近年、伝統的な観光地に加え、広大な農村地帯で「田舎らしさ」を体験する旅が、ますます多くの観光客に選ばれるようになっている。
中国文化・観光部の最新統計によると、2025年第1四半期の全国農村観光の延べ受け入れ人数は7億700万人で、前年同期比8.9%増。観光収入は4120億元で5.6%増加し、従事者数は712万人で2.2%増となった。
初夏の朝、浙江省安吉県余村では、竹林の海が観光客の足音で目覚める前に、上海の会社員・陳曦さんがすでに宿泊先のテラスに腰を下ろし、山あいに漂う朝霧を眺めていた。
「ここでは時間の流れがゆっくりになる気がします」。彼女がSNSにこう書き添えた写真には、遠くの茶畑と安吉白茶の入った湯呑みが写っていた。
レジャー型農業と農村観光のモデル県に指定されている安吉では、今年の「五一」連休中も観光が好調で、来訪者数は227万1000人、観光収入は30億9900万元に達した。人気の民宿は予約が取れないほどだった。
「今の農村観光ブームは、一過性ではなく、観光客の本心からのニーズと愛着、そして純粋な楽しみから来ていると感じます」。長年農村観光に携わる浙江省観光民宿産業連合会会長・呉健芬氏はそう語る。
福建省官洋村で歴史ある土楼を鑑賞したり、浙江省渓頭村で「絶えない窯火」体験に参加したり、広西大寨村で農耕文化に触れたり――こうした村々は、中国を訪れる外国人旅行者にも驚きと感動をもたらしている。
オンライン旅行サイトのデータによると、2024年には外国人による農村観光の予約件数が前年より71%増加した。
これまでに中国は、国連世界観光機関(UNWTO)が選ぶ「世界最優秀観光村」に15カ所が選定され、世界最多を記録。これらの村々は中国農村観光の“お手本”であり、美しい中国の姿を世界に発信している。
農村観光がこれほど人気を集める理由は、「山が見え、水が流れ、郷愁を感じる」という言葉に集約される。
都市生活者にとって、昔ながらの農村風景は本能的に心ひかれるものがある。
野山での摘み取りやハイキング、古民家での民俗体験、かまど料理で味わう有機食材――こうした“本物の体験”が、現代人が求める「詩のような暮らし」への憧れに応えている。
一方で、近年の発展と整備により、農村観光も着実に高品質化・高付加価値化が進み、観光コンテンツは多様化し、サービスの快適さも向上している。
2025年4月にオープンした「Ctrip度假農場」芮城黄河湾店は、黄河の風景を一望できる立地にあり、高級民宿を売りにしている。開業以来、予約は好調だ。
「いまや農村観光は、単なる“農家レストラン”ではありません」
中国旅游研究院の戴斌院長は言う。高級宿泊・高級飲食・文化体験などが融合した新しい農村の魅力が、多くの都市住民や地方住民を引き寄せている。
農村に住む人々にとっては、観光業の発展は「自分たちの産業を育てること」にほかならない。
たとえば雲南省ア者科村は、世界遺産に登録されたハニ棚田の景観を有するが、以前は産業が乏しく、棚田の収穫も少なく、“金の茶碗”を抱えながら貧しい暮らしを強いられていた。
2018年以降、中山大学の観光発展・計画研究センターの主任・保継剛氏が提唱した「ア者科プロジェクト」により、村人たちは村落・棚田・生活様式などの全体を「観光資源」として観光会社に出資。観光を通じた貧困解消と文化遺産の保護を両立する道を歩み始めた。2024年、ア者科村は「世界最優秀観光村」に選ばれた。
専門家たちは、農村観光の高品質な発展には、農村の新たな観光イメージづくり、受け入れ設備の整備、サービス品質の向上が必要だと指摘している。
――デジタル技術を活用し、農村の文旅エコシステムを再構築
北京市懐柔区橋梓鎮では、「漫山慢水・小毛驢農場」が中国農業科学院と協力してモデル拠点を設置。2025年の春耕シーズンには、田植えフェスとAR古農書体験を組み合わせ、1日で3000人超を集めた。
――ブランド戦略により観光ネットワークを形成
2024年以降、吉林省吉林市は「春は野山歩き、夏は避暑、秋は紅葉狩り、冬は雪遊び」という四季ごとのテーマで、点在する村をつないだ観光ルートを構築。21のテーマと95のスポットを紹介するビジュアル付き観光ガイドを作成し、「一村一景一特色」の旅案内を提供している。
――統合型開発で農村観光の活力を引き出す
2025年の「中央一号文書」は、文化と観光の深い融合を促進し、文化産業による農村振興のモデル事業を展開すると明記。農村観光の特色化・高品質化・制度化を後押しする方針を打ち出した。
「今後は、創意あるデザイン、人材、資金、技術などの資源が都市と農村の間を双方向に流通する仕組みをもっとつくっていくべきです。そして、中国の農村が持つ風景の美、人文の美、暮らしの美を、国内外の観光客にもっと感じてもらいたい」と戴斌氏は語った。
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