長沙で特別展が開催
甦る古代「夜郎国」の文化

このほど、特別展「夜郎遺踪――『史記』に見る古代国家を探る」が長沙博物館で開幕した。貴州から選りすぐりの貴重な文化財180点(組)が出展され、神秘的で色彩豊かな「夜郎」文化を紹介する展示である。

謎に包まれた古代国家

夜郎の全貌

夜郎国は、戦国から前漢時代、中国西南地域で勢力を誇った古代国家である。『史記』などの文献に、わずかな記述があるのみで、都の遺跡も未だ発見されていない。専門家の研究によれば、夜郎国は現在の貴州省一帯を支配していたと考えられている。当展示会は4つの章から成り、段階を追って夜郎国の謎をひもとく構成となっている。

第一章「源遠流長――夜郎以前の青銅文明の光」では、貴州地域における青銅文化の萌芽に焦点を当てる。畢節市・青場遺跡から出土した青銅器の石製鋳型、威寧県・鶏公山遺跡の炭化した稲や祭祀遺構などの発見は、夜郎文化の起源を辿る重要な手がかりである。

第二章「古国の痕跡を探る――考古学的発見」では、赫章県・可楽遺跡、威寧県・中水遺跡、普安県・銅鼓山遺跡群など、夜郎文化と深く関わる代表的遺構を分析し、古代夜郎国の社会像の復元を試みる。なかでも赫章県・可楽遺跡と威寧健・中水遺跡は、それぞれ2001年と2005年に「全国十大考古新発見」に選ばれている。

第三章「独自の風格――ユニークな文化様式」では、出土した考古学的価値のある青銅製の装飾品や兵器などが展示され、夜郎の特徴的な「套頭葬」、髪型や美意識へのこだわり、武を尊ぶ文化など、独特の文化を見て取ることができる。

第四章「華夏への融合――夜郎民族の行き着いた先」は、夜郎国が漢王朝の郡県制度に組み込まれていく過程を紹介する。漢・武帝の治世に西南地域の開発が大きく進み、犍為郡や牂柯郡の設置によって、夜郎等の地域は漢の郡県制に組み込まれ、中原から移住した人々が先進技術や道具をもたらし、漢文化と夜郎文化は深く融合していった。

 

夜郎の貴重な青銅文化

羊角鈕鐘(ようかくちゅうしょう、釣り鐘状の楽器)、銅鼓(青銅製の片面太鼓)等、中原地域では見られない青銅製の楽器や、ユニークな形をした銅製の鉞(まさかり)、腰に下げる装飾品等、希少な文物が多く展示されている。

銅鼓は歴史ある打楽器で、先秦時代から西南地域で使用されていた。石寨山型銅鼓は雲南の滇池周辺の遺跡で多く発見されている。貴州の赫章県輔処、可楽遺跡でも発見されていることから、貴州西部の夜郎国と雲南・滇国の間で交流があったことを物語っている。

黔西南プイ族ミャオ族自治州安龍県德臥鎮から出土した羊角鈕鐘は、上部両側に羊の角を模した持ち手がある。こうした形状の銅鐘は、戦国から前漢時代、越族が祭祀や舞踏で使用していたと考えられている。

赫章・可楽遺跡で出土した「套頭葬」の銅釜は、夜郎民族の独特の埋葬文化を表している。また、同遺跡の墓から出土した人面青銅扣飾(ブローチ・バックル型装飾)は、額や目、口、耳の部分に孔雀石がはめ込まれており、墓主の顔面を覆う形で発見された。