衣で道を伝える」という視覚的な詩篇が徐々に繰り広げられ、「紋采東方」ファッションショーが華やかに幕を開けた。

このファッションショーは、「茶生活の美学」が持つ多様な可能性を表現した。文化の遺伝子を視覚言語へと転換する革新的な試みは、径山茶文化の新たな発信モデルとなり、世界中の観客に視覚と心を揺さぶる二重の饗宴を届けた。

開幕式では、茶礼の故郷の代表者たちと折原真子主任が、禅茶文化の深い精神を宿した贈礼の授受を見届けた。贈礼式では、代表者たちが最も貴重な中国の径山茶礼を捧げ、東方美学の伝道者たちに敬意を表した。

径山茶芸の演舞とスマート抹茶マシンが注目を集める

イベント会場では、プロの茶道師が径山茶葉を用い、シンプルで優雅な茶芸パフォーマンスを披露した。沸騰したお湯が茶碗に注がれると、新鮮な茶葉が水中で広がり、金色の澄んだ茶湯がじわじわと滲み出て、清らかな山野の香りが漂った。茶湯が碗に注がれると、日本のゲストたちはその香り顔を近づけ、「この一杯の茶には歳月が浸み出し、一枚一枚の茶葉が東洋の茶道の物語を語りかけてくるようだ」と感嘆した。

また、径山スマート抹茶マシンの核心的な技術も大きな注目を集めた。これは杭州径山茶発展有限公司と万事達(杭州)咖啡機有限公司が共同開発した、世界初のスマート抹茶マシンであり、大阪・関西万博で初披露され、千年続く点茶の技法を、スマートテクノロジーで見事に再現している。

このマシンには宋代の点茶アルゴリズムが搭載されており、「清新抹茶」「宋韻抹茶」など3つのモードに対応。AIが茶筅の攪拌動作を再現し、わずか1~3分でプロレベルの抹茶を完成させる。生まれる細やかな泡は茶道師の水準に達している。

全閉鎖式プロセスと径山原産の一級抹茶カプセルを組み合わせ、高清浄度(10万級クリーンルーム)で製造されている。添加物不使用でトレーサビリティーも確保し、茶葉本来の風味を保持している。東洋美学を意識したデザインで、家庭用と商業用両方に対応しており、自動洗浄、カウント、リモートアップグレード機能も備え、「テクノロジー+文化」の新たな可能性を示している。

この装置の中核技術は複数の特許を取得しており、来場者からは「手で点てたお茶の口当たりを見事に再現し、その新鮮さと爽やかさはさらに優れている」と高い評価を受けた。このイノベーションは『禅苑清規』の古代の知恵を守りつつ、テクノロジーの力で千年の茶の香りを現代の生活に融合させ、伝統文化の革新的継承の模範となった。

抹茶のキャップが「抹茶ブーム」を巻き起こす

千年の抹茶の技法が現代の生活美学と出会い、茶の新しい楽しみ方が2025年大阪万博の会場で注目を集めている。中でも話題となっているのが、伝統を打ち破る「径山魔法抹茶ボトルキャップ」である。このキャップは、抹茶の粉末の細かさが1000メッシュ以上、粒子径5ミクロン以下という「超千目」基準の高品質を誇る。使い方はとても簡単で、普通のミネラルウォーターのボトルに取り付け、30秒ほど軽く振るだけで、水が鮮やかな緑の爽やかな抹茶ドリンクに早変わりする。

抹茶の起源は中国の隋唐時代に遡り、敦煌の壁画や宋代の『大観茶論』にも記されている。南宋時代、日本の僧・円爾(えんに)が径山の抹茶技術、茶典、茶の種を日本に持ち帰ったことは、『聖一国師年譜』に詳しく記されている。また、茶聖・陸羽が径山で『茶経』を著したことも、抹茶文化の源流を物語っている。 

今回の「径山抹茶万博巡館」イベントでは、特製の大扇子に多くのカメラのレンズが向けられた。この扇子の扇面文様は、当日発表された径山茶紋体系から採られたもので、葉の輪郭と径山の山並みが精巧な幾何学的な切り込みで融合し、禅茶の「円融自在」の境地を体現している。

この東洋の知恵を凝縮した扇子は、「触れることのできる文化の象徴」として、来場者が文様の平面デザインから立体的な器物へ転化する美しさを直感的に体験できるよう設計されている。

伝統と革新が織りなす東洋の茶の新たな一章

径山鎮という千年禅茶の発祥の地から万博の舞台へと、径山の茶文化は今回の大阪・関西万博で時空を超えた見事な対話を実現した。世界初となるスマート抹茶マシンのテクノロジー展示、「抹茶ボトルキャップ」のクリエイティブなインタラクション、宋代の点茶演舞の再現……径山鎮の「世界の抹茶の故郷」としての文化の奥深さと革新の力をさまざまな形で表現した。

国家級エコタウン、国家4A級観光地でもある径山鎮は、優れた自然環境と豊かな文化の底力を背景に、この文化の祭典を支える基盤を提供した。さらに、余杭区が丹精込めて企画したこの文化の祭典は、各国からの観光客に中国茶文化の独特な魅力を体感させただけでなく、伝統的な無形文化遺産の技能が現代において創造的に転換され、革新的に発展する姿をも示した。「径山」は、まさに開放的で包容力ある姿勢で、千年の茶の香りを世界へと広げ、人類文明の交流と相互理解の美しい未来を築くために、清雅な茶の香りを注ぎ込んでいる。

深い交流――禅茶から産業協力まで広がる対話

中日両国の禅茶文化のつながりをたどるため、浙江省杭州市余杭区径山茶発展指導グループ事務局と中国の茶企業の代表団が日本の著名な寺院を訪れ、禅茶の儀式を通じて「和・敬・清・寂」という茶道の精神について語り合った。

産業協力の面では、「中日抹茶産業交流シンポジウム」と「茶菓産業協力フォーラム」が同時に開催され、径山の茶企業と日本の抹茶・茶菓子の有名企業が「抹茶産業の継承と革新」や「茶菓文化」をテーマに意見を交わした。

越境と融合――大学交流から生活美学の対話まで

早稲田大学で行われた留学生文化交流イベントでは、径山スマート抹茶マシンの寄贈式が大きな話題となった。大学側の教授は「この機械は中日両国の若者の文化交流をつなぐ新たな架け橋となるであろう」と述べた。

また、「茶紋相生」東方美学対話会では、径山の茶企業と中国の服飾ブランドが共同で茶紋様をあしらった衣服を発表し、「茶の要素が生活美学にもたらす無限の可能性」に会場の人々は感嘆の声を上げた。

径山茶の日本訪問が無事終了

今回の径山茶の日本訪問は、中国の禅茶文化の豊かな伝統と革新の活力を世界に示すとともに、中日文化をつなぐ新たな橋渡しとなった。紋様体系の初披露、スマート茶芸の技術発信、産業協力の深い対話、大学交流による文化の広がりなど、多様な形で「禅茶一味」の現代的な意義を表現したのである。今後も径山茶は文化を糸口に、国際協力や革新の探求を進め、千年の茶の香りを新たな時代により鮮やかに咲かせていくであろう。